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第二章 月光庭園
書司寮はもう一つの学校だったが、学校で級友に気に入らないと言われていた目は、ここでは普通のことで、俺は俯くのも前だけを見ているのも止めた。
それに書司寮で知った画期的な事実が俺を喜ばせた。
寮で努力すれば書司になれる。書司になれば、人にはできない〈分類〉も、公的に大目に見てもらえる。立派な書司になれば、毎夜遅くまで仕事をしている両親が、今より早く就寝できる。今よりもっと一緒に遊びに行ける。
講義では早い者勝ちの席の最前列に座っていたが、教卓の正面には決まって、一つ年上の少年が陣取っていた。何度も何度も早起きをしたが、彼はいつも誰よりも早く登校する。
遂にむきになった俺は、前日の夜に帰るふりをしてこっそり教室に留まった。更に翌日の学校をすっぽかして、ようやく席を奪うことに成功した。
夕方になって講義にやってきた東吾の、びっくりした顔は忘れられない。いつ来たのかと聞かれて答えた俺の説明にあいつは呆れかえって、それから二人で笑ったっけ。
あの日からだ。東吾と友達になったのは。




