第七話
風が吹く。
お尻まである長く艶やかな髪がサラリと揺れる。
「………」
ただ空を見上げていた。
この世界も…やっぱりゲームと関係あるのか?
太陽三つ…月二つ。ゲームの中とおんなじ。
…ステータスも、さっき確認した。このキャラクターは転生したばかりだ。今はまだ勝てない敵も沢山いるだろう。
しかし転生キャラクターは前のキャラクターのステータスを受け継いでいくのだ。
前キャラクターのレベルに応じて、現キャラクターに加算されていくステータス値も増減する。
ちなみに私の前キャラクターはカンストしている。9999Levだ。それを元にこの子を作ったのだから、得られる恩恵は計り知れない。つまりレベルが上がる毎に、現キャラクターと前キャラクターのステータス値が振り込まれるわけだ。
とゆうかまず1Levのスタート時から一般のキャラクターとはステータスに大きな開きがある。
前キャラクターのレベルによるが、ジルの場合1Levの時点で、一般キャラクターの350Levくらいはあった。
まさにチート転生である。
だが誰でもなれるわけではない。運営側が判断し転生の権限をプレイヤーに与えるのだ。
今までどのくらいの人達が権利を与えられたのかは不明であるが。
権利取得条件はには、違反ゼロ、Lev9000以上、攻撃的でない、古参プレイヤーである、など上げればキリがないらしい。
古参プレイヤーであるにも関わらず私は転生などとゆう情報は知らなかった。
突然運営側からメールが贈られて来たのだ、『転生の秘薬』と一緒に。
私は迷わず使用した。そして何時間もかけてジルのアバターを作成したのだ。
キャラクター設定の欄も時間がかかったがなんとか全て埋め(一般キャラクターの作成より細かく、かなりの量があった)、満を持しての転生である。
そして今に至る。
設定資料の一部抜擢
無口
口下手
無表情
…なる程、どうりで一言も喋らないわけだ。
心の中はあれだけ騒いでいても見た目は冷静沈着極まりない。
まぁこの子の事は置いておいて、ここがゲームの世界だと仮定すると、納得できない事も出てくるな~。
私はあんなグロ犬は知らない。あんなモンスターはいなかった。
だとするとこの世界はなんだ?太陽が三つ、月が二つ。
キャラクターも知っている。
ではあのモンスターは?
似ているだけでゲーム内と全く同じ世界ではない、って事?
だとすると…見たことのあるモンスターと遭遇しても実際に戦って倒してみなければ相手の実力はわからないのね。
頭の中でメニューウィンドウを開く。
『魔物図鑑』に意識を向ける。
ゾンビ犬Lev300
群れで行動する。もし一匹でも発見してしまったら即座に対処した方がいいだろう。一匹見つけると近くに二十匹はいるとされる。獲物を見つけると仲間を呼ぶ。
…一匹いたら二十匹って、ゴキブリかよ。
てゆうか『モンスター図鑑』が『魔物図鑑』になってる。対して変わってない気もするけど…まぁいっか。うん、倒したら図鑑に乗るのね、この辺は変わってない。今乗ってるのはゾンビ犬だけか。
ふむ、現在のLevは23…300Levをあれだけ倒して?
えー…。
「………」
まぁ、気長に行こうかね、ステータスも大分伸びたし!うん、この辺の地形を覚えがてら向かって来た敵適当に狩ってLev上げして、そんで余裕が出来たら次の場所目指そうかな!
あ、そういやあの犬もどきは『魔物』に分類されてたけど私みたいな人型はどうなんのかな?やっぱ『魔族』ってなるのかな?それとも一くくりに『魔物』って呼ばれるんだろうか。うーむ…。
そもそも、私みたいな生物はいるのかな?人型で、高い知性を宿した魔の生物。
…いなかったらどうしよう。
え、この世界でもぼっち?
いやいやいや!きっといるハズ!
探そう!せっかく新しい人生なんだ、楽しく生きなきゃ損だ!
もし、もしうまくいったら。
ゴクリ。
と、ととも、ともだちにになれるかかもしししれない!
「………」
カァ~///
よ、よシ!頑張って生き抜こう!人生初の、と、友達を、作るのだ~!お~う!