第三十九話
あれからアイは休憩の度に私の羽を触りたがるようになり、人差し指で骨やら皮やらをツツーッとなぞらせたり羽を抱き込んで頬を擦りよせたりとなんか知らんがえらく気に入ってくれているようで嬉しいです。
毎回楽しそうに遊んでくれているアイを羽でギュッと挟んでみたり不意打ち的な事をしてアイを驚かせたり私も悪戯を存分に楽しんでいる。
もうウチの可愛子ちゃんったら何しても喜んでくれるので私もつられてデレッとした顔になってしまう。
頬っぺたのお肉動いてる感じしないから目だけ変態のようにウヘヘ~な感じになってるに違いないよ。
しっかし、かれこれ一月は歩き続けているのにまだ何も見えて来ないのにはいい加減不安を感じる。
頑丈になった精神のせいか恐怖や不安にまで鈍感になってしまったらしいが、ここまで何も無いと流石の私も楽観視出来なくなった。
体力の方はまだ問題は無いらしいが食事の方は大丈夫なのだろうか、今更だがもうかれこれ一月近く何も口にしていない。私は全く問題無いがアイはどうなのだろう…。
まだ砂漠が続くようならちゃんと対策を考えなければならない。
とりあえずアイに聞いてみよう、考えたら森にいた頃は毎日ご飯食べてたんだし…お腹空かせてるかもしれない。
最低だ、自分が大丈夫だからって今更になって気付くなんて…ほんと、最低だ。ごめんね、アイ。
『おなか?すく?…じるおなかすく?おなかすいた?』
え、あの、いや私じゃなくてアイがね、お腹空かせてないかなぁって。
小首を傾げて心配そうに私に聞いて来る彼女に私は大丈夫だと答えて、ずっとご飯食べてないけどアイはお腹空いてない?大丈夫?と改めて聞いてみる。
すると今度は反対方向に首を傾げキョトンとした顔で私を見つめた。
『…ごはん?ごはん、じる。じるくれる。』
何言ってるの?って顔で私を見つめるアイ。
え、いや何をおっしゃっているのかわかりませぬ、どゆ事?
『じるくれる!ごはん!まいにち、げんき!』
『じる、じる、いっぱい、じるくれる、わたし、げんき!げんき!』
成る程、わからん。
げんき!げんき!と嬉しそうに繰り返すアイが愛らしすぎて私の考える力は根こそぎ奪いさられそうになる。
ポア~っとピンク色な思考に染まりそうになって土壇場で何とか現実に留まった。
イ、イカン!シッカリせねば!
今ここで流されてしまってはイカンのだ!アイにどうゆう事なのかちゃんと聞かなきゃ!
私は食糧なんて持ってないし何もあげられるハズ無いんだけど…でもお腹は空いてないっぽいよね、他の物で満たしてるみたいな言い方だったし。それが何なのかシッカリ聞き出さなきゃ。
その何かがこれからも継続的に確保出来そうならいいけど、そうじゃないならやっぱりこれからの事(魔物食べれるのかな~)とか色々検討しなきゃイカンしね。