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小心者な悪魔  作者: はるさめ
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第三十五話

結局、いくら探しても例の破片っぽい何かは見付からず。

気配を探ってみてもやはり同様の結果しか出なかった。

魔物もとっくに消滅しているし、木からももうあの気配はしないし。

自身で空けたあの深い穴がなければ幻覚でも見ていたのと自分を疑ってしまうところだ。


しっかし結局アレ何だったのかね?

あれが原因っぽいってのはなんとなくわかったけど。

明らかに魔物発生してましたもの。闇っぽいの纏ってたのは産まれたばかりだったからか?

それとも私が何かしていつもより強めの魔物が出来ちゃったとか?

ってか木から抜き出してすぐあの破片力が増したよね、この木に何かあの闇を抑えられるような力でもあったのかしらん?いや、私が悪魔だから《相性抜群ダゼェ!ヒャッハー!》ってなったのか?

そして破片はどこ行った。


あ。もしかして壊しちゃったかも?力一杯握り締めちゃったし。

壊れたら噴き出してた闇も止まるのか?…何か違う気もするけど…でもそれ以外考えつかないし…おかしな気配もしないからまぁいっか!そうゆう事にしときまそ!


よしよし、日も大分傾いて来たし、最後に森を一周ダッシュで見回ってから帰ろっかね!

きっと今日もアイが私の為にご飯準備して待ってくれてるハズ!

うむ。


み な ぎ っ て き た 。


わふー!

アイさんのお陰で体調の方も絶好調です!

何かいつもよりかなり調子良い気がするし、愛の力は偉大ね!ヲホホホ!


…いやちょっと待て、なんか調子良すぎない?一応ステータス確認しとこう、変な異常に引っ掛かってたりしないよね?テンションもこう、なんか妙に上がりがちだし。よし、ステータス展開、ぽちっとな。




………ゑ?…


ステータスパラメータバリ上昇しとる。


…あの闇から発生した魔物そんな強かったと?それしか考えられんたい。


ん?…あれ?いや、これ、あれ?

レベル…上がってなくない?

パラメータだけ上昇って…何が起こったよ!

なんかのイベントボーナスとかかな?でもこんなイベントは知らなかったしそもそもこの世界がまずゲームの世界じゃなさそうだし。うむむ…まぁ強くなるのは良いことだとして、一先ず置いておこう!他にも異常がないか確認しなくちゃ!


んーと…これは…得意スキル…?

…おお!おおおう!

何か知らんがスキル覚えてるよ!発スキルでごぜうますよヒャッホーイ!!


スキル:???

これって使えばわかるのかね?どんなスキルなんだろか?うわぁ超楽しみでござる!でも今日はもう時間がなさそうだしなぁ…うむ。明日じっくり試す事にするのである。



森のパトロールも順調に終わり現在泉に到着したばかりである。しかしアイの様子が何かおかしい。

いつものように飛び付いて来ないのだ。

あり?どないしはったん?

様子の可笑しい彼女に思わず首を傾げる。

アイは何故か身を縮み込ませたまま、私を時折チラリと見遣るが決して目を合わせようとはしない。涙を目にいっぱい溜めて、震える体に爪を立てて何かを必死に堪えている。



もしや私がいない間に何かあったのか!?


慌ててアイに駆け寄り何があったのか尋ねる。アイの震えは一層増していて、キツク結んだ唇からは血が垂れている。

何だがわからないが大変な事態になっている事はよくわかった。

とにかく落ち着かせる為に抱き寄せて背中をさする。頭を撫でたり胸に押し付けたりアイが大好きな行為を延々と繰り返す。

白の少女は体をブルブル震わせ、涙をホロホロ零しながらゆっくりと、ゆっくりと長い時間をかけて顔を上げ、そして、やっと彼女と目を合わせる事ができた。


アイの顔は顔面蒼白で、堅く引き絞られた唇からは未だ血が流れている。

涙に濡れた瞳で、体を震わせ唇から血を流し何かに激しく恐怖しながらも、懸命に私を見つめている。

絶え間無く血が流れる唇を指でなぞりそのまま無理矢理口を開かせ、唇の代わりに私の指を噛ませる。

彼女の瞳に私はどう写っているのだろう。アイが傷付くのは嫌だ、アイに無理させるのも嫌だしアイが悲しむのも嫌だ。

ああ、苦しいのはアイなのに、私も泣いてしまいそう。

アイ、アイ、アイ、貴女を心配していると、私が支えになるからと、何にも怯える必要は無いのだと、彼女を呼ぶ声に思いを乗せて必死に言葉を紡ぐ。私は全力でアイを心配していたしアイを思っていた。




震えながら私にしがみ付いていたアイは、いつの間にか体の強張りがとけている。

私の胸にぐったりともたれ掛かりで何度も大きく息を吐き深い呼吸を繰り返す。


なんとか落ち着いたみたい…一体何があったのだろう。



暫くして少し調子が戻って来たアイはいつものように甘え始め、何があったのかと何度も問い掛ける私にキューキューとよくわからん返事しかしなかったのでネジが外れた私はもうシリアスなんか放り投げ目の前の生き物を全力で愛でる事に専念した。


結局、話が聞けたのはアイと二人で作り上げた夢のマイホームに戻ってからだった。アイだけに愛のs(ry


完全に落ち着きを取り戻したアイにさっきは一体どうしたのか、何があったのか尋ねてみる。

かくかくしかじかうまうま。

ふむふむ、成る程。

どうやらアイは私が恐かったらしい。

…な、なんだってー!?

まさかの私!

愕然としている私にアイは更に追い討ちを掛ける。

曰く、死にたくなる様な威圧感だったとか消えて無くなりたくなったとか、もう早く殺して欲しかっただとか、恐ろしい言葉が愛らしいお口からはポンポン飛び出して私にグサグサ突き刺さる。

思わずorzしそうになった私に今度はアイが尋ねた。

一体何があったのか?


恐ろしいものが近づいてくる。

そう思ったがそれの気配は私のモノであったし、ネックレスも私である事を肯定していたので泉の底まで逃げようかどうしようか迷ったが、私だと信じて出迎えたと。


近くに寄られると更に恐ろしく、もうどうにかなってしまいそうだったがアレコレと世話を焼いて心配そうに私を見る貴女がいつも通り私を愛してくれているのがわかったので、頑張って何とか耐える事ができた。と。

当初、アイは嫌われてしまったのだと思ったらしい。突如あんなものを向けられて、何か怒らせるような事でもしたかと、ついに嫌われてしまったのかと、あの威圧感に必死で耐えながらも心は折れそうになっていたと、でも貴女はいつものように抱きしめてくれたし貴女の仕種にも沢山の愛を感じた、そして貴女の私を呼ぶ声が私の壊れそうだった心を包んで全て癒してくれた。

いつの間にか貴女の声も、気配も、貴女が身に纏っている正体不明の威圧感さえも、全てが私を心配して私を思ってくれているのがわかった。

気が付けばもう、あの死にたくなるような恐ろしい感覚はなくなっていた。


貴女と貴女の発する全てが心地良すぎて蕩けてしまいそうになったと。




成る程、わからん。

私そんな恐ろしいオーラなんて出した覚えはないし。

とゆうか威圧とか出来たんだ私。

しかしソレをアイに向けるとは許せん!

アイを傷付けやがってコノヤロー私!

アイが見ていなければ自分を殴り付けていたところだ。実際目の前でやると痛い人確定でドン引きされる事は目に見えてるので、仕方なく口内の横の肉を噛んで地味に自分を虐める事にする。


アイは言うだけ言って疲れてしまったのか、私の腰に抱き着いたまま眠っている。

起こさないようにソッと抱き上げ、水草が沢山敷き詰めてあり結構フカフカなベットに運ぶ。一緒に横になり腕枕をしながら、アイを襲った威圧感とやらの事を考える。

今までは何ともなくて威圧とやらが今日急に始まったのなら絶対あの破片の事に関係あるはずだ。

思えばあそこまで魔物相手に錯乱してパニックになったのは初めてだったな。


破片→何か黒いのがワーッと出る→ビビる→黒いのが闇だと把握→闇がなんか不気味な動きを見せる→更にビビる→咄嗟に力一杯破片を握りしめ闇の噴出の減少をはかる→闇が向かって来ているのに気付く→パニック、もう考えるの放棄→気が付けば魔物の死骸で一杯。


次から次へとホント肝が冷えましたよ。破片も見付からなかったし、もう壊したのだと言う事にしておこう。どこを探してもなかったのだ、無ければいいじゃない、もういいじゃない、もうあんなの出会いたくないじゃない、今日本当疲れたわ。

あそこまで我を忘れた事はなかったかし、パニックなった時に魔物無双してたはずだから、何かのタガが外れて悪魔としての闘争本能でも目覚めちゃったとかそんな感じかな?

でも私自身は気付かずそのままノホホンと帰宅→アイビビる、になるわけか。


アイは凄いなぁ、アイが急にラオウみたいな覇気出して威嚇してきたら…うん、私なら逃げちゃうか気絶するかのどっちかだな多分。

でもアイはそれでも私の傍に在ろうとしてくれた。もうそんな事されちゃ離れるなんて出来ないよ。

思わずアイを抱く腕に力が入る。どうしよう、連れて行きたい、離れたくない。ずっと考えないようにしていた事。先延ばしにして逃げてた事。

アイ、アイ、アイ、自分勝手な私を許して、君と離れたくないの、でも外の世界も知りたいの。どうすれば良いのかわからない。

頬に何かが触れる。きっとアイだ、可愛い悪戯っ子にいつもなら癒されるはずなのに、今はただ私の心を酷くざわつかせる。アイに隠し事してる、こんなに大切なのに、私は…私、は…。


『じる?』


目を開くとそこには視界一杯に愛しい白の少女。

この白が見えなくなるのは嫌だ。

アイの私を呼ぶ声が聞こえなくなるのは嫌だ。

彼女の存在が私の周りから無くなるのは、絶対嫌だ。


『じるどうした?じる、かなしい?じる?』


「アイ」

話したい事があるんだ、でもアイに選択肢は無いの、ごめんね。


『じる?』


「アイ、私は此処を出る。着いてきて欲しい、何処までも」

嫌だと言っても連れて行く。何とか説得して、必ず連れ行くのだ。今この時に全てを賭けるのだ!


しかしアイはちょっとだけ驚いた顔をしたが、直ぐに躊躇いもなく頷いた。拍子抜けする程アッサリと、アイは決断した。


え、マジで?

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