第三十四話
そんなこんなで何日か過ぎ。
毎日無双しまくってるお陰か魔物とはもう殆ど遭遇しなくった。
最近よく考える。
魔物は交配して数を増やしているのか、もしくは発生してるのか、いやもしかしたらどっちもアリなのか。
私が一匹残らず狩ったとしても発生してるなら結局はいつかまた同じ事態になっちゃうしなぁ…。
何で元いた森はあんなに平和だったんだろう?まぁ荒野の方はそれなりにいたけどこんなに酷くなかったし。
何か魔物避けみたいな物でもあの森にはあったのかな?
それか、この森に魔物を引き付けるか発生させるような何かがあるのか。
獲物を探してウロウロする。
もう一日に狩る量はかなり減っている。
朝から夕方まで狩って10匹にも満たないくらいだ。夜行性の者もいるだろうと思い逆のサイクルも何度か試してみたがやはり同じくらいの数しか狩れなかった。
うーむ…そこんとこの謎が解明されない限りここから出て行く事はできないなぁ。
アイも知らないって言ってたし、今のところお手上げ状態だな…ん?魔物の気配がする。枯れてしまった大樹の辺りだ。
ん~?何かここ他に比べて魔物よく出るような気がする…?
枯れてる木は結構あったから特に気にならなかったけど、この辺り他に比べればよく魔物に会うような…。もしかして何かある?…とりあえず狩ってからじっくり考えるか。
消滅待ちの魔物を放置して、辺りを念入りに調べて行く。
が、特に変わったところはみられない。
木が枯れたり土地が荒れたりなんかしてるのはそこに多くの魔物がいた証拠だ。
他にも木が枯れた状態の所は結構あった。でも一度狩り尽くしてからは魔物は出なくなったし、緑だって少しずつだが戻って来ている。地球の植物と違って生命力が強いらしく枯れる寸前まで行ってしまっても盛り返せるらしい。何とも頼もしい逞しさだ。
同じような場所で何度も魔物と遭遇するのはやっぱりここだけだし、うん、やっぱりここ何かあるよね。でも見た目は特に何も感じないんだけどな…。枯れてしまった大樹の根元の辺りをふよふよと漂い考えてみる。
この辺りだけ魔物の出現率が他に比べて多いのは何故か?うーん、ん?あ、まだここの理由はわからないけど、他の理由はわかったかも。
もしかしたら、ここから始まったのかも知れない。
この辺りから魔物達は出現し、木が枯れ大地が荒れこの辺りから動物達がいなくなり、常に飢えている魔物達は他の場所に向けて獲物を探しにあちこちに散らばって行った…。みたいな感じかな?
じゃぁここの謎を解明して解決したら一気に片付くかもしれないな。
もしかしたら違うかもしれないけど、ポジティブに行こうポジティブに、うむ。
改めて、ぷかぷか漂いながらあちこち調べてみる。むー?特に何も見付からないなぁ…。魔物の親玉みたいなのとか子供沢山産みそうな母親っぽい魔物とかもいないし…。うーん…視覚じゃ探せないのかな?鼻でクンカクンカしてみるか?
水から顔だけ出して辺りの匂いを嗅いでみる…特に何も感じない。
んじゃぁ聴覚だ。耳を澄ましてみよう………うむ、何も聞こえんね。
じゃぁ、じゃぁ、えっとー、えっとー、まだ試してない事はー…。
味覚?…いや、無いわ。後は…触覚?でもどこ触ればいいのよ、わかるかっての。
後は何だ?
何がある?
うーむ…第六感、とか?…どうやって使うのさ。
むー…じゃぁ気配は?いつもは魔物の気配に反応してあっちこっち飛び回ってたけど、今回は魔物はいない。倒した後は新たな獲物探しに直ぐに立ち去ってたけど、ちょっと集中してなんか探ってみようかな?
もしかしたら魔物の気配に気を向けすぎて見過ごしてしまっていた何かがあるかもしれない。
集中集中…。
何か、変な…感じ…?何だこれ?
微かに、枯れた大樹から何かが漏れ出しているのを感じる。
それは魔の生物以外には害悪にしかならないような、邪悪な気配。
だが体が悪魔な私にとっては何とも無い。いや、少しだけ興奮している?
まぁ気にする程の事ではない。害になっているわけでも無し。
しかし、微かに、薄っすらと漏れだしているこの気配は何なんだ?
何故この枯れた大樹から?
とにかく気配の元に手を伸ばしてみる。
木の幹をえぐり、内部まで進み、片程まで潜り込ませた頃、ようやく気配の元に手が届いた。
指先がソレに触れる。
しっかりと掴み取りゆっくりと腕を引き抜いて行く。
空けてしまった穴を枯れた大樹に申し訳なく思いながら、握り込んだ拳を開き中を確認する。
途端、気配の濃度が爆発的に高まった。
私の手の平を中心に闇が勢いよく広がり辺りを包んで行く。
ぴぎゃあああああああああああああ!
私がパニックに陥っている内にあちこちで闇が揺らぎ、何かが立ち上がる気配がする。
ややややばいいぃいいい!
ここここれめちゃくちゃやばいもんじゃぁあああ!??しずまれぇええええ!
しずまりたまへぇええええええええ!!
少しでも勢いを弱めようと全力で握り込む。
そうしている間にうごめいていた闇達が立ち上がり唸り声を上げながらこちらに向かって来ていた。どう見てもフレンドリーさは感じない。向けられた敵意に体が勝手に反応し敵を叩き潰して行く。
破片から発生した闇達を全て狩り終え、ふと我に帰った私は辺りに散らばる魔物の死骸が目に入る。
………あー、あれ魔物だったのか。なんか闇纏ってたからちょっとビビっちゃたじゃないかコンチクショウ。
ホッとため息を吐き出す。
しかし次の瞬間ソレらを発生させた破片の事を思い出し慌て手の中を覗き込む。
…あり?
手をヒラヒラと振ってみる。
………ほわい?
無い。無いぞ??どこ行った?
何かの破片のような小さな硬い感触が、確かに手の中に存在していたのに。
辺りを見渡してみてもあの闇は見当たらない。気配を探ってみても同じだ。
…なんだか知らんが落ち着いたみたい?