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小心者な悪魔  作者: はるさめ
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第三十話

んん…、なに?



なんかくすぐったい…。

なんだろ?


まだ覚醒しきっていない頭で考える。

ぼんやりと目を開け、体に感じる違和感の元に目をやる。


そこにあったのは目の醒めるような白だ。一瞬ギョッとしたがすぐに思い当たり今度は優しい気持ちが芽生える。

この白の少女に名前を贈った事、一緒に眠った事、少女が可愛いすぎて眠る姿を見ているだけで理性がガリガリ削られていって危なかった事などを思い出した。


そこまで思い出したところで、白の少女の動きがピタリと止まる。

どうしたのかと思い意識を彼女に戻すと、私の腕の中で動けなくなっていた。

どうやら無意識に抱きしめてしまっていたらしい。


…欲望に忠実すぎて自分が恐ろしい。


寝ぼけていて力の加減の調節をしていなかったので、身動きとれなくなるほどキツク抱きしめてしまっていた。


慌てて力を抜きアイの体の状態を確かめる。苦しくないか、痛くないか聞いて、どちらも大丈夫だとの答えに安堵の息が漏れる。


何故かもじもじしながらこちらを見上げるアイの顔は真っ赤に染まっている。

恐らくキツク抱きすぎて、私の胸がアイの顔を圧迫して鼻や口なども塞いでしまったせいで息ができなくなっていたのだろう。

人魚も口から空気入れてんのか、どっかにエラでもついててそこから空気取り入れて呼吸してんだと思ってたわ。


何にせよ悪い事をしてしまったな、ビックリさせてごめん、怖くなかった?と彼女に尋ねる。

アイは首をブンブンと横に振り大丈夫だと一生懸命伝えてくれる。


怖くなかった、少しビックリしたけど大丈夫、良かったらたまにはあんな風にギュウッとしてくれると嬉しい、なんて優しい事まで言ってくれる。

きっと私を傷付けないようにそんな事を言ってくれるのだ、急に万力の様な力で締め付けられたら私だって怖い。

今回はあまり力が入ってなかったみたいで良かった、何かの拍子に間違えてギュッてしてしまってたなら、アイの細い腰はポッキリ折れてしまっていただろう。


力加減、もっと上手くならなきゃな。普段は一定以上の力が出ない様になんとか設定出来ないかな…。

側に居る人が危険になるような力なんてそのままにはして置けない。なんとかしなきゃ…。


アイは何事もなかったかの様に私の腕にじゃれ、一人でよくわからない遊びをしている。楽しそうだから放っておくとしよう。

ん、そう言えばアイさっき何してたんだろ?すっかり忘れてたけど、一応気になるし聞いておこうかな?


聞いた内容は、なんだかくすぐったい感じがして目が醒めたのだが、一体何をしていたのか?とゆうような事だ。私の言葉を聞いたアイは顔を真っ赤にして慌てはじめた。

おお、さっきよりも真っ赤だ。

ってゆうかアイ血の色青だけど何で赤くなるんだろう。毛細血管が開いたりなんかしてそこに血の色が反映されるから照れたり走ったりすると赤に染まる、とかだと思うんだけど。人間の血の色は赤だから赤くなるのはわかるけど…アイは何でだ?まぁアイの体に害がないならいいか。可愛いし。


アイは今だにアタフタしてる。もじもじしたり恥ずかしそうにイヤンイヤンしたり、もう私は彼女に何を言われても許す気満々だ。可愛いは正義です。


口を閉じたり開いたり、アイは私に何か言おうと口をパクパクするが結局また閉じてしまう。頬を染めこちらをチラチラ見ながらも目を合わせようとはしない彼女。


悪戯がバレてどう言い訳しようか考えてるみたいだ。…てゆうか多分それだ。

きっとアイは今まで誰かに悪戯した事なんてなかった、だから私にもどう言い訳したらいいかわからないんだ。私が全部初めてなんだ。


「可愛い悪戯ね」


まったく、なんて可愛い生き物だ。


ビックリしたように私を見るアイに手を伸ばし、髪をわしゃわしゃと撫でる。

うっとりと目を閉じて幸福そうに微笑むアイ、彼女の柔らかな頬をふにふにと摘み額に一つ、キスを落とす。


やましい気持ちなんてなかった。

純粋に、彼女を慈しむ気持ちしかなかった。母親が子にそうするように、姉のように、友人のように、家族のように、ただ彼女を愛したかった。

しかし冷静になるとやはり照れやらなんやらあるワケで、少女に悟られないようにしながらも内心は激しく身悶えしていた。







アイの好物など一通り味見し、(元からあまり食事を必要としない体だが)お腹も満たされたところで狩に行く事を伝えた。

アイは心配そうにしているが私は普通の人魚と違ってとっても強いのだ。

だから心配ない、そして必ず帰ってくると伝える。


なんとなく他の人魚とは違う事を感じていたようで、強さ云々については否定しなかったし納得しているようだった。

はて?

自分では気付かないが何か強者特有のオーラのようなものでも出ているのかしらん?アイの話しでは人魚は戦闘得意ではないらしいし普通止めると思うのだが。

まぁいい、私がその辺の魔物には負けない事は確かだしアイの元に帰ってくる事もまた確かなのだ。

それだけわかっていればごちゃごちゃ考える必要はないな、うん。


アイと軽く抱擁を交わしてから陸に出る。

泉の淵ギリギリまで来て身を乗り出し私を見送るアイ。

さっさと奴らを退治して早く帰って安心させてあげよう、頑張るぞ、と気合いを入れて、スピードを上げ魔物目指して翔けて行った。

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