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小心者な悪魔  作者: はるさめ
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第二十五話

結局、解決策は思い付かないまま。

ひとしきりじゃれて満足したのか、ようやく私の肩から顔を上げた少女と無言で見つめ合う事しかできなかった。


どうすればいいのかわからなくて、取り敢えず散々じゃれたせいで水中に散れた彼女の髪を手櫛である程度整えてやる。




暫く見つめ合ったのち、少女はポツリポツリと言葉を紡ぎ始めた。


どうやら私の目が説明プリーズと言っているように見えたらしい、ラッキーでござる。


少女は語る。


可愛らしい声で時折身振り手振りを交えながら伝えてくれるのだが、イマイチ要領を得ない説明のお陰で不謹慎だがなんだか和やかな気分になってしまう。


自分の好物やお気に入りのサンポコースなども真剣な面持ちで伝えくるのだ。

もちろん本人は至って真面目である。

重要な部分とそうでない部分をごっちゃにして教えてくれるのだ、しかも時系列順じゃないっぽい。

時折、言いたい事が沢山ありすぎるのか上手く話せずに、私の手をギュウギュウ握り締めながら口をもごもごさせて上目使いに見上げくる。



キ ュ ン 死 さ せ る 気 か 。


少女が可愛すぎて生きてるのが辛い。



とか冗談言ってる場合か、一生懸命話してくれてるのに何を考えているんだ私は、まったく。胸が今だにキュンキュンするが彼女のせいでキュン死しても私は恨まない。可愛いは正義!








つまり要約するとこうか。


少女は色無しである。色無しは総じて魔術やその他特殊スキルの扱いが不出来である。


少女の両親は生まれた少女の色を見てすぐ捨てたらしい。この泉に少女をおいて(私がしたように体に水を纏い)他の水辺を求めて移動した。


この泉には他の人魚達も住んでいたので、蔑まれながらも狩の仕方などその他諸々教えてもらいここまで育つ事ができた。


しかし最近は魔物の動きが活発化し、森全体が障気に満ちてきた。

他の人魚達が周囲に結界を張り侵入を防いでいたが、とうとう魔物の数が無視できないレベルに達したので他の大陸に移動を開始した。(人魚はあまり戦闘が得意ではないらしいので戦うくらいなら逃げる方を選ぶ)

しかし少女はうまく水の制御ができない。

一人取り残される。

そこに私登場。

タックル&しがみつく方程式完成。


とゆうワケらしい。

自分のような出来損ないは拒まれるだろう、拒絶されるだろう、でも独りぼっちはもう嫌だ。そんな思いで私にしがみ付いていたらしい。

成る程、初め私が動く度に怯えていたのはそれでか。


確かに少女の髪の色は真っ白だ。瞳も肌も、鱗の色も全てが漂白したように白い。

だがそれがどうしたとゆうのか、少し能力が使えないくらいでこの仕打ちはあんまりではないか。

聞けば髪を撫でられた事も誰かに笑いかけられた事もなく、成長して一人で生きていけるようになってからは、少女はそこにいないものとして扱われてきたらしい。


それでも人魚はまだ慈愛のある生き物だと聞かされた。幼少の頃は嫌々ながらも育ててくれたのだ。他の種族になると色無しは生まれた瞬間殺される事が多いらしい。

そんなのって、あんまりだ…。

少女の説明が下手だったのは恐らく、他の誰かと言葉を交わし得るはずだった経験が圧倒的に不足していたから。


思わず少女を胸に掻き抱く。

少女は私の腕の中で幸せそうに笑っている。胸に擦り寄る少女を優しく抱きながら、私は一つの決意をする。

この子が水の扱いをちゃんと覚えるまで側にいて支えてあげよう。


私はこの世界をもっと知りたい、見てまわりたい。このままここで少女と暮らすのもいいが、やはり外の世界も気になってしまう。少女が能力をちゃんと覚えたら、選ばせよう。

このままこの泉に残るか、私と一緒に来るか。どちらにしても酷だろう、一人で残りここで生きるか、私と一緒にあちらこちら回り出会う物達に蔑まれながら生きるか。

もちろんできる限り少女を守る、心も体も、全力で守るつもりだ。


さて、彼女次第だがどちらにしろ明日やる事はかわらない。私自身この森の現状が許せないし、彼女がここに残る事を選んだ場合の為にも、奴らを一匹残らず駆逐しなければ。


あ、でも狩りに行く事どうやって説明しよう…。離れようとしたらたぶん泣いて縋るよね。

やべーどないしよ…。

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