第二十三話
少女の震える細い肩にそっと手を置く。
ハッとしたように私を見上げるその顔には、濃い疲労と焦り、縋るような、祈るような必死の形相が浮かんでいた。
真近で見て初めて気づいた少女の様子に驚き、息を呑む。
フリーズしたまま動けない私はそのまま数秒、無言で少女と見つめ合う。
今だに頭は固まったままだが体は自然に少女を慰めようと動いていた。私の腕が少女に向かってのろのろと伸びていく。
途端、少女のしがみ付く力が強まる。
いやいやするように私の腰に顔を擦り付け、離れるものかと必死に私を締め付ける。
ぐえっ、ぐ、ぐるじい…。
少女の締め付ける力に一瞬息が詰まるり、痛みで我にかえった。
私が身動きする度に、少女の細腕は私を締め付ける力を強め、その身に纏う悲痛な雰囲気は濃さを増していく。
………私が動くのはダメらしい。
触れられたくないのか?
なぜ?
私自信の事が嫌いだから、とゆうのはないよね?だったらさっさと離れてしまえばいいのだ。むしろ私にくっついて離れないのだからその考えは除外だな。
一体何があったらあんなにも悲痛な表情ができるようになってしまうのか。私よりも幼いであろうこの少女に、一体どんな悲しい出来事が起こってしまったの。
あなたを苦しめる悩みを取り除いてあげたい。
訳を聞こうにも腹立たしい事にこの唇は動いてはくれない。っ!このっ!こんな時に使わなくていつ使うと言うのよ!
思わず怒気が漏れてしまう。
ビクリと少女の肩が上下する、しまった!どうやら怯えさせてしまったらしい。っ、私のばかっ!
何に怯えているのかわからないが私のせいで更に縮みこまってしまった彼女に、私は何をしてあげられるだろう。
抱きしめて慰めてあげたいと思っても、目の前のこの可哀相な少女は私に触れられるのを怖れている。
優しい言葉でもかけて落ち着かせてやりたいが、私の唇は一向に開こうとはしない。肝心な時に役立たずなこの体に憤りを感じながらも、何ができて何ができないのか必死で考える。
動けない、話せない、私に出来る事は何か。
結局、少女が落ち着くまでこのまま何もせず漂っている事しかできなかった。
動かなくなった私を不思議に思ったのか、怖ず怖ずと上目使いに私を見上げる。
今の私にできる事なんて一つしかない。
誠意を見せる、それだけだ。
私はあなたを怯えさせるつもりはないのだ、危害を加えるつもりはないのだと。
少女を見つめる眼差しに思いを込める。
ああ、せめて優しく微笑む事ができたなら、少しでもこの子を安心させてあげられただろうに。