第十六話
オーケー、もちつ、落ち着ちつくんだだまき。
深呼吸深呼吸。
大自然の息吹とそこらじゅうに漂う獣達の臭いを胸いっぱいに吸い込む。(げほごほ!)
改めて状況を確認する。
動物達はじりじりと包囲網を狭め、円陣を組みつつ私ににじり寄ってきている。
お互いを牽制しつつも私に色目を使うのを忘れてはいない!
あれは獲物を狙う女豹の目だ!
何故こうなった!
焦りつつもとりあえず目の前の馬っぽいのを観察してみる。
…む?あいつメスじゃね?
オスの股からぶらさがるアレが見えない。
周囲を見渡し動物達の股間に視線を這わせる。
…あれこいつらみんなメス?
なに?この森のメスの動物はみんな百合趣向なの?
てゆうか弱肉強食の掟はどうしたよ。
何で肉食っぽいのの隣にうさぎモドキがいるんだよ!
隙間なく円陣組みやがってコンチクショー!逃げられねー!
っく!なら上だ!木の枝に飛び乗って戦線離脱を謀るしかない!
バッサバッサ!
チュンチュン!
ピー!ピー!
「………」
アカン、万事休すや。
どないしよー…。
食べる以外で動物達はなるべく傷付けたくない。動物好きだし。
だからといって獣姦は勘弁願いたいが。
仕方ない。いくらか力のコントロールも上達してきたし…。
向かって来る動物達を優しく受け流しつつ走り、なんとか傷付ける事なく包囲網を突破した。
跳ね飛ばしてしまう心配はなくなったので走るスピードをグンと上げる。
私のスピードについてこれるとは思わないが念のため、追って来れないように途中で気配を消しながら走る。
早く撒いていつもの川に行こう。のんびり釣りでもしながら原因を考えよっかな…。
どうしてこうなった。
相変わらず息の乱れないこの体を頼もしく思いながらも、あちこちから集まってくる動物達に精神的な疲労が蓄積されていく。
逃げている最中にまた新なメス達が集まり。
ほぉ~らこの通り!
「ガサガサ!」「バッサバッサ!」
「ピョン!ピョン!」
「ドスドスドスドス!」
終わりのみえない鬼ごっこが幕を開けた。