第十ニ話
化け物魚の青い血が辺りに飛び散る。
『ギシャヤアアアアアアアアアアア!!』
根元から綺麗に断ち切られたしっぽは空高く舞い川の中に勢いよく落下した。
『グルルァアア!!ギシャァアアアー!』
痛みに喘ぎ無差別に発射される水鉄砲を、転生して得た抜群の反射神経で危なげなく避けていく。
よし、そのまま体中の水分を飛ばしてしまえ!後は水辺に近寄らせないように回り込むだけだ!
川の中に突っ込んでいたしっぽさえ切り離してしまえば、もう水分の補給はできないだろう。
私達の戦闘のせいで周囲の木々は倒れ地面はあちこちえぐれている。
あの魚ヤローが叫び声あげたり何かアクション起こす度に鳥達は羽ばたき更に遠くへと逃げていた。
暫くはもうこの辺りに巣を作る事はできないな、木とか穴だらけでまだ立ってる木も今にも倒れそうな感じだし。
ごめんね、環境破壊しまくりで。ほんとすみません。
周りを観察していたらいつのまにか向かってくる水の弾丸の量が増えていた。
再び魚ヤローに視線を戻す。
私を目掛けて水鉄砲を放ちながら突っ込んで来る魚の魔物が見える。
今では元の大きさより少し大きいくらいだ。
正面から見据え、足に力を込める。
足の形がバキバキと鈍い音を響かせ変形していく。より瞬発力が高く、速く、鋭く、風の様に翔ける為に。
今度は腕に意識を向ける。
堅く、鋭く、樹木のようにしなやかに。
水の弾丸を避けながら体を作り変えていく。
意識を奴に戻すともう目前まで来ていた。今までにない量の弾丸を作り出している。それに伴い奴の体格も随分縮んではいるが、あれも私もどの道この一瞬に賭けている。もう余計な事は考える必要はないな。
ほあっ!
視界一杯に広がる水の弾幕を横に大きく跳んで避ける。
…っ!距離が開きすぎた、強化したばかりの足だと感覚がうまく掴めない。
魚はこの好機を逃がすまいと水辺に走るスピードを上げる。
逃がすかっ!
今度は全力でっ、跳ぶっつ!!
魚目掛けて一直線に跳躍する。
ビュン!!
は、はや!ぶつかっ!
「……っ!」
『ギョエ!?』
パァアアアーーン!
「…………」
青い雨が降った。
やっぱ締まらないなぁ。私。
むしろ大抵体当たりで片付くんでない?
…なんだかなぁ。
「………ハァ」