第一話
ふと、見上げた空は青かった。
は…?
いや、空ってwwwここ私の部屋だからw室内だからw
ほら、見上げた先にはいつもの四角い天井が…てんじょ…てん………天井がないとおかしいでしょぉおおお!!!?
ななににに何が、何が起こった!?
なっなっな、何で外に…外にいるの!
おおオカシイ!オカシイでしょうこれ!
たった今までクーラーのガンガン効いた部屋で至福の時間を過ごしていた筈、肌だってまだ冷気を残したままヒンヤリと…ヒンヤリ…と………やだ、何かヤケにスベスベするんだけど何これ?
肌の温度を確かめる為に触れた自身の腕は、途方も無く滑らかでそれはもう素晴らしい撫で心地でした。
ぐへへ、姉ちゃん良い肌してんなぁ。プリプリのスベスベやないかぁい、ぐふふ。
すんばらしい触り心地に思わず目をとじてうへうへと堪能してしまう。
その際何故か関西弁口調の変態オヤジになってしまったが、はて。自分の肌はこんなに撫で回したくなるような素晴らしいものだったかと疑念が湧く。
オカシイ、ここ最近私は昼夜問わず活動していて、寝る間も惜しんで趣味に時間を注ぎ込んでいた。
当然、肌だって荒れ放題でこんな触り心地は有り得る筈が無い。
とゆうか人の肌ってこんな気持ちいいもの?なんかもう別次元の心地良さ。
頬やら二の腕やらうっとり目を閉じて撫で摩っていたが触れば触るほど疑念は大きくなり、元の体との違和感をより強く感じるようになってしまう。
オカシイ、オカシイ、私の肌はこんなんじゃない。
肌状態を目視して違和感の正体を見つけようと瞼を上げる。
…開けた視界に映るのは大自然だった。
………そう言えばここ外だった!
こんな事してる場合違うアルよぉお!
自分の置かれている状況を一気に思い出した私は慌てて周囲に視線を走らせる。動揺しながら見る景色は容赦なく私の不安を掻き立て増長させる。今心が折れてしまったら何も出来なくなってしまう気がして、無理矢理テンションを押し上げた。
ヤバイヤバイヤバイ、ここ完全に外だヨ!
ドウシテこうなったヨ!
警戒しつつ周囲を見渡してみても荒れ果てた大地から生えた今にも枯れそうな雑草がちらほら見えるくらいだ。あとは妙に捻れてくねくねした木がぽつぽつ立ってて何か不気味。
でも獰猛そうな生き物の気配はないっぽい。無意識に潜めていた息を元に戻し強張っていた肩の力を抜く。
ちょびっとだけ安心できた所で簡単な現状の整理とこれからどうするかを考える。
まずここは何処か? わかんね
私がここにいる理由は? わかんね
脱出は可能か? わかんね
夢オチの確率は? わかんね
安全は………確保できそうか?
ハイ、どうみても大自然です。本当にありがとうございました。何とか家に帰るとか、飢えて果てるとかの前に、まずは獣に食われるよねこれ。
肉食獣ウジャウジャいる所だったらマジ勘弁!とりあえず隠れられそうなトコとか何かやり過ごせそうなトコとかそーゆートコ探さな!
全く状況が飲み込めないけどとにかく安全確保第一!
まずは周囲の探索から始めるか、とコソコソキョロキョロしながら歩いて行く。
…コソコソしてるつもりなんだけど…ネトゲ(ネットゲーム)のしすぎか私の背筋はくったりとしていてこんなにシャンと伸びているハズが無い。
あるぅえ~?おっかしいなぁ~。
猫背になってコソコソ進んでるつもりなんだけど…何かヤケに堂々と歩いてる気がするのよね。
またか、違和感また増えたよ。
けど今はそんな事より落ち着ける場所を探さなアカンねん。増えて行く違和感を無視して歩き続ける。
乾燥してひび割れた大地を踏み締めて歩く。
歩く、歩く、歩く。
安全に寝泊まりできそうな場所と食料をどうやって確保するか考えないと…。
うん、チラチラ視界に入ってくる足とかなんか爪とか形とか変わって黒々としたいろいろ禍々しい感じになってる気がするけどそんなのは後だ。
気にしたら負けだ。
夜が来るまでになんとか休める場所を見つけないと…全身のボディチェックはそれからです。
ふと空を見上げてみる。
…うん、普通の青空だ。
太陽がなんか三つもあるけど。