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第七話 助っ人参上!!

 その魔剣士は、長身の男だった。

 風に揺れる銀色の髪と、水晶のように澄んだ双眼が、異様な存在感を放っている。


 アレンは、膨大な情報の中で、助けが来たと言う情報だけを汲み取り、応える。


 「あいつ敵です!」


 アレンは、的確で簡潔に説明し、指をさす。


 「へー、アイツらだけ?」

 「はい!!」


 魔剣士は、チラリとアレンに視線をやると、


 「君……」


 と何かを言いたげな表情でこちらへと近付いてきた。


 エルが余所見を許すまいと、微力ながらも魔力が練られたナイフを投擲する。

 ナイフは、確かに魔剣士の身体を捉えた。

 剣で受けた様子もない。

 避けた気配もない。


 それでも――血は、一滴も落ちなかった。


 アレンの中で当たったと確信している。

 先程から理解できない現象が続けざまに起き、アレンは混乱していた。


 エルも同様に混乱していた。

 殺す気で投じたナイフが掠りもしなかったからだ。

 自分の腕は、自分が1番理解出来ていると言うように、エルもそうであった。


 魔剣士が、エルへと手のひらを向けた。

 詠唱は、無い。


 次の瞬間、爆発が起きた。


 エルは為す術なく、もろに爆発を受ける。

 エルは見誤っていた。

 この魔剣士が無詠唱魔法を扱える事を。


 「エル!こいつから、逃げるぞ!!」


 フェアンは、焦った様子で、傷ついたエルに駆け寄る。


 「誰から逃げるって?」


 魔剣士は、フェアンの服を掴み、投げ付けた。


 「お前の方が厄介そうだし、お前から殺すか」


 休暇を邪魔された怒りをぶつけるかの様に、フェアンに拳をお見舞いした。


 フェアンは、顔面に高密度の魔力が練られた拳を受け、壁に叩き付けられる。

 ゼーゼーと息が荒くなり、体が蹌踉ける。


 この攻撃を後2発受ければ、死ぬ。

 そう本能的に思い知らされる。


 フェアンは、あまりの力の差に笑いが込み上げた。

 何と言う理不尽な逆境であろうか。


 人間を殺したい欲に駆られ、軽く街中に来たつもりが、

 まさか自分が狩られる側になっていたとは。


 本当に、運が無い。


 フェアンは、色々と人と対峙してきたが、

 ここまでの人間とは出会った事がない。


 「フェアン!逃げろ!!」

 エルが、血が混ざった声で叫んだ。


 エルは、命と引き換えにフェアンを逃す事を選択した。

 此処へ魔法陣で来たのだから、少しでも時間を稼げば逃げられる。


 エルは一瞬だけフェアンを振り返り、

 迷いを捨てるように魔剣士の前へと割り込んだ。


 「へぇ、意外。君らみたいなのでも、仲間はちゃんと大事にするんだ」


 魔剣士は、余裕な素振りで驚きを表す。


 「ま、だからって逃す気は無いんだけどね」


 自嘲じみた笑みを浮かべ、いとも容易くエルの腕をボキッと折ってみせる。


 すかさず至近距離で、氷の魔法をフェアンの足に絡めた。


 フェアンのポケットから、チャランと音を立てて、

 剣の模様が彫られた金のメダルが地面へ落ちる。

 

 魔剣士は、スッとそれに気を取られる。


 フェアンは、鷲掴むように金のメダルを拾い上げた。

 

 エルはその隙に、もう一方の手でナイフを投げ、

 フェアンの足を切断。


 フェアンは、片足と両手で這い蹲りながら逃走する。


 魔剣士は逃すまいと炎の魔法を発動したが、

 エルが前に立ち塞がり受け止めた。


 エルは、今にも命の灯火が燃え尽きようとしていた。


 まだ消させねぇよ、とエルは静かに言い放つ。


 フェアンが逃げるまでは、絶対。


 だが、その思いを踏み躙るかのように、

 無情にもエルの体に腕が貫かれた。


 エルは、最後の力を振り絞った。


 「……魔剣士。この勝負は、俺の勝ちだ」


 ククっと笑い、思い残す事がないように笑みを浮かべ、

 チリとなって消えた。


 魔剣士は、フェアンが逃げた方向へ振り向く。

 居なかった。


 地面には、規則的に付着している魔力が、微かに残っている。


 「魔法陣の転移か……」


 魔剣士は、うーんと腕を伸ばした。


 「まぁ、しょうがないよね!」


 満面の笑顔を作り、自分に言い聞かせた。


 「大丈夫ですか!?」


 騒ぎを聞きつけた他の魔剣士達が駆け付けてくる。


 険しい表情で、深刻そうにしていた。

 だが、先にいた魔剣士を見ると、その表情はほぐれていく。


 「ライヴァンさん、状況説明を……」


 そう催促したのは、ロウスという少し長めの髪が特徴の男だった。


 「逃げられちゃった」


 ライヴァンの軽い口調とは裏腹に、周囲には


 「えー……」


 と微妙な空気が漂っていた。



 「アハハハ!コテンパにやられちゃったよ」


 薄汚い地下通路で、フェアンは高らかに笑った。


 「フェアン無様にやられたな。エルは....死んだのか」


 薄暗い地下通路から姿を現したのは、ダンであった。

 フェアンと同様魔人である。


 「ったく、何なんだよ。あの魔剣士。攻撃通じないとかズルじゃん!!」


 「そのような魔剣士が居たのか?」


 ダンは目をパッと開けた。


 「そうだよ。あー、俺は今、あのアレンとやらに無性に腹が立っている」


 そう苛立ちを見せながら、体を伸ばした。


 「ダン決めたよ。俺はアイツを殺す。ただ殺すんじゃない。精神にグッと来る素晴らしい殺し方を!!」


 ◆


「私は、何も出来なかった。私は無力だ」


 病室でラインは嘆いた。


 薄暗い病室。

 床頭台のランプが、ラインとベッドに横たわるアレンを淡く照らしている。


 「何言ってんだ。アイツらは強すぎた。並の魔物じゃねぇよ。それに、俺ら魔剣士の見習いだし」


 俺は、ラインの突拍子もない発言に首を傾げた。


 「ラインが居なければ、俺はあの少女まで見殺しにしていた」


 手のひらに刻まれた傷を見て、あの時を思い出す。


 あの助けに来た魔剣士は、ライヴァンと言われたか?

 あの異常なまでの強さ。

 魔剣士の事はよく知らないが、上澄みの存在だろう。


 魔法を発動する時も詠唱が無かった。

 あれが無詠唱というやつなのか!?

 使ってみてー!!


 まぁ助かって良かった。

 死ぬのかなって、心の隅でぼんやり思ってたからな。


 そして、あの後。

 魔力を受け過ぎて意識を失い、

 気付いたら病室って感じだ。


 「でも……私は!!」


 ラインは俯き、口端を小刻みに震わせた。


 「でも、私は、弱い」


 ラインは続ける。


「本当は、私がアレンと少女を守らなければいけないのに、死ぬ思いをさせた」


 声を荒げる。


 「ライン……」


 俺は、ラインの動揺ぶりに言葉が出なかった。

 何がラインをここまで思い詰めさせているのか分からない。


 プライドか?

 ラインは強い。才能もある。


 それ故の重圧なのか?

 それにしても、行き過ぎじゃ……。


 ラインは、ふと我に返り、

 取り乱した自分を自覚した。


 アハハと誤魔化すように笑う。


 「ごめん!取り乱しちゃった。もう行くね。傷は命に別状ないのよね。本当に良かった」


 ラインは椅子から立ち上がり、

 逃げるように立ち去る。


 俺は、ラインの背に手を伸ばし、引き止めようとした。


 だが――届かなかった。

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