逃れられぬ承認
人生は希望を失ってからの方が長いのかもしれない。
結果、ホイッスラーの女装は話題になったものの、ストーカーが増えただけで予選には影響しなかった。
3日が立ち集計が終わる。
「流石、ホイッスラーくん。2位とダブルスコアで1位だね」
例のクラスメイトの男子が声をかけた。
「目隠れくんかっこいいのに31位ってなあ。惜しかったね」
「いや、きみにそう言ってもらえるならおつりが出るわ」
「わたしも一位通過したところで、本選はカップルメーカーにならないといけない」
「ホイッスラーくんが彼女を量産すれば勝ちじゃん!」
「それは奥の手だね」
ホイッスラーは教室の隅でHPの予選結果をスクロールをしていた。首位確定で以下の順位を気にも留めていなかったが、いまさら結果が気になっていた。ゲオルグは抜けたのだろうか?そんな風に気にしながら画面をみていると大きな足音が響くのに気が付いた。
「よお!秀才クラス!ホイスいる?」
ゲオルグが教室の扉を派手に開けてやってきた。
「2位っ、2位!いやあ、練習動画を配信した甲斐あった~!」
ゲオルグは上半身裸でホイッスラーのいる後ろ側まで駆け抜けてきた。
「よおっ!相棒!放送通り、おれたちがトップツーだったわけ!」
「ああ、2位だったんだ。おめでとう。決勝でも逢おうね」
「余裕そうなところ悪いけど本選は一番得意なまであるからな?メンズクラブのやつらもサッカー部のやつらも彼女ナシ全員に彼女作らせるからな??」
「たしかにゲオルグは人を巻き込むのがうまいよね。わたしも学ぶべき点だ」
ゲオルグは頭に巻き付けたシャツを解いて着込んだ。なぜ脱いでいたのか。
「ところで相談に来たんだけど、時間良いか?」
「もうすぐ授業だから放課後にしようか、練習終わりは?」
「練習終わり22時過ぎなんだが、逆に大丈夫?」
ゲオルグはホイッスラーを伺った。
「流石、全国優勝を照準に当てているところは別格だ。いいよ、どこで会う?」
「おれんちでもいいが、ホイスと逆方向なんだよな」
「わたしの家にきなよ」
「ええーっ!!嘘だろいけんの!?」
ゲオルグは眉を広げて驚いた。
「学園の自習室は混みそうじゃないか?」
「自習室いったことないぜ!」
「……わたしの部屋のアドレス送るから、漏らさないでくれよ」
放課後、夜。練習終わりまで自習をしていたホイッスラーはゲオルグと合流して家へ向かった。
「運転手いるのヤバすぎだろ」
「ストーカー被害を受けて学園が雇ってくれているんだ」
「ここか?いいところ住んでいるんだな」
「そうだ。付いてきてくれ」
最近はやたらと人を家に上げている気がする。
「すれ違った人がもっていたネックレスエグイ高そうだったな」
「不躾だから、そういうの止めておきなよ」
扉を開錠する。
「酒とかある?……冗談だって!雰囲気いいから」
「とりあえず、そっち座っていいよ。基本水しかないからそれでいいね?」
「おう、サンクス」
まるで自分の家のように優雅にソファにもたれかかるゲオルグ。
「それでな、話なんだけど」
夜にも関わらずサングラスをかけるゲオルグ。気に入っているなそれ。
「俺と組んでSIC決勝行こうぜ」
ゲオルグが水に口を付けた。
「じつはおれ中イケメンの学費手当金を狙っているんだ。無理言ってセークエンスに入学したものだから、弟の学費を逼迫しちまって、来年ではダメなんだ。今年勝って、金の余裕を作らなきゃいけない」
「モテたくはないのか?」
「もちろんモテたい。」
トイレにいったゲオルグをまつホイッスラー。
「それで、手を組むってどうするの?わたしは地道にカップルを作りつつ協賛を得ようかなと考えていたのだけど」
「おれは野郎を用意する。ホイスは女子生徒を用意してくれ。それでカップルを大量に成立させよう。男子におれほど顔が利くやつはそうそういない」
「なるほど。妙案だ」
「いまリアルタイムで見る限り、ジャンセンという男がトップに出ている。やつは小イケメンのなかでも十人並の見た目だが、人脈がすごくて、予選落ちの一部のやつらからカルト的人気がある。つまり票を多く持っているわけだな」
ゲオルグは本選集計の画面を見せてきた。
「協賛ポイント以外にもカップル作成も順調にできている。やつ自身は彼女ひとりだけなので、そこまでモテるタイプではなさそう」
「わたしたちはどんな位置なんだ?」
「ホイスが2位でおれは6位だ…………この段階は得手不得手が出るだろうな」
「その他小イケメンたちは派閥を組むのだろうか?」
「さあ?こういうやつらはプライドで組まなさそうだがな」
「むむっゲオルグ!みてごらん。秀才のカーターくんもいるじゃないか」
ホイッスラーは小イケメンリストのひとりに目が留まった。
「だれだよ」
ゲオルグは興味なさげだ。彼は顔が広いとはいえ、秀才たちとは接点があまりないのだろう。
「学力試験で1%の壁の常連だ。まさかイケメンとしてもTOP1%を目指すだなんて」
ゲオルグはカーターの写真を見る。眼鏡をかけた正統派イケメンといったところか。
「カーターと話してみたいな」
ホイッスラーがつぶやく。
「そりゃなんで?」
ゲオルグが尋ねる。
「取り込めそうだから……というのは冗談で話してみたい。なぜSIC出たのか」
それから、ホイッスラーとゲオルグは票稼ぎの戦略を日付が変わるまで論じた。
それでも可能性は生きていると信じて動くんだ。




