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小イケメンの壁

[セークエンスイケメンコンテスト]

予選ルール:全参加者は専用ページにプロフィールを入力。

      いくつでもアピール動画を載せてよい。

期間は発表から1週間経過まで

投票は学園所属者全員に与えられ、一度のみ有効。

投票権は2種あり、通常投票と推し投票が可能。

本選出場者は投票上位30名となる。

 昼。学園祭セークエンスイケメンコンテストの内容が発表された。


 ホイッスラーは学園の教室でいつものように歓談していた。


「大羊の徒座長のロドリックです。今年度の学園祭について吾輩から発表させていただく。先日のセークエンスイケメンコンテストにホイッスラーくんが参加表明したことでSIC参加者は300人を超えた。これは学園の歴史をみても異例の規模となる。きっと苛烈な競争になるだろう。そこで従来は本選から決勝と選考プロセスが設けられたことに対して、予選を追加することにした。予選では書類選考と投票選考が課せられて、このプロセスで30名まで絞り込む。30名は学園祭初日と2日目で影響力をテーマに競っていただく。そして学園祭最終日に決勝4名で総合的に雌雄を決していただく」

 ロドリックの絶え間のない説明。例のおさげの子の声が聞こえる。

「ものすごい参加者数ですね!300名は具体的にどのように投票されるのでしょうか」

「いい質問だあ。はいチーズ……ううんとね。予選ではボーイズにアピール動画を取ってもらうよん。高身長とかタグを付けてもらって、それで投票してもらうよ。学園生徒や所属者は普通の1票分として投票するか推しとして3票分投票できるわけだ。上位30名を本選に出場する権利が与えられるのだあ……」

「参加者はいまも募集していますか?」

「ちょうど、参加者用サイトをこしらえたもので、受付は本日いっぱいでやっているからねえ。イケメンだと信じてやまない自信家諸君はぜひ参加しようねえ。小イケメンで賞、つまり入賞者は本選出場者の30名で例年通り旅行手当金の支給だね。そして表彰状。決勝出場者4名は中イケメンで賞、すなわち自身の学費の免除と過払い額の返還だ。貧乏学生にはたまらないね。表彰状も当然得られ、トロフィーも送られる。優勝者はセークエンス学園VIPとしてあらゆるイベントの優先参加権と衣食住の手当金が手に入る。大イケメンで賞だね。そして、学生寮の最上階が開放される」


「城の最上階は非公開のスイートルームですね。来賓の方向けに極まれに使用されているそうです」

「そうだ。そして、優勝者たちはその場を宴の会場として使うものもいれば、パートナーを誘って過ごすものもいる。使い方は自由だ」

 ロドリックは語る。

「これはぜひ中イケメンには入って無償で通いたいものですね!」

「ここ、高いからねえ。ただ今回は本選が肝なんだ。優勝候補筆頭のホイッスラーくんに対する挑戦ともいえる内容だ。逆に彼の影でくすぶっている隠れイケメンのチャンスでもある。詳しくは学園祭HPで記載しているよん」

「さて、つぎに放送部が独自に手にしたマル秘情報からSIC優勝有力候補をピックアップしています!引き続きロドリックさんお願いします!」

「いやあ、イケメン揃いの学園で有力候補なんてむずかしいなあ!みんなで写真集をつくりたくなっちゃうねえ……」


 ホイッスラーは学園のホームページから参加者用自己紹介ページの登録を進めていた。

「えーと、名称、所属部はなし。アピールポイント……過去に芸能活動やっていましたと。特技、絵画と学習能力くらいじゃないか。成績や運動記録まで入力できるのか……多いな」

「ホイッスラーくん出るって本当なんだね」

 女子生徒が声をかける。

「そうなんだよ。例の子に再アタックするから絶対優勝したい。ぜひ投票してほしい」

「予選は余裕でしょ!圧倒的に知名度あるし、カッコいいし」

「ありがとう」

「うちら得意だから、動画撮るの手伝うよ」

 意外にも協力的な人が多く、予選突破は簡単そうだ。

 教室の隅で騒ぎが聞こえた。

「おい、こんな本選ルール、アリかよ!?」

 声をあげた男子生徒と目が合う。目隠しの彼はかわいい雰囲気ながら鋭い目をしていた。

「あ、ホイッスラーくん!じつはおれもSIC出ようと思って、規約読んでいたんだけど、本選は他者を幸福にできるイケメン影響力を競うらしいんだよ。それはまあいいじゃん?でも、よく読んでみてくれ。学園内で何人恋人を作り、幸福にできるか。その数によって幸福度合いを評価するらしい。手段としてはなんでもあり。漆黒のビアンカみたいなことを書いてあるんだ。こんなのイケメン関係ないじゃないか!」

 ホイッスラーに向かって説弁する男子生徒。

「くそっ、おれはどうすれば」

 本選の難しさから参加を辞退する層もいるらしい。しかし、予選突破だけでも旅行費用負担という大きなメリットがあるため、残る者も多い。

「とりあえず、予選一緒に突破してから考えようか」

 ホイッスラーに語られた男子生徒は思い直した。

「去年でさえ決勝に行けなかったから、今年こそはやるんだ!そして、爆モテの学園ライフを!」

 ホイッスラーは激励はしたものの、本選での競争に懸念点があった。たしかにカップル成立やキス写真を撮る行為はハードルが高い。ましては自らカップルを作り、キスをするなどエルフィア人であっても簡単ではないだろう。


「とりあえず、SIC対策委員会を発足しよう」

 ホイッスラーはアーロンやビアンカ、ノワールを招待し、グループをつくった。ゲオルグの力も借りたかったが、彼はライバルとして参加するので控えておいた。


 放課後、ホイッスラーの部屋に招待した3人が集う。

「よお、モテ男、すでに投票首位じゃねえか」

「力が強いぞアーロン」

 アーロンが頭をわしゃわしゃとしてくる。茶髪が乱れて鳥の巣のようになった髪をみてビアンカがお腹を抱えた。

「あーっはっは……ホホイのホイなら予選はないようなものだよね☆でも本選は真向にやって勝てるものじゃなさそう」

「そもそも、あのクソルールはなんだ?大羊の徒の頭脳には蛆が沸いているだろ」

 ノワールがつぶやく。

「ホイッスラーくんがキスして回れば勝ち確定だよね☆」

 ビアンカがとんでもないことをいうものなので、ノワールとアーロンが噴き出した。

「ゴホッゴホッ、冗談がすぎるぞビアンカ」

 咳き込むノワール。

「ジョアンナがどう思うんだそれは」

 アーロンが却下する。

「そもそも優勝と交際は無関係だよね☆いますぐ告白してきなよ!さもなくばウチが盗っちゃおうかな~?」

 ビアンカが手をワキワキしている。

「そうだ、ロドリックに頼んで、ジョアンナの投票先を聞いてみよう。わたしに推し投票しているなら優勝も同然だね」


ロドリック:個人情報は明かせない。申し訳ないが

                                   わかった:ホイッスラー


「あいつしっかりしているな。直接聞けばいいか」

 ホイッスラーは直接ジョアンナにメッセージをすることにした。


                              SICの投票誰にした?:ホイッスラー


ジョアンナ:めっちゃ急だね。迷ったけどゲオルグくんとホイッスラーくんにしたよ


                      ゲオルグ!?まさか推し投票を彼に?:ホイッスラー


ジョアンナ:うん


「え??あの子ゲオルグに入れたの!?ぶぁははは」

 ノワールが隣で爆笑している。思わず女装姿を拡散しそうになるが堪えたホイッスラー。

「いやこれまずくないか?優勝しても無意味かもしれないぞ。いや、すでに付き合っているという線さえあるかもしれない」

 アーロンが顎に手を添えて思案する。

「ゲオルグってサッカー部主将になるやつだろ?代々サッカー部主将は浮気性で有名なんだが、あいつも例にもれずそうなのかもしれない」


 ノワールが不吉なことをいうものだからホイッスラーも頭を抱えだした。

「というか姫はあれが好みなのか?そんなバカな、わたしとまるで違う男じゃないか。そんな趣味をしていたとはまったく感じさせなかったというのに現実というやつはいったいどうなっているんだ。このままでは予選とか決勝とかどうでもよくなってしまうのでは」

 紅茶を飲み干したビアンカが手鏡でメイクを確認しながらいった。

「とりあえず、ゲオルグくんが好きか聞いてみればいいじゃない」

「他人事だからってあっけらかんと」

 ビアンカはホイッスラーから端末を奪い、メッセージを打ち込み始めた。

「勝手に送らないでくれよ?」


   ジョアンナ、きみが好きだ。SICで優勝するからその日の夜は開けておいてほしい:ホイッスラー


ジョアンナ:!?

      ありがとう。楽しみにしているね。


                     ところでゲオルグのことは好きなのか?:ホイッスラー


ジョアンナ:なんとなく面白そうだなと思っているだけだよ(笑)


「ほら!大丈夫だって」

 ビアンカに画面を見せられたホイッスラーは驚愕と安堵の間を揺さぶられ混乱した。

「おえ?おおお。うそでしょ」

 ソファにもたれたホイッスラーをアーロンがあわてて支える。

「おい、しっかりしろホイッスラー!ビアンカおまえ勝手に送ってなにを考えているんだ」

「なにって、そりゃあ彼らの幸福の成就だよ☆」

「しかし、よかったなホイッスラー。ゲオルグは敵ではなさそうだ」

 ノワールがホイッスラーの肩に手を置いた。


「リアルタイムで投票結果をみても、ホイッスラーはダントツ一位だ。ゲオルグも地味に人気だ。腐ってもキャプテンだな」

 アーロンが端末を確認する。

「それはいいとして、決勝にどう進むつもりなの?」

 ビアンカが尋ねる。

「よければ漆黒派つながりで女子や男子を用意するからキスしまくって、稼ぐってのはどうかな?」

「けしからんっ、そんなのは元風紀委員として見過ごせない。ぼくたちの青春は清き場のもとにあるべきだ。やはりこのようなSICは認めるわけにはいかない」

 ノワールがお茶をぐびっと飲み干した。

「今更だな。止めようがないのに」

「ノワールよ、女装を広めるのはどうだ?お得意のスキルで女装コンテストを開こう」

 アーロンが唐突に提案する。

「企画は早めに大羊の徒から承認してもらわなきゃいけない。やるなら協力するよ」

「え?女装してくれるん!?」

「ノワールには世話になっているから必要があれば」

「ホイッスラー。それは危ないから避けた方がいい」

「ええ?全然メイクとか協力するよ☆」

 カバンからコスメを取り出すビアンカ。

「追加のアピール動画は女装したままでとろう」

「それいいね!あえて邪道まで手を染めて圧倒的に予選を抜けよう!」

「学園でまた襲われるぞ……」

 今度はアーロンが頭を抱えた。

「ホイッスラー、あんたも女装したかったんだな。すまない。気が付かないで」

 ノワールは心からの笑みをみせた。

「逆に興味沸いてきたよね」

「ところで本選はどういう戦略でいくの?自分で恋人を作りまくるか、ペアを作りまくるか」

「正直ジョアンナが嫌なら恋人はほかにつくれない」

「いや、あいつはそんなこだわりをもつだろうか」

 ノワールの言葉にホイッスラーがかみついた。

「ジョアンナのことをあいつっていうんじゃない」

 ホイッスラーがノワールにのしかかる。


 ホイッスラーの部屋では女装のための小道具が揃えられていた。


 一方で、他の参加者たちは苛烈な1票の奪い合いに勤しんでいた。300人のなかで上位10%に食い込むために、多くの試行錯誤が行われた。そして、ついに期日の前日を迎えた。

[セークエンスイケメンコンテスト]

本選

選考期間は予選集計終了後の翌日から学園祭二日目まで

出場する30人に学園生の名簿が配布される。

出場者は与えられた名簿の学生たちの多くを幸せにすることが求められる。

学園祭中にカップルが成立すると所属する両グループの本選出場者に1票。

本選出場者当人に恋人ができると1票。

新成立したカップルは大羊の徒HPに申請することで受理される。

また、既に存在する学園内カップルから協賛ポイントを得ることができる。

協賛ポイントは1カップルから1ポイント得られ、10ポイントで1票分となる。

学園祭2日目の17時時点で集計が終了し、上位4名が最終日の決勝に進出できる。

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