第一印象
真冬にコールドシャワーを浴びる人間、愚かです。
形状記憶合金が劣化したサーモスタットユニットもこれまた、罪です。
なぜなら、頭皮の毛穴が縮小して皮脂が流れにくい。これは良くない。
温度差による目覚めるような快感も、所詮は一過性のシグナルです。
それでも事象をありのままに受け入れ、前を向こうと思います。。。・
そう、過去の厄を洗い流したと思いましょう。
厄を落として飲みこんで、上昇気流の列車に乗りましょう。
加速する世界を俯瞰で眺めると金太郎飴のような風景にも多様性が隠されています。
針葉樹林と広葉樹林が交差する植生界。
いつのまにか伸びたタケノコも折れていたりします。まるで人間の繁栄と衰退のようです。
我々は日々進化する世界に生きる雨後の筍。そして、未来の絶滅危惧種でもあると考えます。
エロは絶滅を避ける最強のエンジンですが、同時に最恐の淘汰動力源といえます。
多くの人間がエロに悩み、掬われるのは宿命といえます。
有性生殖という言語に縛られた存在の末路、あるいは進化の途中にある存在として普遍的な事象です。
そういえば、ありふれた事象はセックスのほかにもあります。
そう、マスターベーションです。
マスターベーション、通称オナニーは性衝動を制御する強力なツールであります。
こんな有性時代にて最高、頂点を志す男の物語はすでに始まっています。
さて、我らが主人公は最高の人生を送れるのでしょうか?
さあ、其の利き手で未来を掴み取れ!
みせてみろ、秀抜の美女をものにする男の本当の姿を!!
エルフィアは性生活満足度の高さから世界最高の国として賞賛を受けていた。エルフィア国民も性欲が強いと見做されていて、淡白である人の肩身は狭いという。そして、童貞は恥だという思想も強かったため、モテるかモテないかの風評が、個人での性生活満足度の格差を大きく左右する状態にあった。
そんな国のなかでも、セークエンス学園は学歴をたしなむ者ならば、誰もが知るであろう紀元前からの名門校であった。当然、最もモテる学校ランキングは不動の首位を誇る。モテるという評価によって益々人気を高めたセークエンスには魅力と実力のある者が入学を志すようになった。
数多くの俳優や実業家、政治家、活動家を輩出したセークエンスには多額の寄付金が集まっているため、近年は広大な敷地内に誇る建物が建築マニアが涙するほど、綺麗な建築物へ改築された。そのため、倍率は理不尽なほどに上がってしまい、この時期に入学できた生徒は宝石の世代といわれている。
そんな学園内の昼休みの時間。
学食には数多くの生徒たちが集まっていた。1万人の生徒が集う学食は実に広大で、3層に分かれている。それぞれ、学年ごとに分けられているのだが、2階の学食は異様な様相だ。学年を問わず、数多くの女子生徒が集っていたのである。より正確にいうならば、ひとりの男子生徒を取り囲むように押し寄せているのである。
押し寄せる人の嵐は、昼食をたしなみながらゆっくり会談をするような雰囲気とは程遠く、女子たちは色めきあうなかで、頭髪をセットしなおしたり、化粧ノリを手鏡で確認したり、熱い視線を送るものばかりであった。
嵐の目に鎮座する男子は、驚くべきことに誰もいないかのように脱力して、食事を堪能していた。どうみても穏やかな場とは思えない。しかし、その男は目の前に広がる花畑には目もくれず、休日の予定を考えているようである。
ゆっくりと構えたさまは余裕そのもので、楽に伸ばした長い手足は一見華奢にみえるが、ほどよく付けられた筋肉が流麗な膨らみを描いていた。1年経っても汚れひとつない制服のブレザーは品格と知性を際立たながら、開けられたシャツのボタンから除く鎖骨や喉骨、素肌の白さが危うさと色気を演出する。自然ながら整えられた髪は男性らしく太めで、艶のある暗めの茶褐色が男でも見惚れそうなくらい美しい。何等かを抱えて居そうな繊細さをはらんだ雰囲気が彫刻のように通った目鼻立ちに魔法をかけていた。伸びた前髪から揺れる長いまつげは切れ長で主張のある目を彩っている。全体的に自信と色気が滲み出る姿であった。
周囲からの要望や声掛けにも、適切で端的に返答する。半分自動で行っているのではないかというくらいに淡々としていた。そんな応答にも喜ぶ周囲はどこで引き返せるのだろうか?姦しく咲いた花の鱗粉は修行僧が浴びようものなら卒倒してしまうだろう。この一連の騒ぎはもはや恒例と化していた。
そんな花盛りの場にひとりの女子生徒が入ってきた。はじめに扉を開けた時の音圧の変化に面食らった少女は思わず、口を開けた。
「うわあ、ホイッスラーくんがいる。すごい時間にきてしまったわ。」
このジョアンナという生徒は自習を軽くしてから食堂へいくのが日課だった。たまたま、直行で来たのが判断を誤ったことに気が付く。仕方なく、壁を縫うように歩き、水を取りに行く。
たまたま彼をみていると目が合った。いや、それは自意識過剰というものだろう。同学年は3000人もいるから、おそらく顔も名前も知らないはず。
水を入れていると騒ぎが強くなっていることに気が付いた。疑問に思い、周りを伺うために顔を右に向ける。
「こんにちは」空のコップをもった彼がいた。
やや時間をおいてこんにちは、と返す。こんなことで動揺する自分が情けない。だからモテないのだろう。悲しくなってきた。はやく場所を譲らないとダメだ。
「す、すいません。待ってますよね」ほかにも給水場はあるのに、よりによってここに来るなんて!
「気にしなくていいよ。ジョアンナさんだよね。ここにいるの珍しい」
笑顔が眩い。
「知っているんですか?」衝撃が落ちる。
「自習室、たまに使うんだよね。そこの常連なのは知っていたよ」
なぜ気がつかなかったのか、愚鈍な己が恐ろしい。
「ひ、へえ。ありがとうございます……あ、それでは」
周りの目は針の筵である。そのことに遅くも気が付いた。すかさず立ち去ることにする。今日はコンビニでパンとサラダでも買おう。
「少し待って、これ落としたよ。」
ハンカチを受け取るときに、白魚のような指が触れる。指先と頬に熱が集まりだした。
「ハ、ハイ。ありがとうございます」
駆け足で食堂から抜ける。手汗を拭こうとハンカチを広げるとカラりと小さな紙が落ちる。紙切れなんて入れていただろうか?それを広げたわたしは再び落雷の餌食となる。
[ ジョアンナさん
お時間が合うのなら、放課後に北門近くのカフェで逢いませんか。
待っているので、ぜひ来てください。
ホイッスラーより ]
穴が開くほどに書面を見つめていると、扉から彼が出てくる。女子生徒の洪水に飲まれるまでの数秒であったが、目線を交わした。その瞳は自信とやさしさで輝いていた。
この表題がいけないなら、アリオナ最強伝説になってしまう。まるでアリアナ州を讃えるお話のようだ。
もっと良いタイトルがあったのでは?という話は夢幻にでも閉まっておきましょう。
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