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第59話 第八部隊北西ノルデン戦線

 第八部隊は、中央戦線へ向かって一斉に駆け出した。


 走り出す前に、レオンが短く告げる。


「最初から、強めに増強を入れます」


 詠唱は簡潔だった。

 魔力が広がり、全員の身体に一斉に絡みつく。


 訓練で何度も体験してきた感覚。

 重さが抜ける。

 地面が近くなる。


 脚が前へ出る速度が、明らかに違った。


「速い……!」


 誰かが息を漏らす。

 だが、口に出す余裕があるのは最初だけだった。


 隊列は崩れない。

 加速したまま、地形を読み、最短距離を取る。


 あっという間に、最前線が見えた。


 同時に、レオンの声が飛ぶ。


「治癒、全員に常時回します」


 次の瞬間、魔力の流れが切り替わる。

 増強に重なるように、治癒が重なる。


 小さな擦過傷。

 筋肉の疲労。

 呼吸の乱れ。


 すべてが、即座に戻されていく。


 英雄級の動きをする二十人が、

 回復し続ける状態で投入される。


 あり得ない状況だった。


 セレナが剣を構える。


「止まるな!」


 中央戦線の敵兵が、ようやくこちらに気づく。

 盾を構え、陣を固める。


 その瞬間。


「――増強、もう一段階、上げます」


 レオンが判断を飛ばす。


 魔力の圧が、さらに増した。

 世界が一段、遅くなる。


「当たる前に、崩します」


 短い宣言。


 ぶつかる、その直前。


「弱体、展開」


 見えない波が、敵陣を叩く。


 剣が落ちる音が、同時に鳴った。

 足が崩れ、膝が折れる。

 立っていられない。


「な――」


 声にならない悲鳴。


 第八部隊は、もう知っている。


 この状態の相手が、

 どれほど無力になるかを。


 一切の躊躇はなかった。


 剣が振られる。

 叩き落とす。

 切り払う。

 制圧する。


 抵抗は、成立しない。


 傷を負っても、すぐに塞がる。

 疲労しても、瞬時に回復する。


 回復し続ける英雄二十人が、

 立てなくなった敵を切り刻んでいく。


 戦線は、止まらない。


 前へ。

 さらに前へ。


「右、厚い!」


「了解、左を削ります」


 レオンの声が、正確に飛ぶ。


「次、弱体を重ねます」

「抵抗が来る前に押し切って」


 判断は一瞬。

 詠唱も一瞬。


 敵の次の動きが来る前に、

 その芽を潰す。


 セレナは前に立つ。


 剣を振るう。

 ためらいはない。

 迷いもない。


「続け!」


 第八部隊は、まるで一つの生き物のようだった。


 前衛が切り開き、

 中衛が抑え、

 後方からレオンの魔法が切れ目なく流れ込む。


 戦線が、異常な速度で前進していく。


 周囲の味方兵たちは、ただ立ち尽くしていた。


 理解が追いつかない。


 中央が、

 押されるのではなく、

 消えていく。


「あれが……第八部隊……」


 誰かが呟く。


 敵兵は逃げようとする。

 だが、逃げ切れない。


「前に出すぎている個体、弱体強めます」


「了解!」


 レオンの判断が、さらに飛ぶ。


「今です」

「一気に押し込んで」


 セレナが剣を振り下ろす。


「制圧!」


 最後の抵抗が、崩れた。


 中央戦線は、完全に抜かれた。


 第八部隊は、止まらない。

 呼吸も乱れていない。


 異常な光景だった。


 だが、それは幻ではない。


 訓練の積み重ね。

 判断の速さ。

 そして、二人の英雄が揃っている現実。


 中央は、制圧された。


 戦線は、完全に動き出していた。

※あとがき

ここまで読んでくださってありがとうございます。

もし何か残るものがあれば、★★★★★で執筆の励みになります。

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