タイトル未定2025/11/16 20:29
無事に報告書を作り終え、職場の戸締りをしてから、桐野と一緒に会社を出た。
人通りが絶えない明るい街中を、桐野と肩を並べて歩いた。
「疲れたね」
笑顔で言う桐野に、俺は言った。
「腹減っていませんか?そこの牛丼屋に入りませんか?」
俺の提案に桐野は賛成し、俺と桐野は牛丼屋に行った。
夜遅い時間だと言うのに、牛丼屋はけっこう客が入っていた。
俺と桐野は、カウンター席に座った。
並の牛丼をオーダーした桐野に対して、俺は大盛りの牛丼のセットをオーダーした。
「石田君って、よく食べるの?」
「……はい」
俺は、照れながら頷いた。
「ひょろひょろしているのに意外だわ」
黙ったまま聞いていた俺は、ふと桐野に言った。
「桐野さん。ビール飲みませんか?」
「そうね……飲んじゃおっか!」
職場にいる時の桐野とは打って変わり、桐野は無邪気に言った。
初めて見るあどけない桐野に、俺は釘づけになっていた。
「すみません、ビールください」
桐野は側にいた店員に言った。
やがてビールが運ばれ、俺と桐野は乾杯をした。
ビールを半分程飲んだ桐野は、声をあげた。
「あぁ、美味しい!」
「桐野さん、美味しそうに飲みますね」
「疲れた後のビールって、最高じゃん」
「仕事終わりに、よく飲むんですか?」
「普段は、飲まないわよ。週末に飲むくらいかな」
「自分、お疲れ〜って感じで?」
「そうそう、自分お疲れ〜」
言いながら、桐野はグラスを上げてビールを飲み干した。
そんな桐野を、俺はほほ笑ましくみつめていた。
牛丼屋を出て地下鉄の電車に乗り、桐野と並んで座った。
「さすがに、お腹がいっぱいになったでしょ?」
笑顔で言う桐野に俺は言った。
「うん。でも、デザートにアイスくらいなら食べれるよ」
俺の言葉に、桐野は吹きだした。
「桐野さんって、ひとり暮らしなんですよね?」
「ええ。親がうるさくて、家を出ちゃった」
「親、うるさいの?」
「う~ん……ちょっと、父親がね」
「お父さんが……」
俺はぽつりとつぶやいた。
俺の声が、桐野には届かなかったようだ。
桐野は、自分の父親のことを話しだした。
「父親って、娘が年頃になると何かと干渉したがるでしょ。彼氏がいないと、まだいないのか。いればいたで、どんな人なのかとか。それが嫌で家を出たの」
俺は黙り込んだまま、桐野の言葉を聞いていた。
やがて俺が降りる場所に着き、俺と桐野はそこで別れた。




