タイトル未定2025/11/16 20:24
午後はプレハブの中で、経営者たちと会議をした。
会議の内容はどんな感じの健康ランドにするか、どんな浴槽を入れるか。
また、客室を入れるのでそこにはどんな浴槽を入れるか、健康ランド側の要望を聞いていた。
休憩時間を挟んで、終わったのは午後四時を廻っていた。
運転席に座った俺は、思い切り伸びをした。
「あ~あ……これから、何回此処に来るのかな」
「そうね。その前に、工場まわりもしないとね」
俺は車のエンジンをかけ、スタートさせた。
車を走らせていると、道の駅が見えてきた。
車を駐車場に止めた俺は、道の駅の売店に行った。
桐野は、トイレへ向かった。
売店に入ると、客はほんの数人しかいなかった。
売店には特産品や、土産物などが売られていた。
俺は菓子パン三つと缶コーヒーを買い、売店から出て行った。
車に戻り、さっそく菓子パンを食べだす。
桐野がトイレから戻ってきた頃には、三つめの菓子パンを半分ほど食べていた。
助手席に座った桐野は呆れて見ていたが、俺はかまわずパンを食べ続けた。
「お弁当を作っちゃって、桃子って可愛いとこあるね」
「そうですね」
パンを食べ終え残りの缶コーヒーを飲み干し、息をついてから言った。
「ふ~これで、普通の空腹状態になった」
俺の言葉に、桐野は爆笑をした。
会社に着いた時は、午後八時を回っていた。
桐野は、誰もいない職場を見渡しながら言った。
「誰か残っているかと思ったのに、見事に誰もいないわね」
「桐野さん、報告書作りますか?」
「明日にしようと思ったけど、やりますか」
「ですね」
薄暗い職場の中で、パソコンのキーを打つ音だけが異様に響いた。いつもと同じ職場なのに、その光景は昼間の職場とは全然違う雰囲気だ。
突然、桐野が切り出した。
「明日は、工場見学よ。九時出発ね」
「はい、九時ですね。あ、もう先方には?」
「大丈夫。主任が電話したわ」
「そうなんだ。檜風呂の件、残念でしたね」
「そうね。永田、がっかりするわね」
健康ランドの経営者の要望で、檜は腐敗が激しいからと、断られたのだ。
温泉じゃないぶん、清潔をモットーにしたいとのことだった。
そのおかげで檜風呂を作っている工場に行かなくても済んだから、内心俺はほっとしていた。
ふと顔を上げると、俺の目の前の席でパソコンのキーを叩いている桐野がいた。
パソコンの明かりが、桐野を照らす。
薄暗い職場で、桐野とふたりきり。
こんなことは入社以来初めてだ。
俺はいつのまにか、桐野を意識していた。




