タイトル未定2025/11/16 20:13
主任が座る机の前で、俺は桐野の言葉を聞いていた。
「健康ランドで、うちの製品の浴槽を取り扱ってくれるかもしれないと、営業部が言っていたわ」
「主任、本当ですか?」
「まだ本決まりじゃないけど、この話がまとまれば企画部の仕事になる。桐野君」
「はい」
「我が社の浴槽を取り扱うことに正式に決まったら、石田君とやってくれないか?」
「わかりました」
昼休み、俺は永田と二人でハンバーガーを食べていた。
主任から聞いた健康ランドのことを、俺は永田に教えた。
永田は、興奮気味に声を上げた。
「わ~それが実現したら、企画部の大きな仕事になりますね!」
「そうだな」
「いいなぁ……桐野さんと仕事が出来て」
「何、言ってんだ」
「どんな浴槽を、入れるんすか?」
「本決まりじゃないから、まだそこまで決まっていないよ」
「そっか~どんな浴槽にするか決める時、俺にも声かけてくださいね!」
「もちろん、期待しているよ」
ハンバーガーを食べ終えた俺と永田は会社に戻った。
ロビーにに入ると、受付には友田一人きりだった。永田が友田に声をかける。
「桃子ちゃんひとり?」
「はい」
「もう、昼飯は済んだ?」
「ええ」
受け付けを空には出来ないので、杉尾と交代で昼休みを取っているのだ。
「そっか。俺も、昼飯食べた。ハンバーガー食べたよ~ん。そうそう。桐野さんと石田さん、大きな仕事を任せられたよ」
「大きな仕事?」
「健康ランドに、我が社の浴槽が使われるんだ」
「そうなんですか?」
友田は俺に聞いてきて、俺は慌てて答えた。
「まだ、本決まりじゃないんだ。流れるかもしれないし」
「本決まりになると良いですね」
「ありがとう。照、行くか」
俺は永田をうながし、受付の前を離れた。
職場に戻ると、俺は主任に呼ばれた。
「健康ランドの件だけど、うちの会社に決まったよ」
「本当ですか!」
「ああ。桐野君が、我が社の工場の資料を探しに資料室に行ってるから、石田君も行ってくれ」
「わかりました」
側で聞いていた永田が喜んだ。
「やりましたね!石田さん」
「うん。これから忙しくなるな」
そう言い残し、俺は資料室に向かった。
「失礼します」
資料室に入った俺は、先に来ていた桐野の側に行った。
桐野は、工場の資料をテーブルの上に並べていた。
俺は、テーブルの上の資料を見ながら言った。
「この会社の工場って、いろんな浴槽作っているんですね」
「そうね。これだけあると迷うわ」
「健康ランドでしたよね。ジャグジーバスに、サウナ……ありきたりだけど、こんな感じかな」
「サウナって言えば、ミストサウナも良いわよね」
「ミスト……なるほど。炭風呂なんかも」
「そうね」
「健康ランドって、どれ位の規模なんでしょうか?」
「見取り図が届かないと、わからないわね」
「そうですね。その健康ランドって、何処にあるんですか?」
「えっと……」
桐野はテーブルの上に置いてあった手帳を掴むと、手帳のページをパラパラめくりだした。
その間、俺はテーブルの上の資料を見続けた。そこには、浴槽の写真がずらりと並んでいる。
工場の方にも行かなくてはならない。
工場は遠い場所にある。
営業が多い仕事になりそうだ。
「ずいぶん遠い所にあるのね……石田君、聞いている?」
「えっ?」
桐野の声で、俺は我に返った。
「えっと……その……なんだっけ?」
「健康ランドの場所、何処かって聞いたの石田君でしょ」
健康ランドの場所……そうだった!
「すみません。何処かわかりましたか?」
桐野は、手帳を見ながら健康ランドの場所を言った。
「……遠い所ですね。行ったら、丸一日かかりますね」
「そうね……オープンに間に合わせなくちゃいけないし。ハードな仕事になりそうね」
ため息をつく俺に、桐野が渇を入れた。
「ほらほら!何、情けない顔をしているの。まだ、始まったばかりでしょ!」




