表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/36

タイトル未定2025/11/17 22:17

 仕事の方は順調に進んでいた。

 健康ランドでは、オープンに向け作業が進んでいた。

 いよいよ完成間近となり、俺と桐野は健康ランドの視察に出かけた。

 俺と桐野は同じ部所だったが、それまで、俺は白鳥と行動を共にすることが多かった。

 健康ランドの仕事をきっかけに、桐野と一緒に過ごす時間が多くなっていた。

 初めて桐野と健康ランドに行った時のことを思い出し、助手席に乗っている間、少し感傷的になっていた。


 健康ランドに着くと、建物がすっかり出来上がっていた。

 俺と桐野は思わず立ち止まって、しばらくの間建物を見上げていた。

「おはようございます」

 健康ランドの経営者の声で、俺と桐野は我に返った。

 経営者と一緒にできたての建物の中に入って行った。

 まず最初に、浴室に案内された。

 浴室は想像以上の広さだった。

 永田が発案したプールの浴槽はとても広く、発案者の永田にも見せてあげたかった。

 浴室からは海が見え、開放的な気分に浸ることができる。

 俺たちが遅くまで企画した、炭風呂やミストサウナや寝ながら入ることができる浴槽が配置されていて、今までの苦労が報われた瞬間だった。

 浴室を出た後、客室に案内された。

 客室は、洋室と和室の二種類の部屋が用意されていて、客室からも海が見えた。

 客室では浴槽とトイレと洗面台をチェックした。

 浴槽と洗面台はアイボリーで統一され、穏やかな感じで仕上がっていた。

 最後に、屋上にあるレストランに案内された。

 レストランは、俺たちの業務とは何も関係がないが、せっかく経営者が案内してくれたので、レストランの中を覗いた。

 大きな窓から海が見渡される。

 俺と桐野は、しばらく海に見入っていた。

 何処までも続く水平線に、思わず俺は声を出していた。

「……海、見たかったなぁ」

「今、見ているじゃない」

 桐野は笑い、つられて俺も笑った。

「桐野さん」

「ん?」

「落ち着いたら、祝賀会をやりませんか?」

「祝賀会……そうね。やっとこの仕事も終わるものね。何処でやる?」

「俺、行きたい店があるんですよ」

「へ~何処のお店?」

「一度行ったきりだったから、わかるかな?ちゃんと調べておきます」

「楽しみにしてるわ」


 視察を終え昼食を終えた後、健康ランドの経営者たちと会議をして、最後の仕事を無事に終えた。


 帰りの運転中、道の駅に立ち寄る。

 トイレを済ませてから、売店に入った。

 店内をうろついていると、桐野はストラップをじっと眺めていた。

「ストラップ、買うの?」

「う~んどうしようかな」

 俺は、桐野が手にしていたストラップを横から掴んだ。

「石田君?」

 俺は無言のまま、再び店内を歩き回った。

 運転席に先に乗り込んだ俺は、売店で買ったストラップを眺めていた。

 少し遅れて桐野がやってきて、助手席に座った。

「桐野さん、むき出しのままですみません」

 俺は桐野の手を掴み、売店で買ったストラップを、桐野の手の上にそっと置いた。

 桐野は、ポカンとしていた。

「仕事お疲れ様。それから、いろいろありがとうございます。ほんの気持ちです」

「そう言うことだったのね。ありがとう!」

「祝賀会をやるんだから、その時に渡せばよかった!ストラップじゃなくて、もっとちゃんとした物を贈れば良かった!ホント俺は、気が利かないなぁ」

「ちゃんとした物って?」

「えっ?」

 俺は必死に考えたが、何も思い当たらない。

「このストラップ可愛いなぁって、思っていたの。嬉しいわ」

 桐野は、嬉しそうに手の中のストラップを眺めていた。



 会社に戻る途中、ガソリンを入れる為にスタンドに寄った。 

 ガソリンタンクに車を横付けに止め、スタンドの店員に会社名義のカードを渡す。

 少し離れた場所で車を誘導している店員を、俺はぼんやりながめていた。

 ……誰かに似ている……。

 そんな気がした。

「知っている人?」

 桐野が、聞いてきた。

「いや……」

 その店員と、目があった。

 ……やっぱりそうだ!……。

 店員も、俺のことに気がついたようだ。


 俺はあれ以来、完全に心を閉ざしていた。 

 俺は今まで、現実から逃げ出していた。

 現実逃避……。

 彼と会えば、現実と向き合うことになる。

 正直、彼と会うのが怖い。

 でも、今は会いたい。

 会いたくて、仕方がなかった。


「お待たせしました!」

 その声に俺は、我に返った。

 会いたいと思った彼は、新たに来た車の対応に追われていた。

 給油が終わり、俺はゆっくりアクセルを踏んだ。

 ハンドルを握りながら、俺は強く思っていた。

 ……明日の夜、会いに行こう!……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ