タイトル未定2025/11/16 19:48
居酒屋を出ると、外は真っ暗だった。
「よ~し、このまま、二次会に行くぞ!」
白鳥が、声を張り上げた。
「次、カラオケ行きましょう!」
永田が、嬉しそうに言う。
「……あの」
友田の声に、皆振り向いた。
「私、そろそろ帰らないと。門限があるから」
「え~まだ、九時だよ!いいじゃん、少しくらい!」
永田が、友田の顔を覗き込みながら言った。
これ幸いとばかり、俺も言った。
「俺も帰るよ!お疲れ!」
皆から、離れようとした時だった。
「じゃあ、桃子を頼むわ」
「へっ?」
桐野に背中を押されながら、友田の隣に行く。
「じゃ、俺も!」
永田も友田のところへ行こうとしたが、松本に捕まえられていた。
「あんたは、こっち!」
永田の腕をつかみながら、松本は俺と友田に言った。
「じゃあ、また明日ね!ほら、何処のカラオケの店に行くのよ?」
後の言葉は、つかまえていた永田に言っていた。
永田と松本が歩き出すと、桐野が言った。
「石田君、桃子をお願いね」
桐野は、白鳥と歩き出した。
……なんなんだ、いったい……。
小さくなっていく、永田と松本と白鳥と桐野をみつめ、残された俺はため息をついた。
隣を見ると、友田がうつむいている。
そんな友田に、俺は声をかけた。
「……行こうか」
「えっ?」
「帰るんでしょ」
俺が歩きだすと、友田は俺の後について歩いた。
カラオケボックスの中では、白鳥が熱唱していた。
永田の向かいに座っていた松本は、しかめっ面で永田に言った。
「永田……鈍すぎ」
「えっ、なんで?」
ぽかんとしている永田に、松本の隣に座っていた桐野が言った。
「わからないの?桃子、石田君に惚れているのよ」
「……えぇー」
永田は、両手を上げて驚いた。
「だから今夜、桃子に石田君を会わせたんじゃない」
永田は、肩を落として言った。
「そんなぁ~桃子ちゃん可愛いから狙っていたのに。石田さん相手じゃ、勝ち目ないっすよ」
がっかりしている永田を、桐野と松本は笑ったのだった。
俺の家は街中の裏通りにあり、出歩くには便利な場所だ。
そのせいで、今まで車の免許など持っていなかった。
しかし、仕事上営業で車を運転することがあるので、社会人になったのを機に車の免許を取った。
道も覚え、車の運転にもだいぶ慣れた。
家族は、両親、兄、俺の四人家族だが、父親は長期単身赴任で留守をしている。
三歳年上の兄の明彦はすでに結婚していて、一人娘の真理乃がいる。
兄嫁の道子 (みちこ)は、現在二人目を身ごもっていた。
兄の仕事は父親同様出張が多いので、結婚と同時に家を出て親子三人で暮らしている。
そんなことから、俺は母親と二人で暮らしていた。
家に着いた俺は、風呂に入って自分の部屋に行った。
六畳の部屋だが、ベッドやタンスなどが置いてあるから狭い部屋だ。
明日の支度をして、部屋の片隅をながめる。
部屋の片隅……。
この場所を眺め、独り言を言うのが俺の日課となっていた。
今夜も部屋の片隅を眺めながら、独り静かに語る。
「ただいま……遅くなってごめんな」
俺は、いつしか笑顔になっていた……。




