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タイトル未定2025/11/17 21:48

 翌日早朝から桐野と健康ランドに向かい、健康ランドには予定の時間十分前に着いた。

 健康ランドの建物の外壁は、だいぶ出来上がっていたが、建物の中はまだがらんとした空洞だった。

 俺と桐野はヘルメットをかぶって、建物の中に入って行った。

 関係者の人たちの前で見取り図を広げ、実際どんな浴槽を何処に置くのか、桐野が説明を始めた。


 昼前に、健康ランドの仕事が終わった。

 外は日差しが強い。

 まだ梅雨入りはしていないが、梅雨入りして梅雨が開ければ本格的な夏が来るだろう。

 行きは俺が運転したので、帰りは桐野が運転をする。

 昼飯を買う為、前に利用した道の駅まで車を走らせた。

 道の駅に着き、菓子パンを買って車の中で食べた。

 腹がいっぱいになった俺は、あくびを連発した。

「疲れた?」

「肩の荷が降りた感じです」

「初めての大きな仕事だからね。疲れたなら、寝ても良いからね」

「桐野さんに運転を任せて、寝るわけにはいきませんよ」

 とは言ったものの、黙っていると本当に眠ってしまいそうだったので、桐野が運転をしている間俺は多弁になっていた。

 白鳥とした結婚の話を思い出し、何気なく聞いた。

「桐野さん、彼氏はいるんですか?」

「石田君が、そんなことを聞くなんて」

「彼氏いるよな。男友達だって、何人もいるんだろうな。聞くだけ無駄か!」

「弘美と一緒にしないでよ。彼氏なんて、いないわよ」

「まぁた、また!」

「本当よ。仕事が恋人。なんてね」

 ……仕事が恋人。なるほどね 。完全無欠の桐野さんに、釣り合う異性なんてそうそういないだろう……。

「松本さんって、彼氏がいるんですか?」

「男友達が多いわね。寂しがりやって、言うのもあるけど」

「あんなに、明るいのに」

 話は盛り上がり、眠気はいつしか消えていた。


 職場に戻った俺と桐野は、主任の席の前に立って、今日の報告をする。

「ちゃんとした報告書は、明日作ります」

 桐野が主任に言った。

「わかった。二人ともご苦労さん」

 桐野と軽く頭を下げ、自分の席に戻ろうとすると、永田がねぎらいの言葉をかけてきた。

「桐野さん、石田さん、お疲れ様!」

「お疲れ」

 俺と桐野は、永田のねぎらいの言葉に答えた。永田は、桐野に聞いてきた。

「仕事の方はどうですか?」

「順調よ。やっと、一区切りついたってとこかな」

「そうそう照、お前が考えたプール。あれ、好評だったぞ」

 俺の言葉に、永田は喜んだ。

「本当ですか!やったぁ~」

「報告書にもちゃんと書いたから、発案者永田照信って」

「石田さん、ありがとう~さぁて、残りの仕事やって帰ろう!」

 俺と桐野は帰る支度をして、主任に挨拶をしてから一緒に職場を出た。

 歩きながら、俺は桐野に昼休み廊下で松本に会ったことを話した。

「いきなり後ろから、襟首をつかまれたんですよ」

「弘美なら、やるわね」

「いや……違う。あれは、首を絞められたんだ。俺は、松本さんに殺されそうになったんだ」

 話を盛る俺に、桐野は爆笑した。

 つられて俺も、笑い出した。

 俺と桐野の笑い声がロビーに響き、受付の仕事をしている友田の存在に気が付かないまま、ロビーを通り抜けた。

 受付にいた友田は、目の前を歩いて行く俺と桐野をじっとみつめていた。

「桃子」

 隣にいた杉尾に呼ばれ、友田は我に返った。

「……はい」

「石田君桐野さんと、仲が良いわね。あんなに笑う石田君、久しぶりに見たわ」

「石田さんが、楽しそうに笑っているところを初めて見ました」

「いつも、ぼんやりしているからね」

 友田は気持ちを切り替えるようにボールペンを握ったが、必要以上に力強く握りしめていた。


 桐野と別れた俺は、そのまま家に帰った。

 家に着くと、母親が晩御飯を作っていた。

 俺は部屋でスーツからティーシャツとジーパンに着替え、部屋を出た。

 台所では母親が、作ったおかずをテーブルの上に置いていた。

 俺はお茶碗にご飯を大盛りによそい、お箸を持ってテーブルについた。

 母親はテーブルをはさんで俺の向かいに座り、お茶飲みながら、黙ったままご飯を食べる俺を見ていた。

 二杯目のご飯をよそう俺に、母親が呆れて言った。

「ホント、よく食べるわね」

「母さんの息子だからね」

「失礼ね!」

 箸を止めずに食べ続けている俺に、母親は言った。

「何か、いいことでもあった?」

「いいこと?まぁ、仕事が順調に進んでいるからかな」

「それだけじゃないでしょ。帰って来たときから、珍しく浮かれているわよ」

「そう?ねぇ、このおかず全部食べちゃても良い?」

「良いわよ。食べたらちゃんと洗ってね」

言いながら母親は、テーブル席を立った。

 俺は、残っていたおかずを皿に盛った。


 風呂から出た俺は、自分の部屋に戻った。

 浮ついていた俺が、平常心を取り戻したのは、部屋の片隅を見つめた時だった。

「忘れていて、ごめん。ホントごめんな」


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