タイトル未定2025/11/17 21:40
職場で俺は、電話の受話器を元に戻した。
顔をあげ、桐野の方を見た。
桐野も同じように、電話の受話器を元に戻していた。
俺は、桐野の席に行った。
「桐野さん。明日健康ランドへ、前と同じ時間に行くことになりました。実際に入れる浴槽の候補と配置を、向こうに言います」
「了解。工場の方は、急ピッチで作ってくれるって」
「オープンは、十月かぁ……まだ間はあるけど、実際あっと言う間に十月なんて来るもんな」
「そうね。じゃ、明日は前と同じ七時集合ね」
「はい」
昼休み、廊下を歩いていると桐野の友人で、総務部の松本弘美と会った。
「よっ、久しぶり。居酒屋以来だね」
「こんにちは、松本さん」
「大きなプロジェクト任されて、忙しそうね」
「ええ……まぁ」
歩きかけた時、突然背後から松本に衿首を掴まれた。
「うっ!」
首を絞められたような感じになって、俺はうめいた。
……なんなんだよ?……。
手を離した松本は、背後から素早く俺の目前に回ってきた。
「桃子と、良い関係になった?」
「なんのことですか?」
「恥ずかしがんなくてもいいよ」
松本の言葉に、俺はため息をついた。
「どうしたの?何か悩みでもあるの?お姉さんが、なぐさめてあげよっか?」
俺はすねた子供のように、横目で松本をにらんだ。
職場に戻り、自分の席に着く。
松本に、襟首を掴まれた首がまだ痛む。
痛みをこらえながら、パソコンのスリープを解除した。
「いっしださん!」
背後から、永田が腕を回してくる。
「わあぁ!」
俺は、思わず大きな声をあげてしまった。
「あのな……」
「なんすか?」
「なんでお前はいつも、いつも、いつも俺の背後から脅かすんだ!」
永田は、きょとんとした顔をしている。
「聞いてる?」
すると、視界が真っ暗になった。
「わあぁっ!」
「だ~れだぁ!」
背後で、誰かが目隠しをした。
俺は、目隠しをしていた手を振り払った。
「白鳥さん!」
「あったりぃ!」
「何するんですか!」
永田が大笑いをしている。
「照っ!笑いすぎだ!」
俺は永田の頭をたたいた。
「痛いなぁ……白鳥さん、石田さんなんか機嫌が悪いんすよ」
面白くないという顔をして、永田は自分の席に行った。
永田が居なくなると、俺の隣の席に白鳥が座り、俺に言った。
「石田のお兄さんの子供……」
「真理乃?」
「可愛かったなぁ。子供かぁ」
「もしかして、結婚相手がいるんですか?」
「おお、数え切れないほどな。子供はまだ欲しくないけど、真理乃ちゃんみたいな、可愛い子が生まれるなら考えるな」
「贅沢ですね」
「石田は本当に友田のことを、なんとも想っていないのか?」
「友田さんに限らないけど、女の人と付き合ったら、気を使って疲れそうだ。一人の方が、気が楽です」
「石田も意外と、わがままだな。俺達は、この先独身貴族だな」
「わがままは認めるけど、貴族ではないでしょ」
白鳥は笑いながら、パソコンに向かった。




