タイトル未定2025/11/17 21:32
翌日出社した俺はロビーを歩いていると、受付から友田と杉尾の声が聞こえた。
「おはようございます!」
「おはよう」
受付の前を通りかかると、友田が声をかけてきた。
「石田さん昨日は、ありがとうございました。あの……具合は、大丈夫ですか?」
「微熱があったから、すぐ寝たよ」
俺は咄嗟に、小さな嘘をついた。
「微熱……振り回して、すみませんでした」
「少し、疲れが出ただけだよ。大丈夫だよ」
そう言って俺は、受付を離れた。
俺が居なくなると、友田の隣に居た杉尾が聞いてきた。
「昨日、何かあったの?」
「石田さんと、映画を観に行ってきました」
「石田君と!誘われたの?」
「個人情報を扱っていた時、石田さんの携帯番号を知って、それで……」
「桃子が、そんなことを……信じられない!」
「本当はそんなこと、してはいけないんですよね」
「まぁね。でも、いいんじゃない。悪いことに、使ったわけじゃないし。で、どうだった」
「石田さんぼんやりしていて、あまり楽しそうじゃなかった。途中で、具合が悪くなったし」
「石田君が、ぼんやりしているのはいつものことでしょ」
友田はそっと携帯を出し、ラインを開いた。友田が送った文章に、既読の文字は付いていなかった。
「ライン?石田君?」
杉尾の言葉に、我に返った友田は顔を上げた。
「石田さんとラインを交換して、ラインを送ったけど未読のままです」
「石田君、具合が悪くなったんでしょ。ラインに気付いていないだけじゃないの?」
「そうかな?」
「ねっ、なんで石田君を好きになったの?」
「なんでって……」
受付配属……友田桃子は、初めての受付の仕事に緊張をしていた。
……やだな。ただでさえ、人前は苦手なのに……。
そんな友田を先輩の杉尾由貴は励ましていたが、それでも苦手なものは苦手だし、受付の仕事は苦痛だった。
そんなある日。その日も友田はぎこちない笑顔で、社員たちに挨拶をしていた。
「おはようございます……」
「おはよう」
背の高い男性社員が、やさしい笑顔で友田に挨拶をした。
……こんな人いたんだ……。
後ろの方で、他の男性社員が走ってきた。
「おはようございます!石田さん!」
「照、おはよう」
二人は肩を並べて歩いて行った。
……後から来た子、確か私と同期で企画部の永田照信って子だわ。
じゃあ、あの人も企画部の社員かしら?企画部の石田さん……。
「それで、石田君を好きになったの?」
「うん」
「一緒に仕事をしていて、ちっとも気付かなかった!」
「あんなやさしい笑顔って、初めて見たわ。緊張も溶けて、いつの間にか石田さんばかり見ていたわ」
幸せそうな顔で話す友田に、杉尾は突然「トイレに行って来るね」と言って受付を離れた。
杉尾は誰も通らない場所に行き、携帯を出すとラインを開いた。
……ラインか。
石田君のラインなら、私の携帯にも入っているわ。
何度か、ラインの返事をもらったし。
友田に対し、杉尾は優越感に浸っていた。




