タイトル未定2025/11/16 20:41
ぼ~っとした頭で目覚まし時計を見た俺は、慌てて布団から飛び起きた。
急いで顔を洗って服を着る。
玄関に行こうとして、慌てて台所に引き返した。
空のお弁当箱を掴み、カバンの中に入れた。
玄関を飛び出し、会社まで走る。
いくらこの家が繁華街にあり、会社が近いとは言えこれは……大遅刻!
会社のロビーを走っていると、桐野の声が聞こえた。
「遅いよ、石田君!」
「すみません!」
桐野は、受付の所にいた。
受付嬢の杉尾由貴が笑いながら言った。
「寝坊?」
「まぁ……」
その時、誰かの視線を感じた。
杉尾と一緒に受付の仕事をしている友田の視線だった。
俺は弁当箱のことを思い出し、急いで空の弁当箱を友田に差し出した。
「お弁当ありがとう」
友田は空の弁当箱を、笑顔で受け取った。
「石田君、行くわよ!」
「はい!」
俺は慌てて、走り出そうとした。
そんな俺に、友田が声をかけてきた。
「あの!」
友田の声に、俺は振り向いた。
「何?」
「また、お弁当作ってきてもいいですか?」
「えっ?朝早くて、大変だろ」
俺がそう言うと、友田はうつむいた。
桐野は足早に歩いていた。
焦った俺は、早口で言った。
「じゃあ、今日夕飯一緒に食べようか」
「いいんですか?」
「うん」
そう言った俺は、慌てて桐野を追いかけた。
「いってらっしゃい!」
友田の声が、背中に聞こえた。
俺がロビーを出た後、隣にいた杉尾に友田は言った。
「……私、今夜食事に誘われたのよね……」
「そうよ、石田君に誘われたのよ」
会社の車はすでに、玄関前の路肩に停車していて、桐野は運転席に座っていた。
「すみません!」
急いで車に乗り、シートベルトをすると、桐野は車をスタートさせた。
「桃子を、食事に誘ったんだ」
「……聞こえていたんですか?」
「ロビーって、声が響くでしょ」
「そうですね」
「桃子今頃、歓喜の声をあげているわよ」
工場見学を終えた頃には、お昼が過ぎていた。
近くのファミスレスで、昼食をとって会社に帰る。
会社に着いた時は、すでに定時をまわっていた。
職場に戻ると、不機嫌な顔をした永田が出迎えてくれた。
「どうしたの?」
「だって……檜風呂、没になったって聞いたから」
「ああ、もう聞いたんだ」
「今日の朝、桐野さんから。そう言えば、石田さん朝いませんでしたね
「寝坊しちゃって、遅刻した」
「寝坊?遅くまで、起きてたんすか?」
「なかなか、眠れなくて」
「石田さんにも、眠れないってことがあるんですね」
「おい、どういう意味だ」
永田とそんな会話をした後、俺は報告書を作成して、出来上がった報告書を桐野に見せた。
「うん、良いんじゃない。お疲れ様」
桐野のオッケーが出たので、俺は作成した報告書を保存した。
「明日も、工場見学でしたね」
「明日は近いところよ。でも、寝坊はしないでね」
「……すみません。明日は、気をつけます」
しょぼくれて言う俺を、桐野は明るい声で笑った。
明るく笑う桐野を、俺はじっとみつめた。
「石田君どうしたの?桃子が待っているわよ」
「お先に失礼します。お疲れ様でした」
逃げるように職場を出て行った俺を、桐野は不思議そうにながめていた。




