タイトル未定2025/11/16 19:28
桜咲く季節、大手街中にある浴槽全般を取り扱ってる会社。
その会社に俺、石田和真 (いしだかずま)は勤務している。
企画部所属で、入社して今年で二年目を迎えていた。
仕事が終わり、帰り支度をしていた時だった。
「石田さん!」
背後から、永田照信 (ながたてるのぶ)が、声をかけてきた。
今年入ったばかりの新入社員で、俺によくなついてくる。俺は永田のことを照 (てる)と呼んでいた。
「今夜、飲み会やりますよ!」
「飲み会?」
「そっ。女子社員のお姉さまと一緒に!」
飲み会に行くのを、断ろうとした時だった……俺より一年上の先輩白鳥が、口を挟んで来た。
「そう言うことなら、俺も誘えよ」
「白鳥さん!もちろんOKです」
白鳥は誰にでも爽やかに振る舞い、女子社員に人気が高い。
白鳥のルックスなら、言い寄られてぽ~っとなる女子社員は少なくない。
そのせいなのか、社内でも有名な女好きだ。
「男は、俺と石田と永田の三人。女子は、誰が来るんだ?」
桐野 (きりの)さんと、松本 (まつもと)さんが来ます」
「そうか!楽しみだな」
永田と白鳥を交互に見ながら、飲み会を断ろうとしている俺に永田は言った。
「さ、石田さん。行きましょう!白鳥さん、場所はいつもの飲み屋です。お先!」
飲み会に行くのを断れなかった俺は、永田に引きずられるように歩いた。
廊下を歩いていると、同じ企画部で、俺より一年上の先輩桐野明美 (きりのあけみ)に会った。
長いストレートヘアにすらりと伸びた長い足は、まさに都会的な女性だ。
「永田。ちゃんと、石田君誘った?」
「はい!この通り」
「ありがとう」
「白鳥さんも、誘いましたよ」
「わかったわ」
「じゃ、先に行ってますね」
飲み会の場所は街中にある居酒屋で、若者たちでにぎわっていた。
店内に入ると、奥の座敷のテーブルに案内される。
前もって予約したのだろう。
靴を脱ぎ、俺は永田と並んで座った。
「今日の飲み会、誰が言い出したの?」
おしぼりで手をふきながら、俺は永田に聞いた。
「……ああ……桐野さん。突然、飲み会やろうって言われた。石田さんを必ず誘うようにって、きつく言われた」
おしぼりで顔をふきながら、永田は言った。
……おやじか、おまえは!……
「なんで俺をしつこく誘うんだ?」
「さぁ?まぁ、いいじゃないですか!綺麗なお姉さま方が来ることだし」
勝手なことばかり言っている!俺は飲み会なんて、行く気はなかった。ああ、早く帰りたい。
そんなことを考えていると白鳥がやって来て、俺と永田を見るなりがっかりしていた。
「なんだよ……やろ~二人だけか。まだ、女子は来ていないのか」
言いながら白鳥は、永田の隣に座った。
「すみませんね!」
永田はそう言うと、白鳥の背中に向って顔をしかめた。
「明美、待った?」
松本弘美 (まつもとひろみ)はそう言いながら、総務部の職場から出てきた。
「大丈夫よ」
桐野明美と松本弘美は、同期入社。
課こそ違うが、二人とも似たような感じで、共感しあうのか仲がいい。
桐野の隣には、今年の新入社員で、受付の仕事をしている友田桃子 (ともだももこ)が立っていた。
友田は桐野と松本の二人とは対照的に、小柄で少女のような女性だった。
「桃子、行くわよ!」
桐野が友田に声をかけたが、友田は動かない。
「やっぱり、私やめます!」
「なに、言ってんの!今夜の飲み会は、桃子の為にやるのよ」
「で、でも……」
「さ、いこいこ!」
松本は、友田の背中を押した。
「おまたせ~」
約束の時間を大幅に過ぎた頃、女性軍がやってきた。
「お~そ~い!」
白鳥が、口をとがらせる。
「ごめ~ん!桃子は、ここね」
松本は言いながら、テーブルを挟んだ永田の向に座り、友田を俺の向に座らせた。
「皆そろったね、注文しよう!」
永田が、はりきって言った。
注文した料理が来て、お酒も進む。
「受付の友田さん……?」
俺が永田を見て言うと、永田は呆れた顔をしていた。
「受付嬢の、友田桃子ちゃんですよ。石田さん、知らかったんですか?」
「ああ……うん……」
「やだなぁ!桃子ちゃん受付嬢ですよ。毎日顔合わせているんだから、桃子ちゃんのこと知っていると思いました!」
「照は、よく知っているな」
「だって、同期入社だもん……ねぇ~」
永田が友田の顔を見ながら言うと、友田はそっと微笑んだ。
「ほら、桃子。石田君の趣味とか、聞きなさいよ」
友田の隣に座っていた松本が、友田の腕を肘でつつきながら言った。
「えっ?」
友田は、慌てていた。
「趣味……?」
大食いと早食い?趣味じゃないか!どっちかと言えば、特技だよな?
「う~ん。別に、ないなぁ……」
「ないんですかぁ!」
永田が、呆れて言った。
「そう言うお前はあるのか?」
よくぞ、聞いてくれました!と、言わんばかりに永田は答えた。
「俺、最近アウトドアにハマってるんすよ」
「へ~」
「そうだ!石田さん。今度、一緒に行きましょう!」
ポカンとしている俺の両手を永田は包み込み、俺と永田はしばらくみつめあっていた。
「やだ~」
「二人とも、なにやってるのぉ!」
桐野と松本は、揃って声を上げたのだった。




