1.乙女石
あらすじ
悪神五凶捜しとダイエットの為に旅に出ている神美と五龍達。
神美は怪しい老婆から「乙女石」という意中の相手を虜にする石を貰った。
半信半疑で神美は試しに先ずは黄龍にその石を渡してしまうが……?
それは────旅の途中で起きた出来事だった。
今晩泊まる宿の近くを散歩していた神美は、怪しげな老婆と出逢う。
「おや、そこの若い娘さんや~。あんた、恋してるね?───だったらこの乙女石なんてどうだい?」
「乙女石?」
「ひっひっひ……。これは意中の相手の心を思うがままに操れる代物さ。女乙山という、桃色の山でしか採れない貴重な石やでのぉ…」
「えー、なんか胡散臭いよー」
「そう思うなら、気になる相手にこれを握らせてみなって…。あんたの事が頭から離れなくなって……───最終的には一体化するくらい愛してくれるさ」
"特別に五つあげるよ"と、怪しい老婆から神美は桃色の石を受け取る。
「…こんな石で愛してくれる~?!───…うーん……って…アレ?」
石に気を取られていると、怪しい老婆の姿が何処にも見当たらない。
仕方がない…と言いつつも、神美は内心胸を躍らせていたのだった。
。
。
「たっだいま~!!」
「ちょっと、どこで道草食ってんだよ」
宿に戻ると黄龍が仁王立ちで立っていたのだ。お腹が空いてるからなのか、かなり不機嫌な様子だ。神美は「そうだ!」と、早速例の石の1つを黄龍に渡してみた。
「なにこれ」
「え、えーと……"幸せになれる石"だよ!」
「……はあ、またそんな胡散臭そうな物拾ってきて……───お前って本当に馬鹿だね」
「良いから!その石握ってみて」
無理矢理黄龍に石を握らせると
「…………好き」
「へ」
「はあ……神美───いつも素直になれなかったけど……、本当はキミの事……愛してる」
「ええええええええ!?」
「今すぐにでも"1つ"になろう」
そう言って黄龍は神美をその場に押し倒しては口付けをしようと迫る。
「ちょ、ちょっと!!黄龍!!!落ち着いて!!!」
「そんな事言って───本当はこうなる事を……望んでいたんじゃないの?」
ツーッ……と、しなやかな指先は神美の太腿を伝う
「ひっ……ひいぃぃぃぃぃ!!?───だ、誰かーーーーっ!!!!」
悲鳴を上げると、「なんだなんだ」と白龍以外の五龍達が駆け付ける。
黄龍が押し倒している姿を見て、「交孳ですか…?」と、青龍が呆れた様子で黄龍を引き剥がそうとしたが
「僕とハニーの仲を引き裂くなッ!!!!」
「…どうしたんですか黄龍……それ以上頭が可笑しくなってどうするんですか?」
「チーちゃん言い過ぎ!」
「チッ…くだらねぇ…───気色悪」
「お、お願い!!誰でもいいから黄龍から石を取り上げて!!」
「石…?」
「そうはさせない……"これ"はハニーと僕が"1つ"になる為に必要な物だ……───お前らに渡すものかッ!!!」
神美は黄龍に乱暴に引っ張られ、バランスを崩してしまい、持っていた石を床に落としてしまった。
これも運命なのか悪戯なのか───青龍、黒龍、赤龍の足下にそれぞれ転がり落ちる。
勿論予想通り、それを拾ってしまった3人は……
「My sweet honey……私と共に此処から逃げ出し、2人だけの世界を作りましょう」
「嗚呼……神美ちん……───キミはどうしてそんなに美しいんだ……っ」
「……す……す……好きだ─────」
獣が4匹、誕生してしまった