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プロローグ



 鼻筋が通った目元の涼しい端麗な顔。

 夫になった彼は、事前に聞いていたより何倍もイケメンだった。


「二人の新居はこの離れを使って貰うーー」


 簡単な挨拶を済ませた後、向かい側に座っている公爵から今後に関しての説明を受ける。


「挙式の準備は時間が掛かる為、一年後となる。それまでに、ブロンダン家に慣れてーー」


 ふと隣を盗み見た。

 青みを帯びた銀色の短い髪に、宝石のサファイアを彷彿とさせる青い瞳の青年が座っている。

 未だに信じられないが、エレノラは彼の妻となった。

 ただ顔を合わせるのは今日が初めてだ。

 仲介者を介し書類をやり取りしただけで成婚した。


 ユーリウス・ブロンダン。

 公爵家の嫡男、頭脳明晰、王太子の側近、眉目秀麗、馬術剣術共に優秀ーー正に超優良物件だ。

 但し、超がつく程無類の女好きらしい。その所為で、中々結婚相手が決まらなかったとかなんとか。


 見た所、まるでそんな風には見えないが、なにしろ結婚相手にど田舎貴族出身のエレノラが選ばれたくらいだ。()()()は事実だろう。

 それに挙式は一年後なのだから、なにもそんなに急いで籍を入れる必要はなかった筈だ。

 仲介人の様子からも感じたが、恐らく逃がさない為と思われる。

 

 

「ーー以上だ。それではエレノラ嬢、息子を頼む」


 公爵はそれだけ言い残すとさっさと本邸へと戻って行った。


「……」


 部屋に二人きりになるが、物凄く気不味い。何か話さなくては……。


「改めまして、私はエレノラと申します」


「先程、自己紹介なら聞いた」


「ふふ、そうでしたね……」


 軽く笑って見せるが内心苛っとした。

 そうじゃない。

 確かに先程公爵の前で挨拶はしたが、彼とは一言も話していないのだ。故に改めて挨拶しようと思ったのだが、どうやら彼はお気に召さない様子だ。

 顔が引き攣りそうになるのを堪える。


 それにしても、先程から思っていたが幾ら何でも無愛想過ぎる。

 元々このような人柄なのか、若しくはこの結婚に不満があるのかも知れない。


「不束者ですが、宜しくお願いします」


 政略結婚なので、多少の不満は我慢して貰う他ない。お互い様だ。

 気を取り直し、丁寧に挨拶をするがーー


「君と馴れ合うつもりはない」


「え……」


 彼はエレノラに向き直る。すると頭のてっぺんから爪先までをまるで吟味するかのように見ると、大きなため息を吐いた。


「結婚相手が決まったと聞いて少しは期待していたのだが……まさか、こんな芋っぽい娘だとはがっがりだ」


(はい⁉︎ 今なんて言ったの⁉︎ 芋っぽい⁉︎)


 エレノラは唖然とする。

 確かに田舎者なのは事実だが、面と向かって言うなど失礼過ぎる。


「私の妻には相応しくない。よって、妻とは認めない」

 

 無表情で言い切られる。

 正直、彼が無類の女好きだろうが有能なイケメンだろうがどうでもいい。約束の報酬さえ貰えたら。ただーー


 本人に拒否された場合は、契約不履行となるのだろうか……。

 私の役目は彼の妻でいる事なのに。


(そんな事になったら、借金が返せない‼︎)


「出掛けくる。君は好きにしてくれ」


「え、あの、ユーリウスさーー」


 呼び止めようとするが、彼はさっさと部屋から出て行ってしまった。

 先行きが、不安過ぎる……。

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