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記録13 エリュシオン・パレスの襲撃ー混沌の幕開け

エリュシオン・パレス内では何が起きているのか?

いよいよ突入です。

エリュシオン・パレスは一般フロアが5階の高さの巨大なドーム状になっており、そこには数千人から数万人の一般層が出入りしている。そして中央のエレベーターホールから、塔のように36階までの高層ビルがそびえ立っている。このビネスは様々な異星人が訪れるため、ヒト型ではない巨大知的生命体も往来している。そのため1階の天井高は10メートルにも及び、ビルの総高は400メートルにもなる。


6~20階までは数億~数千億の資産を持つVIPフロア、21~30階はさらに桁違いの富豪が集う領域、30~35階は"天上の者"しかたどり着くことのできない、まさに楽園とも呼べる空間。そして最上階36階には会長室がある。地下には巨大な金庫があり、そこへは特定の階から繋がる秘密の通路でしかたどり着くことはできない。チップや金のやり取りは自動化されており、外部の者が侵入することは叶わない。


そんなエリュシオン・パレスの20階付近で爆発と爆炎が発生。すでに1階は火の海となり、逃げ惑う人々があふれ出ていた。

上空には無数のメディアドローンが飛び交い、各局が生中継で放送している。また、それらをどけと言わんばかりに軍用ドローンが周囲の警戒にあたっていた。


周囲にはルードゥスの特殊部隊『ファルクナス』が展開し、包囲されつつあった。軍用車両が並ぶその中央には、真球体の大型索敵装置が配備され、定めた領域内の索敵を定期的に行っている様子が見られる。しかし、その光景は突如として崩壊する。

ビルの複数個所から爆炎が巻き上がったのである。火炎が吹き上がり、警報音が鳴り響く。歓楽街の住人たちが悲鳴を上げ、混乱の渦が広がる。煙が空へと昇り、燃え上がるビルのシルエットがネオンの光を鈍く反射していた。





同時刻——ケイとアイの二人は、エリュシオン・パレスの向かいにある大通りを挟んだ高層ビルの屋上へときた。そこから二人は周囲を一望し、観察する、

そして、BOLRから各局のメディアに流れる情報を吸い取り、建物の3Dマップを展開、メディアドローンや軍の索敵範囲を確認しながら、適切なルートを探った。


「予想以上に軍が動くのが早い……予測していたのか?」

ケイは立膝をつき、下を覗いて言う。


「ええ、ただの緊急通報というより……これは、あらかじめ警戒していた動きです。この襲撃は予測されたものだと」

アイはそう推察する。


「……ああ」

ケイはエアバイクのハンドルを握りしめながら、火柱の向こうに何かが動くのを見た。

「だが、問題はここからだ」


アイが視線を鋭くする。


爆炎の煙と陰を巧みに利用し、索敵範囲内でありながらも熱源を分散させることで、短時間なら侵入が可能と判断した。建物内では索敵網にかかり、動いていることはバレるが、少なくともこの状況下で一般人が迷っているように見せることはできると推測し、一気に潜入すべきと判断した。ここを飛び出し、先の爆発で損壊した20階にある巨大な穴へと飛び込むこととした。





——大型索敵装置が明滅しあたりを眩く照らす。装置の周囲では慌しく駆けまわる兵士たちが。その索敵装置は、各階にどれだけの人数がいて、どれだけが動いているかを検知する。生存者の多くは1~10階付近で動けずにおり、20階以上ではわずかに激しく移動する個体がいる。

だが、部隊もこの中の誰が敵で、誰が生存者かまでは判断できていない。各階への制圧を開始し、まずは催涙弾と消火弾を各階層にばら撒くことで、敵味方問わず戦闘能力を鈍らせる作戦に出た。


その動きをみたケイとアイは、彼らが敵の勢力をまだ把握しきれていないと理解した。


高層階までたどり着くには多少の時間を要するだろう、しかし、建物の倒壊する可能性と制圧・救命を考えれば、部隊の者たちも決断を迷ってはいられなかった。



そして、二個小隊のルードゥス特殊部隊『ファルクナス』が1階から突入した。

彼らは全身を強化外骨格の装甲で覆い、手足には特殊なレーザー武器を仕込んでいる。それぞれ小回りの利く実弾銃を装備、その破壊力はミニガンにも匹敵するアサルトライフルだ。頭部には複数の視覚情報を最適化するゴーグルとガスマスクを装着し、催涙弾の影響を最小限に抑えている。


《|第一分隊『レイヴン』、突入!慎重に進め!》


先頭の隊員が鋭く命じると、重厚な装甲を纏った兵士たちが一列に並び、崩れたエントランスへと慎重に足を踏み入れる。


各小隊から二個分隊に別れ、計四個分隊で各フロアの制圧に移る。

先陣を切ったのは偵察を担う第一分隊『レイヴン』だ。彼らは最新鋭の索敵装備を駆使し、ビル内部の状況を瞬時に解析。続いて、破壊突入を担当する第二分隊『タイフーン』が制圧ルートを確保するべく、重火器を抱えながら瓦礫を蹴散らして突入した。第三分隊『オメガ』は最前線での戦闘を担う精鋭たちだ。彼らは敵との交戦を想定し、突入と同時に遮蔽物を利用しながら戦闘態勢を整えた。背後では、第四分隊『サーベラス』が後方支援と情報収集を担当し、戦況の把握を続ける。


ヘルメット越しの通信が戦場に響く。

《索敵結果、20階以上に不規則な移動パターン。複数の生存者とおぼしき反応あり》

索敵班が即座に報告する。


火花が飛び散る中、各分隊は剥き出しのコンクリートの通路を踏みしめながら、じわじわとビルの深部へと進んでいく。


《動ける生存者を優先的に救出。一般人との判別が出来ないものや、武器を持つ者がいれば拘束しろ》

分隊長の冷静な指示が飛ぶ。


第三分隊(オメガ)はすでに階段室へ向かい、上階への進行ルートを確保しようとしていた。


《……予想以上に火の手が広がっているな》


《了解。消火弾を散弾させ各フロアの経路確保を行う。速やかに行動せよ》


指揮官が命じると、外部隊員たちはコンパクトなグレネードランチャーから更に催涙弾を各階層へ向けて放ち、短時間でエリアを白い煙の海に変えた。


第四分隊(サーベラス)、エレベーターホール制圧完了、上層への進行準備整った》


《よし、進行する!》






「……今だ」


ファルクナスの突入と同時に、ケイはエアバイクを一気に加速させ、軍用ドローンのわずかな隙間を縫うように機体を傾け、風を切るように滑空した。ドローンが索敵モードに入る前に、わずかな死角を突き、急旋回を繰り返しながら加速。


次の瞬間、エリュシオンの爆炎が再び噴き上がる。その煙と光の中に身を隠し、一気に建物へと接近。


《バイクごと突っ込むつもりですか?》

アイが微かに苦笑する。


「さあ、どうだろうな?」

ケイはエアバイクを壁すれすれに飛ばしながら、外壁の崩落部分を狙った。


爆発の余波を受け、軍のドローンが軌道を修正する。その刹那、ケイはそのドローンの一つを足場に使い、軽く踏みつけながら方向を変える。

一瞬の無重力状態、そして急降下。

バイクを捨て、前転するように宙返りしながら大穴へと飛び込んだ。


その直後、アイはビルの屋上から躊躇なく跳び降りる。衝撃を吸収するように壁を蹴り、ケイの軌道を追いながら、飛び交うドローンを足場にしてして跳躍を繰り返し見事に100メートルはある対岸へと着地して見せた。





——内部はすでに破壊の爪痕が残っていた。壁には焦げ跡があり、床には血の飛沫が散り、いたるところに遺体が転がっている。しかし、ケイとアイはそれを見ても表情一つ変えず、周囲を警戒しながら静かに歩を進めた。


「部隊の通話を傍受しました」

アイが短く報告する。BOLRの解析結果が浮かび上がる。


《どうやら、すぐにでも上層階へ進むつもりですね》


「なら、ここで足止めするしかないか」

ケイはわずかに思案しながらアイを見る。


《私が階下で抑えます。その間にあなたは先へ》

アイの提案にケイは一瞬沈黙するが、すぐに頷いた。


「……頼んだ」

短く言い残し、ケイは迷わず屋上へと向かう。


爆風で白煙が飛散していたが、間も無く襲いくる。

ケイは鋭く睨み、手をかざす。

周囲5m、敵をギリギリ見分けられる有効範囲だけ、超能力で白煙を散らした。





第二(タイフーン)三分隊(オメガ)が中央エレベーターホールから上層階に向かおうとしている。その瞬間——

突如、1階ホールの吹き抜けから巨大な影が降下する。


《何か来る……!》

第二分隊長が即座に警戒態勢を取る。


5階フロアから、ポーカーテーブルが勢いよく蹴り飛ばされ、下の階へと落下した。

《何か落ちてくるぞ!避けろ!》


1階にいた分隊員たちが慌てて散開。テーブルが床を砕きながら激突し、粉塵が舞い上がる。


《誰だッ!!》

分隊の一人が叫び、5階の吹き抜け部分を見上げる。


そこに現れたのは、漆黒のシルエット。

アイが無言で軍隊員たちを見下ろし、僅かに首を傾げた。


《なんだ?!》

《臨戦態勢に入れ》

《各隊散開!》

兵士たちが無線を飛ばすが、その次の瞬間、アイは無造作に真下へと飛び降りた。


5階の高さから自由落下し、1階フロアに着地。

轟音と共に床が砕け、衝撃波が周囲に広がる。噴煙が巻き上がり、軍の兵士たちは反射的に後退。


《くっ……!》


煙の中からゆっくりと姿を現すアイが。


「……ここは通さない」

その言葉と共に、特殊部隊ファルクナスとアイの戦闘が始まろうとしていた。


《……なんだ?人間だと!?》





一方、ケイは迷わず先へと進んだ。

そして、彼の手はイヤホン型の装置へと伸びる。

それは『シンセサイザー』——ケイがこれまでの戦いの中で、最も頼りにしてきた装備だった。

彼はそれを耳に装着する。僅かにうつむき目を閉じる。周囲の騒音がノイズとして消え、音の細部が聴こえ始める。同時に頭蓋内で響き脳を貫く高音。そして頭を両手で抑える様な仕草から、フードを深く被り直した。


目の前に散る火花がフードに隠れる彼の顔を照らすと、目の周囲には上下に深い隈が広がっていた。まるで黒い涙を流しているかのように——。

ケイとアイの戦闘シーンがついに始まります。

ファルクナスとアイの戦闘、そしてシンセサイザーを装着したケイとその先に起こることは?!

次話、お楽しみに!

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