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獣体人魂放狼記  作者: 走る花火
死に物狂いのサバイバル編
5/12

3歩目 情報多けりゃ宿題みたいに分かるのから解いていけ

多くなった設定周りっていっそのこと別で投稿するのもありなんだろうか

(んぐ!?)


 ぼんやりと考え事をしながら食べていたからか、肉の中に変な物が紛れていたことに気付かなかったらしい。肉とは違う硬い何かを噛み砕いたような感触がした。

 思わず咳き込んで吐き出そうとするも、どういうわけか咀嚼でなんとも言えない形になった肉塊しか出てこなかった。それどころか妙なことに喉の奥を中心に体全体に何かが行き渡るような、全身が痒くなるようなよく分からない感覚が広がっていく。


魔魂まこんの捕食を確認しました》

《個体名:■■レ■の魂がアミズガルに順応しました》

《存在がクラスX:虚灰狼(きょはいろう)ブランクヴォルフェへと正式に更新、並びに個体名の消去を実行…完了しました》

《アミズガルの生命へと正式に更新されたことにより、アクティベイトスキル【鑑定術・クラスF:解析】の制限が解除されます》

《経験が蓄積されたことにより、アクティベイトスキル【牙爪術狼式(がそうじゅつろうしき)・クラスF:スマッシュクロウ】を習得しました》

《ソルウルスの魔魂を捕食したことにより、アクティベイトスキル【地属性下級自然魔法・クラスF:テルジラ】を吸収しました》


 再び頭の中に文字の羅列が浮かんでくる、今度はさっきの説明文みたいなのと違って報告みたいな感じだ。

 聞いた限り……いや、読んだ? どっちにしろ確認した限りだとアミズガルってのに順応したらしい、それが何を意味しているのかは全く分からないけど。

 個体名の消去云々についてはどうでもいいか、ノイズ混じりで耳障りというか塗り潰されてたのはあれだけど、そもそもどうせもう使わない名前だ。それより魔魂ってなんだろ、吸収したってなるとひょっとしてさっき噛み砕いた硬いやつのことか?

 とにかく情報が多いし、なんとなく分かるのから処理した方がよさそうだ。とはいえ一つしかないけど。


 獅子熊の死骸にめり込んでる剣もどきへと近づき、前肢を本来なら手で握る部分に押し当ててみる。

 ……何も起きない、こんな感じで使うわけじゃないんだ。鑑定術とか解析って名前だし、触ったりしたら何か分かるとかそういうのだと思ったけど。

 触るのが違うなら……見る?


 試しに全体をじっくりと眺めてみる。

 色は紫が混ざった黒で、形はよくある先端が三角形のタイプ、ただ握る部分と刃の間にある部分がない。なんて言うか握るところ以外で全部斬れるって感じだ、一体何考えて作ったんだろ。

 ……って、これも違うんだ。土の柱の時はこれで情報が出てきたのに変だな、確かにあの時はこうやって見たら流れて……あぁ思い出した、そういえばそれだけじゃなかった。

 深呼吸をし、じっと剣もどきを見つめ、周りの景色がぼやけてそれしかはっきりと見えなくなるくらい意識を集中させる。ここまではついさっき試したのと流れは同じ、違うのはただ”知りたい”って考えながら見つめることくらいだ。

 しばらくそうしていると、体の中で動いた何かが外に漏れていくような感覚がした。間違いない、あの時と同じだ。


【クラスS:黒鎚剣(こくついけん)ニグレド】

【かつての深禍大戦(しんまたいせん)において大錬金術師トリスメギストスが地の底より湧き出る深禍獣(アビス)を殲滅するために生み出した武器の一つ】

【大剣と棍棒二つの性質を持ち、大戦においてこれを手にしたある戦士は数多の深禍獣を斬り殺し、叩き潰し、容赦なく屠っていった。現在ソードメイスとして普及している武器の起源とされている】

【過剰と言えるほどの闇属性の魔力を秘めているため、扱うためにはそれ相応の闇属性に対する高い適性が必要であり、条件に見合わない存在が手にしても持ち上げることすらできない】

〖数多の厄災を滅するには、錬金術において禁忌である黒の力をも利用する必要があった〗

〖その力は矮小なる存在が扱うには過ぎた力、振るえば振るうほどに人知れず、少しずつ、着実に、使う者の魂を蝕んでいく〗

〖大錬金術師亡き後も、その黒き怨恨を宿した刃は滅するべき存在を求めて彷徨い続けている〗


 情報が出たには出たけど……また知らない単語だらけだ、流石にこれ以上考えるのは疲れる。後半の文章も全体的に結構物騒な雰囲気だし。

 何はともあれ解析の使い方はこれで分かったんだ、知りたい相手を見ればいいって条件ならさっき聞いたブランクヴォルフェ……俺自身がどうなってるのかとか分かるだろうし、最初に見つけた湖まで戻ってみるか。

 この死骸とニグレドは流石に持ち運ぶのは無理だからもったいないけど置いていこう。腹一杯だからしばらくは……腹一杯、か。

 獅子熊の死骸から離れ、頭に、目にその巨体を焼き付ける。


(……ごちそうさまでした)


 せめてもの礼儀として一礼をし、俺はその場から立ち去った。






 やばい、迷った。

 あれだけ走り回った後なら確かに普通は迷いはする、でも今は狼の体だから匂いで辿り着けると思ったんだけど、その俺自身が獅子熊の血で異臭の塊みたいな状態だから全然見つからない。

 足跡を探すのも考えた、ある程度さっきまでいた場所から離れた後に思い付いてなかったら今頃試していたところだ、間が悪い。

 闇雲に歩いて湖に出れる可能性はかなり低い、元々俺には運なんてもの微塵もないから尚更だ。不可能って思ったって誰にも文句は言われ……そもそも文句を言う相手ももういないんだった。


 ……流石に足が痛いし疲れてきた。よく考えたら獅子熊から逃げたり戦ったりしたのに今までよく大丈夫だったな、狼の体だと人間よりも体力が上がってるらしい。いやまぁ、運動自体あんまりできなかったからこういう感じなのかもしれないけど。

 一旦立ち止まり、耳を澄ませながら周囲を見回す。聞こえている範囲がどれくらいなのかはまだ把握し切れてないけど、感覚的には結構広い範囲の音が聞けている気がする。

 例えば何かが木を登る音、鳥が羽ばたく音、それから風で草木が揺れて擦れ合う音に──何かが起き上がるような音。

 咄嗟に手ごろな木の後ろに隠れて様子を窺う。しばらくして獅子熊の比じゃない大きさの足音が響き始める、音の出所を観察すれば木々の奥にその正体が確認できた。


 それを見た時、一瞬鉄が歩いていると思った。

 ガッシリとした全身を覆うのは鱗や皮と言うよりもまるで鉄板そのものを貼り付けたかのような角ばった姿をしたそれは、胴体から生えた四つの脚に太くて長い尻尾と、頭から生えている刀のように湾曲した二本の角を除けばワニに似ている。

 前脚の方が発達しているみたいで、例えるなら垂直に置いた丸太の正面に三本、側面に二本の爪を生やしたような形状をしている。後脚も当然のように頑丈そうで、人間で言う太ももとか脹脛(ふくらはぎ)の部分に複数の突起が生え揃っていた。

 見るからに硬そうな見た目から防御には自信があるのか、それは周りを警戒するとかそんな素振りもなく、ただただ悠然と、堂々と歩いていた。

 不意に頭の中にまた文字の羅列が流れ込んでくる、無意識に解析を使ったらしい。



 クラスD+:鉄城竜(てつじょうりゅう)アイアンドレイク

 種族:竜族(地踏竜(ドレイク)型)

 状態:通常

 魔力総量:357/357


【ユニークスキル】

〈アサルトスケイル〉〈砂竜ノ息吹〉


【アクティベイトスキル】

〖牙爪術竜式〗

 クラスD:〈スクラクロウ〉〈スクラテイル〉〈スクラファング〉

〖走破術〗

 クラスD:〈スクラドライブ〉

〖白兵術〗

 クラスD:〈カウンター〉


〖魔法〗

《中級自然魔法》

 地属性・クラスC:〈イーゲ=テルジラ・マレウス〉

 地属性・クラスD:〈アルトゥ=テルジラ・ディウス〉


《中級干渉魔法》

 強化属性・クラスD:〈アルトゥ=フェンシオ〉


【パッシブスキル】

〈竜鱗〉〈物理耐性〉〈魔法耐性〉

〈地属性強化〉


【称号スキル】

〈強き母〉〈絶対守護者〉〈縄張りの主〉

〈貪食の権化〉〈ジャイアントキリング〉〈エルダー・ドレイク〉



「…………ぁ」

 

 目に入った三つの文字に、思わず声を漏らす。幸いそれはワニもどき──アイアンドレイクには聞こえてなかったみたいだ。

 ……強き母、か。だったら近くに子供がいてもおかしくはない、厄介なことになる前にさっさと離れておいた方がよさそうだ。

 おまけにあれは縄張りの主なんて称号が付いてるんだ、そんな明らかにやばい奴にわざわざ関わる必要がない、なんの価値もない。

 音で気づかれる可能性の高い深呼吸はせず、ひたすら考え続けて気持ちを無理矢理抑え込む。


 アイアンドレイクがこっちに気付く前に、俺はその場から走り出した。

 それにしても心臓の音がやけにうるさいし頭も痛む。おまけに胸はガスでも詰め込んで圧迫されたような感じだ、気分が悪い。

 ……気分が悪い。

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