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第8話

 疲れた。


 私は一人になった自室で、大きくため息を吐いた。


 結局半ば脅迫のように協力を取り付けられ、イエル達は「詳しいことはまた明日にしましょう」と言い、去っていった。


 その後、心配した両親とロージー姉さまがやってきて、心配されたり泣かれたり。幸いにもエマは早めに疑いが晴れ、酷い扱いをされていないと聞きホッとした。事情を説明していると、リックウッド伯爵が知らせを受けて駆け付けてきた。


 ダスティンの様子を見て嘆く伯爵に、両親と私で謝罪と今わかっている事実を全てお話した。伯爵は呪いが長期間かけられていたことを知って考えこみ、ダスティンに近しい人の仕業と言われ絶句した。


「こちらでは、何かそのような兆候はなかったのですか?」


 長い沈黙の後の伯爵の言葉に、父は首を横に振った。


「彼は至って普通の様子でした。ご実家に帰られたときはいかがでしたか?」

「私には変わらず接していたが……、家の者にも聞いて調べます。統括部と神官騎士は明日も来られるのですか?」

「はい、明日にはアイリスも戻りますのでその頃に」

「では、私も同じ時間に来ましょう」

「お手数をおかけします」

「なあに。もともとこちらに伺う予定でしたから」


 苦く笑う伯爵にいたたまれない気持ちになった。本来なら、明日は私とダスティンの婚約の顔合わせという名目で、リックウッド伯爵夫妻と会う予定だった。もともと旧知の間柄。書類を交わした後に軽くお茶でもという気楽な会合の予定は、前回と変わらないはずだったのに。私は申し訳なさで深く頭を下げるほかなかった。


 アイリス姉さまは、夜明け直ぐから馬車に乗って戻るそうだ。早馬での知らせを告げに来たのはエマで、お互いの無事な姿に二人で泣いた。


 本当に疲れた。


 私は自室で横になって、大きくため息を吐く。


 十年前に戻って二日目でこれとは、少し忙しすぎでは? どうしてこうなった? そもそも、不幸を避けるために行動したら事件に発展するなんて。私、また何か間違えた? ダスティンは大丈夫だろうか。明日、またグレーナーとイエルが来る。容態と治療について聞かないと。今度こそうまく立ち回らなきゃ。ああ、アイリス姉さまも戻られる。隣国の船に乗れなかったこと、謝らなくちゃ……。


 考えることがたくさんあるのに十二才の身体では眠気に勝てず、私はそのまま眠りに引き込まれていった。



 


 ぱっちりと目が明いた。


 私は白い部屋のベッドで寝ていた。驚くことに、女神さまがベッドに腰かけて私を見ている。


「お疲れさま、ミリカ」


 私が驚きのあまり即起き上がり、口をはくはくさせるしかなかった。


「二回目でそこまで驚かなくてもよくない?」


 女神さまは首を傾げてのんきに仰るが、それどころではない。


「私、私、また死っ」

「ああ、違う違う」


 女神さまはへらりと笑われて、私の背中を優しくとんとん叩いた。


「大丈夫、ちゃんと生きてる。ここはあなたの夢の中」

「夢、ですか」

「そう、こういう時間の方があなたと意識を繋げやすいから。起きているときに繋げると面倒なのよ」

 

 困惑する私に女神さまはさらっと答えられた。


「聖女にされて、一生神殿の中とか嫌じゃない?」


 非常に良い笑顔と予想外の答えに、私は思わず無言になる。


「で、落ち着いたところで。進捗どう?」

「申し訳ございませんでした!」


 私はベッドから降りて跪き、これまでのことを奏上した。


「……という次第でございます」

「うんうん、顔を上げてね。思ったよりうまくいってよかったわ」

「は?」


 思わぬ女神さまの言葉だった。


「女神さまはご存知だったのですか?」

「何かを仕掛けられていることだけはね。あなたの助けを借りないとできなかったわ。ミリカ、優秀ね」

「それは、ありがとうございます」


 疑問に思いながらお礼を言う私を、女神さまはくすくすと笑った。


「あなたの行動次第で変わっていくから、全てを見通すことは難しいけど。最悪に行かないよう、これからも力を貸すわ」


 私は女神さまに頭を下げながら考えた。変わってしまった未来。皆の命を救えたとして、めでたしめでたしで終われるのだろうか。


「……ダスティンは大丈夫なのでしょうか」


 そう零した私に、女神さまは困った顔で笑った。


「彼の精神力に期待しましょう。結構しぶといから大丈夫。前回だって十年以上耐えたんだし」

「え?」

「残念、時間切れ。あ、イエルはおかしな子だけど腕は確かよ。上手く使って。じゃ、また」


 自分が引きずられるような感覚で、女神さまが遠ざかる。白い視界に黒が滲むように混じって、真っ暗に変わった。




 ぱちりと目を開けると、自分の部屋にいた。薄暗い部屋は夜明け近くのようだ。


「全然、寝た気がしない」


 私はため息をついて、せめてもの抵抗でエマが起こしに来るまでベッドでごろごろすることにした。

お読みいただきありがとうございました

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