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能力なんてクソくらえ・  作者: 迫り来る睡魔
7/10

▶7.胸の内

「なあ…流石の私もキレるぞ。」

秘密基地(アジト)に帰って組織の目的を聞くとミズアメがプッツンした。


「もうキレてんじゃねーか。」


「なんか言ったか?元はと言えば、颯太(おまえ)が人の話を聞いてなかったんだろうが!!」


「しゃーねーだろ!お前の助けになれるならと組織に入ったんだから。」


「な、な.....何言ってんだ、そんな事言われたら怒れないじゃないか。」

水谷亜美(ミズアメ)は顔を赤くして口元を隠す。チョロいな…。




「お兄さん、私というものがありながら女性を口説くとは感心しませんね。」


「そうよ、勝手に亜美を口説かないで貰えるかしら。」


凛と小夜が口を揃えて言う。


「これを口説いてるとは、お前らは何を見て言ってんだよ。」

本当に口説くつもりなどない。


「そ、そうだぞ!別に口説かれてなんか…」


「亜美、顔赤いわよ。」


「マジか、颯太はこっち見んなよな。」


「何で俺だけ?理不尽!」


「何でもだ! 」

本当に理不尽過ぎやしないだろうか。


「あら、青春ね〜。」「いいわね、アオハル。」「やっぱり若さって良いわね。」

背後から三十代くらいの女性達がからかう声が聞こえる。


「そういうのじゃ無いですよ、彼は私達の新しい構成員(なかま)です。」

ミズアメが、女性達に説明する。


「あら、そうなの。宜しくね〜。」


「よろしく...お願いします。皆さんお仕事は?」

アジトに住む組織の人間はスーパーで働いていると聞いている。


「レジ締めから鍵閉めまでして終わったわよ。」


「それにしては、随分...」

早い、まだ18時頃なのに。


「まぁウチの店は9時半から17時迄の営業だからな。」

ミズアメが説明を少し付け加える。


「マジで閉店時刻が早かった。その営業で利益出てるのか?」


「知らね」


「おい、テメェの店だろうよ。」


「利益目的でやってる訳じゃないからな、でも多分従業員の給料を払えるくらいには儲かってるんじゃないか。」


「適当だなぁ」

さっき見た時はかなり繁盛していたので、あながち嘘というわけでは無いのだろう。


「利益目的じゃないなら何が目的でスーパーなんて作った?」


「色々あるが大きいのは、食料の大量購入が怪しまれない所だな。どうしても食料は必要だ。」


「スーパーなら販売目的で仕入れられると?」


「そういうこったな。」


意外だった、スーパーに理由があるなんて。


「そりゃあ代表だってキチンと考えていらっしゃいますよ。」


「うわっ!びっくりしたぁ。」

ガチでビビった。心臓止まるかと思った。

話しかけてきたのは僕より少し上くらい(に見える)女性だった。


「げっ、何か見透かされているような気がしてこの子苦手なのよね。アッチに行きましょ。」

そう言って凛は小夜を連れて離れていった。


「まったく、失礼な人ですね、本人の目の前で悪口を言うとは。それはそうと先程は失礼しました。新人に挨拶をしておこうと思いまして。」


「相変わらず固いな(はな)颯太(コイツ)にはもっと適当な対応でいいんだよ。」


「そうは言われましても……」


「こいつの言うことは無視しとけ、とりあえず、自己紹介だ。八神颯太、ミズア‥‥水谷さんのクラスメイトです。」


「そう畏まらなくても構いませんよ。私は早乙女(さおとめ)(はな)と申す者です。どうぞよろしくお願いします。」


「彼女は私の秘書のような事をしてくれている。特に私が不在の時には組織を統率して回してくれているんだ。正直に言って助かりすぎてる。」

彼女の事をひどく信頼しているようで気を許しているように見える。


「嬉しいお言葉ですね。ですが、やはり貴方様がいなければ、組織としての歩みは止まっていまいます。ですから、これからも導いていただきたいのです。」

早乙女さんが微笑みを浮かべて言う。


「分かってる、もう始めるつもりだ。()()も集まったからな。」

ミズアメが言う。その戦力に僕が含まれていないことを願っておく。


「一だから作戦(それ)を今夜にでも皆に説明するつもりだ。」


僕には何を企んでいるのか皆目見当がつかない。だが、それでも実現可能な勝算があるのならそれに従うつもりだ。




┈┈┈┈その日の夜┈┈┈┈┈┈┈┈

ミズアメは、皆を集めた。普段ここに住んでいない人も居るからか、広すぎると思っていた空間が物足りなく感じる。


その大勢の前でミズアメが段の上に乗ってマイクを握って話す。


「皆に集まってもらったのは他でもない新メンバーの紹介だ。ほら、八神と小夜ちゃんは段の上に上がってこい。そんで一言いってやってくれ。」

おい!聞いてないぞ。即興(アドリブ)で話すのは苦手なんだよ。

とはいえ、断れるわけも無いので台の上に上がる。


「今日から仲間に入れていただく小夜と申します、どうかお見知り置きを。」


「同じく今日からこの組織に入った八神颯太だ。何か質問は」


「おい、無愛想がすぎるぞ。」

ミズアメが後ろから突いてくる。仕方が無いだろ、人前で話すのは苦手なんだよ。


1つの手が上がる。


「君達は能力者が優遇される社会をどう思いますか?」


「クソだな」「狂ってますね。」僕と小夜が同時に言う。


「そもそも他国と戦争する為の兵器集めっていう魂胆(ホンネ)|が見え見えなんですよ。だから、肉壁にしかならない失敗作(アルビノ)を無視して能力者達を優遇する。まったく国民を何だと思ってるんですかね?」


「同感だな、──だが、僕達は与えられた側の人間だ。だから、本当の意味では持ってない者の苦しみを理解出来ないのかもしれない。でもな、現状ではいけない事くらいは分かる、だから社会を一緒にひっくり返しちまおうぜ。」



僕の煽りは成功し、皆の熱気に火がつく。そして、手が付けられなくなる前に首領(ミズアメ)にマイクを押し付ける


「盛り上がってる所に水を差すようで悪いが話を聞いてくれ。」


流石リーダーと言うべきか、その一言であれ程騒いでいた群衆は静まり返り、彼女の話に耳を傾ける。


「ようやく作戦と実行するための人員が揃った。ようやく、動ける。狙うは刻星(こくせい)学園だ。━━━━」

ミズアメが高らかに宣言したその名は僕達が通っている学園だった。


皆がざわめく。その理由は圧倒的な戦力差によるものだろう。戦闘に向いている能力者に非能力者(アルビノ)が勝とうというのが無茶なのだ。しかも学園(そこ)には僕達のような能力者がわんさかいるのだ、当然勝てる道理はない、死ににいくようなものである。


「安心しろ、当然、策はある。」

不安な僕達とは裏腹にミズアメは自信げである。ちなみに一組員である僕としてはリーダーの決定に従うつもりだ。


ミズアメは、語り出す。

「~~~~~~という訳だ。下準備が出来次第、実行に移すからな。それじゃあ解散だ。」


長ったらしく説明していたが要するに攻める者(メイン)支える者(サポート)に別れて学校(しろ)を攻め落とすらしい。


後で凛に近くの人気(ひとけ)のない山に呼び出された。


「私達、やれるのかしら。」


「自信の程はどうなんだ?突撃隊長。」


「分かんないわよ、その理事長の強さも全然めちゃめちゃ分かんないんだから。」


「日本語、変になってるぞ。そんなに緊張しなくても、失敗した時の事はその時考えればいい。」


「せっかく亜美が頼ってくれてるのよ、失敗なんて出来ないのよ!」


「だから、もっと肩の力を抜けよ。アイツは失敗しても怒らないだ─」


「だからよ!!亜美は優しいから失敗しても笑って許してくれるかもしれない、でも!私は亜美の手助けを確実にしたいのよ!生きる事すら困ってた私に手を差し伸べてくれた彼女に、その恩にどうやったら、どうやったら報いる事が出来るのよ!!」

凛は涙を浮かべ、追い詰められたように叫んだ。彼女は、自分を助けてくれた恩に報いるためだけに行動している。それは世間的には良い事なのだろうが...「抱え込んでんじゃねぇぞ!」


「え?」

凛は信じられない事でも起きたかのような顔をする。


「聞こえなかったのか、だったらもう1回言ってやるよ!『1人で抱え込むな』って言ったんだよ!助けてもらった恩を返そうとするのはいいさ、勝手にしろよ!でもな、その恩に勝手に縛られて相談もせずに挙句の果てには他人に八つ当たりすんのは違うだろ。どうせ亜美(アイツ)に何も聞かずにやってんだろ。」


「うるさい、ウルサイ、(うるさ)い、五月蝿い、そうよ!私が()()()()()()恩を返そうとしているのよ。何か悪い?」


「悪いさ、お前が抱え込んだ所為で現に僕が八つ当たりを受けた。」


僕は煽り散らかす、僕としても思う所があったのだ。仮に凛が逆上して、襲い掛かってきても我をわすれた相手ならなんとかなるので負ける事は無い…、その上、彼女の能力を知るチャンスだ。だから安心して煽り散らかせる。


「テメェの存在がむしろ重荷になってるんじゃないのか!」

その言葉がきっかけとなって凛が無言で殴りかかって来る。その展開を予想していた僕は右腕でガードした…が、それは悪手だった。


「うが、あ、あっ」

僕の右腕はいとも容易くひしゃげた。嘘だろ、どんな馬鹿力だよ、能力が身体強化の(ユキ)ですらこんな馬鹿力は出せねぇぞ。

僕はとにかく距離を取る。無理だ、勝てねぇ。

想定が甘すぎた、能力の詳細を推測するどころではない。僕は彼女の力を過小評価していたのだ。


凛が開いた距離を詰めようと凄まじい速度で迫ってくる、それを止めようと地面を隆起させるが、凛は土壁(ソレ)をまるで意に介さないかのように突き破って進んでくる。ならばと、地面をただ隆起させるだけで無く一部を鉄に変えて隆起させる。


だが、それすらも僅かな足止めにしかならなかった。僕は終わる覚悟を決めて目を閉じる。そしてまぶたの裏に、走馬灯と言うのだろうか、今までの学園生活が映し出される。あぁ、短かったけど…楽しかったなぁ、ユキ、紗良、龍之介、アイツらと過ごした時間は、かけがえのないものだった。


………………………………………………………………………………..................................................................................死にたくねぇなぁ.......................



しかしながら、いつまで経っても痛みは走らない。その事から痛み無く殺されたのだと理解し、うっすらと目を開けると、そこはまだ現世(うつしよ)で少女が()()()凛の拳を受け止めていた。



「よかった、生きてたね!もう手遅れかと...」


「何とか生きてたわ、マジで殺されたかと思った。」


「とはいえ、その腕じゃ戦えなさそうですから、大人しく待っていて下さい。そこの不届き者(バカ)をのして、すぐに治してあげますから。」



「邪魔するなら容赦しないわよ」

凛が冷たく言い放つ、先程まであれ程仲良くしていたというのに。


「キレるのは勝手ですけど、私の旦那様に手を出すというのなら、殺しますよ。」

小夜の声は落ち着いていて、どこか冷徹さを感じさせた。



.......勝手に旦那にされている事はこの際スルーしておく。

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