エール送るよお父さん
お父さんがおとねちゃんの頭をなでていると、大きな揺れがぼくたちを襲う。
「うわわわわ。これって――」
「道が細く荒れてきたよ――」
ソリが跳ね、怖さが増したぼくは泡を追加中のお父さんの足にしがみつく。
「そうよ!こんなときこそ!」
右側にしがみついていたおとねちゃんがくまさんリュックに手を入れる。
リン姉から受けとったという、ミコトちゃんの神社のお札が宙を舞う。
お札が近くの泡に貼りつくと揺れが少し収まった。
(泡がはじけて追加して……これじゃいたちごっこだよ)
姿を見せたプライトから優しさを感じ、ぼくも何かお手伝いしようと考える。
「ほら、見えてきたよ。出口だ」
声の先には太陽を思わせる出口が見え、少しずつ大きくなっていく。
(なにかしよう……なにかしよう……なにがぼくにもできるかな)
深呼吸を繰り返し頭に酸素を送っていると、淡く輝くボッポウが目に入る。
「そうだ!おとねちゃん!お父さんを応援しよう!」
「それよアニーちゃん!ポビー!」
ぼくもロップールから杖を受け取ると、コンパクトを開き着替える。
「行くよ!アニーちゃん!」
「うん!おとねちゃん!」
杖の宝石の輝きを全部使う勢いで、ぼくたちは魔法の言葉を紡ぐ。
「花と音色と声援で!エール送るよお父さん!」
泡と数が強化され、その影響かぼくたちの心にさす影さえも魔法は払う。
ぼくたちはそのまま光り輝く出口を通り抜け、元の世界にたどり着く。
「お帰り!アニーちゃんおとねちゃん!よかった!」
リン姉の明るい声が、帰ってすぐのぼくたちを出迎える。
「お父さんは?お父さんはどこ?」
ホッと安心していると、お母さんの声で周囲を見渡す。
ゴール直前までは確かにいたはずのお父さんの姿が消えていた。