迎えに行こうぼくたちで
ドギーちゃんを魔法使いにして以来、毎日が変わった。
天気や自然、季節の中に魔法の力を感じ、日々の些細な変化を楽しむ。
ブローチの宝石が三つ輝く理由を考えているうちに、瞬く間に時間は流れた。
「アニーちゃん、おとねちゃん起きて。今日はお父さんを迎えに行く日よ」
日が昇る前に、うっすらとお化粧をしたお母さんの声でぼくたちは目覚める。
ぼくたちは眠い目をこすって公園に向かう。
ブローチの光は試験に合格した証さ、と前にリン姉のお父さんは教えてくれた。
おとねちゃんとお母さんと一緒に警察官さんに手を振る。
公園前の交差点で警察官さんは、言葉巧みに交通整理をしていた。
「ぼくたちがお父さんをお迎えに行く日とお祭りが重なったんだよね」
お祭りもこれから行われ、みんなのお父さんお母さんが公園に集まる。
広場でミコトちゃんのお父さんが清祓をして、少し離れた場所の舞台に向かう。
マジックショーの舞台の袖でリン姉に会う。
魔法使いになる魔法のことをあの日の夜、ぼくはリン姉に教えた。
こっそり使ってみると、リン姉のお母さんはお母さんのままだったという。
(ひょっとして、リン姉のお母さんは迷っているのかな?魔法を使うの)
スタッフさんたちが茶色い瓶を飲むのを横目に、ショーがはじまる。
「やる気の問題もあるからね」
ショーが終わったリン姉のお父さんに仮の話として聞くとこう返ってきた。
「なにか簡単なことから始めると、やる気は出てくるのよね」
やるぞという情熱がステップアップしてやる気に変わるとリン姉は言う。
「そうだよ。杖の形を変える魔法と一緒でね。情熱を燃やすのさ」
リン姉のお父さんはやる気を燃やしてモチベーションを保つのが大切と話す。
「エネルギーの消費を抑えるのと同じぐらいやる気は大切だからね。ほら」
声の先に目を送ると、スタッフさんが清祓の場所に大きな宝石が運んでいた。
流れ星の話を広める、と約束したドギーちゃんに心の中でお礼を言う。
上の想像以上に輝いていると、スタッフさんたちの嬉しそうな声が聞こえた。
「ボッポウを連れていくことで試験はギリギリ合格!?」
ショーに視線が集まる中、おじいちゃんがこっそりと教えてくれた。
リン姉はスタッフさんから何かをもらい、おとねちゃんにも渡す。
「以前パンの話をしていたの。もしわしがあんパンを食えと言ったらどうする?」
ノートパソコンのおじいちゃんから質問され、うにゅうを返す。
「では、クロワッサンを食べたい人にサンドイッチを進めるかの?」
「好きなの食べようよ」
そうじゃろうそうじゃろうと、おじいちゃんは満足そうに首を縦に振る。
「楽しい時間、過ごす空間、共有できる仲間の間柄が人を人間に変えるんじゃ」
目をしっかりと開けて、おじいちゃんがぼくに教えてくれた。
「なんかお日様っぽいねこの入り口。まいっか行ってきまーす」
ぼくが見つけ、リン姉が判断して、おとねちゃんが切り開く。
ボッポウもいるしお母さんから離れても大丈夫と思えた矢先、急に道が狭まる。
「言葉よ言葉言の葉が、重ね合わさる道しるべ!二人を送って確実に!」
リン姉の魔法でぼくたちは細く狭い道の先へ送り出された。
ボッポウが一声鳴くとリン姉のねこさんリュックが輝き、光が包んでいく。