双子姉妹と迷宮と
左の道を進み人影を追いかけると、その先の道では雪の像が立ち並ぶ。
ペンギン、シロクマ、人魚、トナカイ、アザラシに見守られ通りすぎる。
(やっぱり怖い……魔法使えたら――そうだ!お兄ちゃんの記憶!)
ぼくの中にいたお兄ちゃんの記憶をたどり、なにか身を守る方法を探す。
(魔法力を貸し与える魔法……これだ!)
お兄ちゃんの記憶から杖に魔法力を貯め、輝きが戻ると再度魔法を使う。
「もしもなにかがいるのなら、すぐに教えて魔法さん」
杖の輝きが消え、もう一度魔法力を貯めると、半分ぐらいの輝きを放つ。
さっきはくっきりと分かったお兄ちゃんの記憶はなぜかぼんやりとしていた。
「アニーちゃん見っけ!」
聞こえた声に振り向くと、おとねちゃんが壁に立っていた。
「おとねちゃんが壁にいる?」
「え?わたしにはアニーちゃんが壁にいるように見えるよ」
「あれ?アニーちゃん、おとねちゃん。どうして壁にいるの?」
おとねちゃんに続きリン姉が天井からやってきて、さっき見かけたと言う。
「とにかくアニーちゃんのところに集まろう!」
おとねちゃんは急いだ様子で、杖を振りかざす。
「すぐにわたしとリン姉を、雪のウサギに会わせてよ」
ふたりと合流した直後、おとねちゃんはぼくの心配をし始める。
「ロップールも雪ウサギさんもいたから、元気だよ」
「うさー」
「クマー」
ロップールのふしぎな鳴き声にポビーがふしぎな鳴き声で答えた。
それを見ているおとねちゃんの杖にこっそり魔法をかけたら半分ほど光る。
「もうこんな迷路壊しちゃおう!ミュレット、力を貸してね」
「にゃあ」
「クジラよクジラ、現れて。真っ向勝負で白い壁、白の迷宮押し流せ」
リン姉が指先で杖を回して魔法を唱えると、出てきたクジラが壁を押す。
「互角かな、これ――ってあれ?なんで杖が!?」
「ぼくのも。魔法を使う前の半分ぐらいの輝きだよ」
「それなら二人で魔法を使ってクジラさんを応援しようよ!」
お城の迷路の話をした責任をとろう、とおとねちゃんはぼくに力強く話す。
「クジラよクジラ、クジラさん、大きくなって城流す」
目の前のクジラがみるみる大きくなって壁を押し、迷宮は崩れていった。