学んで覚え復習を
ロープに気づいた巨人さんがこっちにくる。
「ここはユウレイタケの魔法で――」
「ゆゆゆ幽霊!?」
リン姉が発した言葉に体が固まる。
「ちょっとリン姉!お化けや幽霊を口にしたら、アニーちゃん怖がっちゃうよ」
「ごめんごめん。言葉のあやよ」
けろりとした姉にあっけらかんとしつつも、ぼくたちは改めて名前を口にした。
「きれいに咲いた白い花、ギンリョウソウよ見守って」
半透明のギンリョウソウにそっと見守られ、ぼくたちは姿を消す。
巨人をやり過ごして先に進むと宝箱があり、中には魔法の宝石が三つあった。
「なによもー!あるんだったら教えてよー!温存してきたのにー!」
おとねちゃんの口をリン姉と抑え、空いた手で自分の口前に人差し指を立てる。
「あ!ミュレット!待ってどこ――そうよ宝石!宝石に光を移そうよ!」
先に行きかけたミュレットは振り向くと、首元と杖の宝石を交互に見た。
ぼくたちがお願いすると、ロップールもポビーもミュレットも難色を示す。
パートナーたちが鳴き声会談をはじめ、それを見てしばらく和む。
「一人だけー?」
「にゃあ」
リン姉とおとねちゃんがぐぬぬ顔でパートナーとにらめっこする。
しばらくすると、大きく息を吐いてじゃんけんをしようと言い出す。
譲る気でじゃんけんをしたら勝ってしまうふしぎが、ここにある。
「魔法ってなんだろうね」
「誰もが持っているふしぎな力のことよ。どうしたの?アニーちゃん」
「あ、うん。昨日の人形劇で世界を滅ぼす力ともいわれたよね。それと――」
リン姉が配るお茶をお礼を言って受け取り、ふと気になったことを口に出す。
「ぼくたちが魔法で出した道具って、お部屋の箱にもあった気がして」
「あーうん、あった。確かにあった。わたしたち自分で準備しちゃったね」
「というか、冬将軍さんのときに先生はランタンを作ってくれたよね」
懐中電灯とペットボトルから、ランタンを組み立ててくれたことが口に上る。
(ぼくたちは魔法に頼りすぎな気がする……)
ロップールの額に宝石の光が集まっていくのを、ぼんやりと見つめていた。
「宝石はみっつもあるし、貯まるのも早いよね。たぶんきっとおそらく」
お茶を飲み終えて言葉を発すると、おとねちゃんとリン姉の視線が宝石に向く。
ほんのりとロップールの宝石に光がともったのを確認して、先に急ぐ。
先ほどまで明るかった宝石三つは、どれもうっすらとしている。
やがてぼくたちは、小さな妖精さんたちが集まる広場にたどり着く。
「気をそらすにはどうしたら……あ!お人形さん!あれを使おう」
以前病院で石のお人形さんが動いたことと、公園のことが記憶によみがえる。
「お人形さん、躍らせて」
「高い上に段差がある……最初は棒高跳びで行くとして――そうだキリンさん!」
占いが指し示す高台へ向かうため、おとねちゃんはかつての魔法を呼び起こす。
「きれいな花が点々と、あちこちに咲くキリンソウ」
「あ、つり橋。懐かしいな……よし!」
風に揺れるつり橋を見て、リン姉はぼくたち三人に言葉の魔法を紡ぐ。
「心を響き奮わせて。あの橋渡り終えるまで」