しっかり準備して行こう
「第二の試験は、洞窟で王冠を手に入れられたかどうかで判断する」
ダグさんの厳めしい声がお部屋に響く。
ノートパソコン(お母さんが教えてくれた)はおじいちゃんの姿を映す。
その後ろにいる初見の二人組と一緒に、ぼくたちを見ていた。
「アニーちゃん、リンちゃん、おとねちゃん。準備できたら声をかけてくれ」
お部屋にあるたくさんの箱から魔法の宝石を探すと、道具ばかりが出てきた。
「きれいに咲いた赤い花、ストロベリーのキャンドルよ」
「どれもきれいなその中で、ランタナ変わる、ランタンに」
「きれいに咲いたその中で、ストック長い棒になれ」
気を取り直してリン姉とおとねちゃんとぼくは魔法を唱え、準備を続ける。
「花が咲く、どれもきれいなその中で、ロープよロープ、ヘリオトロープ」
COOさんの魔法を真似てロープを作り、さらに三人で花の魔法を紡ぐ。
「ハートの形のカタバミよ。輝き光るゴールまで!」
温かい目で僕たちを見守っていたダグさんとおじいちゃんに声をかける。
ダグさんがボタンを押すと景色が一変し、目の前に洞窟があった。
「うわっ、中は真っ暗」
「そうね。真っ暗ね」
リン姉は光るカタバミをキャンドルに入れ、それをランタンに差し込む。
「な、なにか出てきそうだよね」
「出そうよね」
ハットブローチがリン姉から手渡され、おとねちゃんは棒を持つ。
「帰ろうよ」
「そうね。王冠手に入れたら、すぐに帰ろうか」
リン姉とおとねちゃんの震える声と姿から、勇気を振り絞って足を進めた。
洞窟の中はむき出しの水晶と鍾乳石があちらこちらに生えている。
分かれ道がいくつもあり、そのたびにリン姉はぼくにランタンを手渡す。
「クモの巣多いね、ここ。お掃除はこまめにね」
向かう先をリン姉が占う中、おとねちゃんは棒でクモの巣を取り払う。
バサバサとコウモリが飛ぶたびに悲鳴を上げる。
ピチョーンと水が鍾乳石にあたるたびに振り向く。
光が周囲を照らし、影が映るたびにビクッとしてしまう。
「ありがとうね、アニーちゃん」
「ああありがとう?」
泣きそうな気持ちで気をつけていると、リン姉の優しい声を聴く。
「そうよ。わたしたちが怖いって思う前に、アニーちゃんが怖がってくれるから」
「うん。そのたびにしっかりしようって思うもん」
リン姉とおとねちゃんに見守られ、ぼくは釘裏を返す勢いで警戒を続ける。
「通り通って透き通り、泉の水を飲み水に」
途中に泉を見つけ、リン姉が通る声で言葉の魔法を紡ぎ一息つく。
川幅を測ったり深さを見たり暗闇の奥を調べたりと、棒はかなり役立っている。
先に進むと地面に石畳がまじり、棒の音とともに地鳴りが聞こえ始めた。
「ここで鳴らした音たちを、離れた場所に運んでよ」
遠くの音に巨人が気を取られている間に、ロープを垂らして下に降りる。




