夜の街に動く影
夜の街に影が揺らめく。
「そういや昨日はずっとお花の魔法だったよね。なんかあったの?」
「気分かな。そういう気分だったの」
「そっか。前の買い物の時も?」
「あれはお母さんの魔法がすごすぎて――」
「わー!アニーちゃんそれ内緒―!」
夜の街灯に照らされ、ぼくたちの影が伸びる。
生まれた影がぼくたちに成り代わって話しているかに見えた。
「私の家はお父さんとお母さんとお兄ちゃんとお姉ちゃん、みんなでこねるよ」
いつぞやの消火器の話をすると、リン姉は明るい笑みを見せこう返した。
「この占いもね、お母さんに教えてもらったの。困ったときは頼りなさいって」
「魔法は取っておき、探索は続行だったよね。休むってものあったよね」
「あれが出たら寝てたかも。休むのって大切だから」
「脳を休めるためにも寝ようね、ってわたしお医者さんから聞いたよ」
「ぼくもエリーちゃんから、学んだことがちゃんと覚えられるよって」
みんなからの話を聞くと、リン姉は昨日の会議を物語り付け加える。
『根拠を示してくれ。なぜ睡眠が浅くなるのかを』
CEOさんが電子書籍について語った社員さんを見て話しかけていた。
『スマホやタブレットの明かりで脳が興奮するという説があります』
『ほう。それでどうアプローチするつもりかね』
『睡眠をとる少し前に本を読みます。そうすれば成長ホルモンも分泌されます』
この発言に本について語った人が目を見開く。
『成長ホルモンが必要なのは子どもだけだろう!』
『大人の場合は疲労回復で使います!つまりこれを研究すれば回復魔法が――』
『希望的観測かな、それは。魔法はみんなを支えるためのものだよ』
どんなときもみんなが中心で魔法は支援、そうすることで世界は回る。
魔法は最後のとっておき、とCEOさんは話していた。
「これとみんなの話を合わせたら、どうしようかって思えてさ」
「言ってよ!そういうことは!わたしたちだってリン姉を支えたいんだよ!」
「ありがとうおとねちゃん、アニーちゃん。そうね、悩んだら聞くよね。うん」
ミュレットも肯定し、シイちゃんからもらったお菓子をみんなで食べあう。
食べ終わると町の案内図を見つけ、絵を見て探検先を探す。
「水族館も動物園もお休みだったよ……」
「夜だし休むよね。博物館と美術館は怖いからパスとして……」
「植物園に行ってみようよ」
ぼく、リン姉、おとねちゃんの順に話し行き先が決定する。
風が吹きつむじ風を作り出すと、中で木の葉が舞う。
人と思いおびえるぼくをリン姉がなだめてくれた。
(リン姉はホントぼくたちを助けてくれるお姉ちゃんのお姉ちゃんだね)
ある時は魔法に協力し、またある時は魔法を使いやすくするために動く。
リン姉のおかげで、ぼくもおとねちゃんも安心して立ち回れた。
陰に日向にぼくたちを支えてくれてありがとうと、助けられるたびに思う。
「植物園はどこかなー。早く夜に咲くお花見て心を休めたいなー。あれ?――」
なぜか幼稚園があり、中に入ると段差とテレビとお布団のお部屋があった。
『次に当てはまる子の周りには魔にさされた人が近づくこともあるからね!』
もを強調して文字と映像がテレビに流れ、さらに音声は続く。
「周囲も自分もしっかり対策していこう!それではスタート!」