花咲く会話と世界にて
おとねちゃんがタカ、リン姉がワシと答え、ぼくは少し考える。
だったら、って言っていた意味を考えてから切り出す。
「パートナー?」
「うん当たり。実はこの鳥カラスなんだよ。よく気づいたね、ついてきて」
本棚の表紙が掠れている本から影が伸び、ぼくたちを飲み込む。
「真っ白!?うわわ、ここどこ?地面?土の中?雲の中?」
最初はおとねちゃんとぼく、うわわ以降はぼくの動揺する声がこだまする。
「色とりどりのその中で、黄色パンジー咲きほこれ」
つつましく黄色のパンジーが咲き、のどかな風景の世界を広げていく。
リン姉は花の魔法で次々にパンジーを咲かせ、田園を喜びの世界で彩る。
一息入れたリン姉を見て、ぼくとおとねちゃんは視線を合わせ花の魔法を紡ぐ。
「きれいに咲いたその中の、シロタエギクをプレゼント」
手元に咲いたシロタエギクを受け取り、リン姉から笑顔がこぼれた。
「アニーちゃん、おとねちゃん。ありがとう、支えてくれて」
リン姉がミュレットに花を渡すのを見て、おとねちゃんが声をあげる。
「ねえリン姉リン姉、わたしまとめ役やる!」
「どうしたのおとねちゃん。まとめ役は大変よ」
「わかるわかるよ、だからこそリン姉に楽してほしいもん」
場所を入れ替わるため、おとねちゃんとリン姉はぼくの横に並ぶ。
「ぼ、ぼくがやる!リン姉は真ん中!」
出口探しのお供に魔法で蝶と鳥を出し、ぼくを先頭に探検が始まった。
びくびくおどおどと道を開き、たまに吹く風や草の音に驚く。
「せっかくだし、アニーちゃん。私の役やってみる?」
「わたしアニーちゃんの役やってみたい!」
ぼくたちは探偵の服装に着替え、目を配らせてのどかな風景を進む。
やがて白い家が見えてきて、二階の屋根には図書館で会った二人がいる。
「まほタマなら大丈夫と信じていたぞ。初めまして新人の魔法使いだ」
「社会に出るとね、新人のあとは若手中堅ベテランって広がりを見せるんだよ」
挨拶とともに、ぼくたちはまたひとつ社会人さんたちから学ぶ。
そしてそのまま、建物の中へと足を踏み入れる。
タカとワシは大きさで見分けようと、道々で知っていく。
「魔の研究もしていてね、図書館では口調をまねていたのさ」
階段を上り終えると社会人さんたちは杖に手をかざす。
「うわあ!手をかざしただけで光が戻ったよ!」
「お母さんたちはちゃんと言葉を紡ぐのに!」
「参考になるよね。お父さんたちの魔法」
ぼくたちが目を輝かせ社会人さんの魔法を眺める。
「あ、あえてかざすだけでも魔法が使えるよって、教えたくてね」
言葉が胸に刺さったのか、社会人さんたちは乾いた声で笑っていた。
「ここは会議室。いろんなことを話し合う場さ。ほらごらん」
窓から中を見ると、ちょうど会議が始まろうとしていた。
「今日はまほタマが見学に来ています。会議は通常通り前半、休憩、後半です」
司会の人はぼくたちを流し見たあと、視線を中へと戻す。
「今日のテーマは『本について』です。前半は意見だけでお願いします」
厳かな雰囲気の中、会議は進んでいく。