鐘を鳴らそう!ぼくたちで
「強く強まる、強い音」
太鼓を思いっきりたたいた音がして、鐘を鳴らす。
お母さんの実演を見て、ぼくたちも張り切って言葉を紡ぐ。
「花と音色と言葉たち!鐘に当たってこの場所に!合格の鐘、響かせて!」
ぼくたちの魔法は音符となって鐘に向かい、途中で消えていく。
「まほタマとしては合格じゃよ」
「アニーちゃんやおとねちゃん、リンちゃんにもできるはずよ。自信をもって」
おじいちゃんとお母さんの声が耳に届き、心を奮い立たせる。
「俺はアンパンが好きだな」
杖の光が消えかけたころ、パンの話をダグさんは語りだす。
「豆が甘いからと昔は敬遠していたよ。いざ食べてみるとなかなかにうまい」
ダグさんが口にするあんこの種類のリズムで、ぼくたちは少し落ち着けた。
「発想を変えよう。同じことをしても同じ結果になるだけだよ」
人差し指だけを立て、ダグさんは微笑して話を続ける。
「重要なのは鳴らすことさ。重要なのは」
ダグさんの言葉を受け、ぼくたちは顔を合わせ相談を始めた。
「重要なのってやっぱり魔法の言葉をちゃんと紡ぐことなのかな?」
「動きとかも入れよう!最初に教わった通りにやってみようよ!」
「思いもこめてみようよ。みんなの思いであの鐘を鳴らそう」
考えを煮詰めていると、みんなからの視線に気づく。
「なんだか恥ずかしいし緊張する……」
「そう?わたしは元気が出てくるよ」
おとねちゃんに追いつくにはまだまだ遠いと感じつつ、魔法の言葉を紡ぐ。
「言葉よ、言葉。言の葉よ!」
「花よ、花花、咲きほこれ!」
「音色よ、音色。音の色!」
最初教わった通りに杖を回して体を動かし、視線を応援に変えて思いをこめる。
「思いをみんなかき集め!届けてほしい!あの鐘に!」
「第一の試験、合格じゃ」
画面のおじいちゃんが目を細めて笑っていた。