聞きに回るよまほタマが
「花と音色の応援が!見習いさんを彩るよ!」
空中で縦にくるくると回る杖をリン姉はムーンサルトで追いかけ、つかむ。
ぼくとおとねちゃんはポンポンを手に、鏡合わせの動きをする。
バトンとチアのダンスを受けて、見習いさんは揺り椅子にいる魔を払う。
「リンちゃん、おとねちゃん、アニーちゃん、ありがとう!助かったよ」
大きく息を吐く見習いさんからは、疲れている様子が見受けられた。
「最近忙しくてね。魔の対応と部活と学校と友達づきあいと勉強と……」
充実感を笑顔で語り、見習いさんは手を振って中学校へと帰っていく。
「最近お父さんの帰りが遅くってさー。一昨日とか夜に出かけるし」
「リン姉のところも?お母さんも昨日の夜とかその前の夜に出かけたよ」
ぼくたちは最近、数日おきにボッポウと夜を過ごしている。
明日お兄ちゃんに、ぼくたちは何ができるかを聞いてみることにした。
「そうだね、見習いのころは本当に忙しくて充実していたよ」
「どんな感じなの?」
「まほヒナから続く友達付き合いもそうだし、魔法が内緒ってのもあるし――」
「内緒なの?発表会が終わっても?」
「おとねちゃん、魔法は内緒だよ。みんなのこともあるからね」
ぼくたちが通う幼稚園の子は全員魔法が使える。
まほヒナで知り合う子たちと仲良くするのは大切なことと、お兄ちゃんは言う。
「魔法使いは賢いとか物分かりが良いとか頭の回転が速いとか言われてね……」
人それぞれなのにね、とお兄ちゃんは困った顔で笑うと吐息をもらす。
「お兄ちゃんもお疲れ?」
「うーん、疲れてはいるね。今日の手伝いでいろんなことを学んでさ」
「おじいちゃんのお手伝い?どんなことを学んだの?」
「アニーちゃんたちにもわかるように言うと、日本は島国ってことかな」
「島国だからこそ、よかったって思えるところもあるはずよ」
おとねちゃんの言葉でお兄ちゃんの目からうろこが落ちた気がする。
「マイナスの方向だけを見ていたよ。ありがとうおとねちゃん、あとはね……」
「ミャリャウさん!ミュリューさん!教えてほしいことがあるの!」
ホウキの時間の終わりがけ、おとねちゃんはミャリャウさんたちに突撃した。
「どうしたんだいおとねちゃん、そんなに慌てて」
「まほヒナから見習いさんになると、グループは解散するって本当?」
「一時的に、よ。グループは解散してもつながりは残っているからね」
幼稚園の先生と同じ答えを、ミャリャウさんはおとねちゃんに返す。
「いろんなことを学んでいくし、いろんなものが増えていくの。お友達とかね」
まほタマだけの世界から、みんなといる世界へと広がっていく。
世界を知ったからこそ、お兄ちゃんは疲れていたのだろう。
「グループで一緒にいた思い出は残るし、魔法使いは忙しいから」
やっぱりと思い、どうして忙しいのか聞こうとすると、リン姉が先に動く。
「魔が増えたからよ。魔法使いも増えれば、見習いになってもグループのままよ」
「そういえば、ミャリャウさんたちはいつ解散したの?」
お兄ちゃんは見習いになるときに幼馴染さんの転校をきっかけに解散した。
「ん?オレか?オレは小学校でまほヒナになったから、その話はさっぱりだぜ」