会話がめぐるお茶会に
「みんなが持っているのなら、どうして私たちだけなんですか?」
強い口調で聞き返すリン姉の声が、丸テーブルのお茶会を告げた。
「今言えるのは、魔法を使えるのは女の子だけだったことよ。いわゆる魔女ね」
男の子は気づいたら使えていたと、先生はお母さんと同じ話をする。
「言い換えるとね、女の子ならだれでも魔法が使えるの」
ミュリューさんが話を付け加えた瞬間、メガネの先生を思いだした。
(気づいてほしいだったかな……なにに?なにを?)
なぞなぞを出されている気がして思考が迷路に迷い込む。
おとねちゃんとリン姉がテーブルの下でそっと手をあててくれた。
手のぬくもりのおかげで、ぼくは迷子から脱出する。
「そういえばチームって、どういう風に決めたの?」
会話が途切れてお茶の音だけが響く中、ぼくは質問する。
「どうしたの、アニーちゃん。急に?」
「おとねちゃんやリン姉の服選びにエリーちゃんがいると心強いかなって」
エリーちゃんは目をぱちくりしてぼくを見ていた。
「アニーちゃんこっちに来たいの?大変よ、こっち」
「そうなの?」
「シイちゃんもミコトちゃんも動きっぱなしだからねえ」
雲の上を見渡すと、シイちゃんとミコトちゃんは追いかけっこをしていた。
「あーうん、あれは大変かも。リン姉とおとねちゃんはゆっくりなのに」
ぼくの素直な言葉に、リン姉とおとねちゃんがニコニコする。
気が合ったことで天にも昇る気持ちになり、ぼくも合わせて笑う。
(ゆっくりなのが好きなんだよね……ぽんやりぽやぽやのお医者さんと一緒で)
あらあらうふふとお医者さんも頭の中で笑っている。
(お医者さんみたいになりたいな。それか星や人形の看護師さんかな)
ぬいぐるみとかお花とかアイスも売りたいな、と将来に向けて思いをはせる。
「それにエリーちゃんはわたしそっくりよ。新しい発見とか大好き!ねー」
「ねー」
おとねちゃんとエリーちゃんの同時に発した声がぼくを呼び戻す。
「夢でシイちゃんとみんなを助けに行ったときも先頭だったよね」
シイちゃんの名前を出したら、なんでお部屋にいるのか気になって聞いてみる。
「おうちのお菓子作りのお手伝いだって」
突き指すると大変だから、とシイちゃんからの話をエリーちゃんが言う。
「おててきれいだよねシイちゃん。いつもお菓子受け取るとき思うもん」
シイちゃんはなぜか、どんな時もぼくからお菓子を配る。
「そうだ!ならぼくシイちゃんと変わるよ!はやくお菓子もらえるよ」
「ちょっと困るかな。シイちゃんは私に似て全体を見ているから」
シイちゃんは確かに夢の中で全体を見て動いていた。
「ちなみにミコトちゃんはアニーちゃんと一緒でよく気がつくよ」
「シイちゃんと仲良しだよね。だいたいいつも一緒だもん」
「わたしたちだってそうだよ!」
リン姉の言葉を受け、おとねちゃんがガシッとぼくと腕を組む。
「こんな風にならし保育の期間中にみんなを見て、グループは決めています」
先生がお茶を一口飲み、言葉を発して締めくくる。
「とにかく今はどんどん新しいことに挑戦しようね」
挑戦することで初めて得られるものもある、とミュリューさんは話を変えた。