自由に過ごす雲の上
「ミャリャリャリャリャ!雲の遊具を作ったぞ!」
「ミュリュリュリュリュ!色もぬったよ!カラフルに」
雲の上で遊びたい、という声に答え今日は雲の上で遊ぶ。
チアの衣装で走り回る子や遊具を楽しむ子の声があちこちで聞こえた。
今日のおやつはサンドイッチ、ピクニック気分でぼくは雲をこねる。
「タコさん、イカさん、クラゲさんー。精霊さんたちありがとうー」
昨日もらったぬいぐるみを作っていると、おとねちゃんとリン姉の声がした。
「ホウキの時間早めに終わったし光に余裕あるし、魔法で髪を変えようかなって」
「わたしがリン姉にかけて、リン姉がアニーちゃんにかけようってなったの」
ぼくはリン姉だねと返事をして、相談したあと雲の壁を作って魔法を紡ぐ。
「薄い紅色サクラ色、髪を伸ばしたおとねちゃん」
「いつもきれいなリン姉の、髪を伸ばしてチョコ色に」
「クロユリに似た黒髪へ、色を変えてよアニーちゃん」
それぞれの花をイメージしてお互いの髪の色と長さを変える。
ぼくとおとねちゃんは肩まで、リン姉は胸まで髪が伸びていた。
「さーて髪を結おう……ゆお……どうやるの?」
コンパクトで髪を確認したあと隠しておいたヘアゴムを取り出し、そして悩む。
「見てみてアニーちゃん!ってみんな考えることは一緒か」
ひとつ結びにしたエリーちゃんと三つ編みのミュリューさんがやってきた。
「はーい。おとねちゃんとアニーちゃんできたよー。次はリンちゃんね」
おとねちゃんはツーサイドアップ、ぼくは髪の先をふたつ結びにしてもらう。
「そうねえ、私はお料理するときはひとつ結びで体動かすときはポニーテールよ」
「なら、ポニーテールでお願いします。エリーちゃんあとひとつ結び教えてね」
迷っていたリン姉が髪型を決める。
ミュリューさんは魔法の道具を取り出し、手に取った。
「髪を波立たせて、あごと耳たぶの延長線上を結んだら、ヘアゴムを隠す」
手際よくミュリューさんが行い、髪を結う。
リン姉はぼくたちに見せコンパクトで確認したら、もう一度やり方を教わる。
しばらくすると宝石の光が消え、髪が戻りヘアゴムが雲に落ちた。
「持続系の魔法は光を多く使うからね」
「駆け出しさんはもっと長く変身していたのにー」
「それは私たちが持っている魔法の力、魔法力を使っているからね」
ミュリューさんがリン姉にやさしく答えるとおとねちゃんが即座に切り出す。
「なら私たちに魔法力の使い方を教えてよ!」
「魔法力の使い方は見習いさんから。それまではみんなの杖を使ってね」
「みんなってだあれ?」
「みんなはみんなよ。まほヒナやまほタマやまほタネ、そしてみんなのこと」
やがてみんなが魔法の杖を使い始める。
魔法を教わるのは見習い、中学からとミュリューさんは念を押す。
「中学はね、社会に出るための準備期間なのよ。魔法もこのとき」
忙しくもきびしかったとお兄ちゃんが言っていたことを思い出す。
「ミュリューさん、魔法ってなんなの?なんで使えるの?」
「魔法はね、誰もが持っているふしぎな力よ」
エリーちゃんの質問にはお茶を持ってきた先生が答え、微笑む。




