バトンガールとポンポンと
「そっか!着替えるときも動きや言葉でパワーアップできるんだ!」
「そうよ。ただこのやりかたはね、ずっと宝石の光を使っちゃうの」
「そっかそっか。だからあの格好だったのか」
素の口調のおとねちゃんに先生が説明する。
視線を戻すと、駆け出しさんは宙に浮く氷の塊と向き合っていた。
内部から出る光が氷に反射し、きらめくその姿から魔の気配を感じる。
「まいったね……これはちょっと荷が重いや」
駆け出しさんの弱音が聞こえ、先生を見上げると優しくほほ笑む。
何かあった時のため、と前に言っていた先生はぼくたちをじっと見つめる。
視線の意味を探そうと、ぼくは思考のコンパスを回す。
(なにかある、なにがある?今のぼくにもできること)
「応援!応援しようよ!魔法で!」
「そうね。私たちからの宿題、気づいてくれてうれしいわ。服、使う?」
カードを先生から受け取り、パネルにセットして、再度コンパクトをかざす。
小さな帽子に小さなマント、チアの衣装とポンポンを身にまとう。
腰に差した杖を手にして恥ずかしがるぼくをおとねちゃんと言う花が包む。
「言葉よ、言葉、言の葉よ――」
「花よ、花花、咲きほこれ――」
「音色よ、音色、音の色――」
リン姉、おとねちゃん、ぼくの三人が三つの魔法を口にする。
「音と言葉と花びらで!踊りあかそう終わるまで!」
氷面鏡から氷面鏡、映す姿は万華鏡。
ポーンと杖を回し上げ、肩肘腕にころころと、くるくる回るトワリング。
杖とポンポン舞う花と、音色と声と魔法とが重なり合って魔を払う。
「助かりましたわ。リンちゃん、おとねちゃん、アニーちゃん」
ドリル髪の駆け出しさんが頭を下げるとドリルが取れた。
「これはエクステ、付け毛だよ。きれいな花には棘がある。アザミも人を欺くよ」
混乱したぼくたちを先生は魔法で落ち着かせる。
「ボクは演劇部だからね。こんなのお茶の子さいさいさ」
普段はズボンの駆け出しさんと服や昔のお兄ちゃんの話をしながら帰路に就く。