回る世界にリフレイン
「大丈夫だよ。世界は」
ダグさんの落ち着いた優しい声に導かれ、ぼくは平静さを取り戻す。
「世界は直るさ」
「例えば、アニーちゃんには海外に留学中のお兄ちゃんがいるだろう?」
この時に世界は一度滅んでいると、ダグさんは僕にやさしく話す。
「お兄ちゃんと暮らしていた世界は滅び、オンラインで会う世界に直ったんだよ」
「あ!」
「こんな感じにね、世界は滅びと再生を繰り返して回り続けているのさ」
循環していると、ダグさんは指で空中に大小の円を描いて示してくれた。
「一緒なんだ世界は、どれも。大なり小なり大きさが変わるだけで」
「お父さんの世界も?」
「ああ、全部直すさ。約束しよう。なにかあったらまた会いに来るよ」
戻ってきたミャリャウさんたちとも約束して、ゆびきりの歌を口にする。
「このパンダは双子なの。まとめてお母さんに渡しておくね」
最後にミュリューさんと約束すると、三人の背中は光の中に消えていった。
魔法をしっかり勉強しようと心に決めると、どこからか風が吹く。
また本がパラパラとめくりだし、マスクや仮面のページで止まって消える。
その瞬間世界に色が戻り、雨とおとねちゃんたちが呼ぶ声が聞こえた。
「いっぱいカードもらったね。普段も着替えるの?」
「色は一緒にしていろいろ着てみようよ。変えられるところだけでも、ね?」
「自分にあう服を探すことを楽しめ、ってお父さんもお母さんも言っていたし」
ハーフパンツをキャロットとかなら、と説得に心が揺れる。
ふとリン姉の言葉を思い出し、あえてお父さんを口にしたことに気づく。
それを受けてぼくたちは魔法の言葉を紡ぐ。
ぼくたち三人は頭の上で杖を重ねる。
ふたつの言葉にひとつの言葉が加わり、みっつの声がひとつの言葉を紡ぎだす。
「発表会の日が来たら、見に来てほしい!お父さん!」
杖の光が消るのを確認すると、ぼくたちは顔を合わせて笑いあった。