お休みの日はなにをする?
「お母さん見てみてー!わたし大発見しちゃったの!」
おじいちゃんとの朝の会話を終え、おとねちゃんがお母さんを呼ぶ。
お兄ちゃんと話せるのは、おとねちゃんのほとぼりが冷めてからになるだろう。
ぼくたちの話はおじいちゃんが聞き、たまに目を細めて笑う。
(おじいちゃんの糸目がいつにも増して細長くなっちゃった……)
ダイニングでマンボウのぬいぐるみを抱きしめ、思い出しては笑う。
「なにを見つけたの?」
「このコップにねー、いつも使っているコップのお水入れるとねー……」
お母さんが来るとおとねちゃんはコップからシャンパングラスに白湯をそそぐ。
ほんのりと湯気がプラスチックのグラスから立つ。
「ほら増えた!」
「ホントだ!増えた増えた!」
「でしょでしょー!」
「ボッポーウ」
「そうね。たくさんあるわね」
なみなみと注がれたグラスを見てお母さんはぼくとおとねちゃんに言う。
質量保存の法則という初めて聞く言葉が耳に留まる中、椅子に向かう。
留学してからずっとお兄ちゃんの椅子には竜のぬいぐるみが立っている。
朝食を終えて、おとねちゃんと顔を見合わせる。
「今日はお休みの日よ、アニーちゃん」
「うん、おとねちゃん。お母さんを休ませるんだね」
そしてぼくとおとねちゃんはかねてからの計画を実行に移す。
「洗剤ってどのくらいれるのかな?」
「きっとこれぐらいよ。このあとどうするの?」
「どこかのボタン押したら動くはずだよ。たぶんきっとおそらく」
右から順にボタンを押してみると、洗濯機が動き出す。
やがて洗濯機の口から泡が出てきて、ぼくとおとねちゃんは首をかしげる。
音がやむまで、ボッポウとポビーとロップールは床を拭き続けた。
洗濯物を干し終わり、お庭のお花に水をやろうとするとリン姉が遊びに来た。
「蛇口固いね。どうしよう……」
青空の下、ぼくたちが試行錯誤していると雨のにおいに気づく。
灰色の雲がやってきて、バケツをひっくり返したような雨を降らし去っていく。
「うさー」
「くまー」
「にゃあ」
「ボッポーウ」
「じっとしてー」
濡れた体をお風呂で温め、お風呂場でパートナーたちの体を拭く。
「アニーちゃん、おいでー」
お母さんの所に行って、身をすくめる。
ブオオーと叫ぶ怪獣をお母さんが手にしていた。
「にゃーお」
突然ミュレットたちが踊りを披露し始め、夢中になる。
気がつけば、いつの間にか髪は乾いていた。




