ゴールまで「もつ」魔法です
飴を食べ終えるとかすかな音を聞く。
音の発生源を探すと、草の中から小石がころころと転がってきた。
小石は数を増やし棒と丸の手足が生え、目と口がついてぼくたちを見る。
「おなかすいたのかな?」
「食べ物まだあったかな――」
「あるよ。着てすぐシイちゃんにもらった大豆粉のおせんべい」
ポケットから新商品のおせんべいを取り出し、おとねちゃんとリン姉に渡す。
ぼくたちはそれを砕いて、パートナーと小石さんたちと分けあった。
「なつかれちゃたね」
「大勢いると楽しいよね」
たまに音がカサッと鳴りビクッとしつつ、小石さんたちと草むらを進む。
「小川があるよ!」
おとねちゃんの声の先にある川は、飛び越えるには少し遠い幅だった。
「ハツユキソウの名よ響け」
名前の響きから氷を連想したのか、おとねちゃんが花の魔法で川を凍らせた。
おとねちゃんとリン姉の頼れる姿を瞳に宿し、次はぼくの番と勇んで踏み出す。
氷に足を取られ、バランスを取ろうと前後にふらつきしりもちをつく。
リン姉の手を取り立ち上がって歩き出すと、かすかに足が痛む。
それをいう前に、ガサッという音が耳に入る。
「また小石さんだったりして」
小石さんたちが騒ぎ出し、リン姉とおとねちゃんととともにぼくを取り囲む。
周囲を回る小さかった音が、うずを描くたびに大きくなる。
ぼくはおとねちゃんの名を呼んで、一緒に音の魔法の言葉を紡ぐ。
「回る正体教えてよ」
草むらから大きな蛇がぼくにむかって飛び出してきた。
すんでのところで小石さんたちがぼくを守り、風とともに消えていく。
せめて舞い散る砂をつかもうと手を伸ばしたら、ぼくの足に痛みが走る。
「響き響いて合わさって、もつから私ゴールまで」
「またこれー?」
ぼくはリン姉に横向きにゴールまで抱きかかえられ、先生に渡された。




