炎と雪と起こし方
「ありがとう、おとねちゃん。心が温まるわ」
花はもらっただけでうれしくなれると、先生の言葉に冬将軍さんが続く。
ぼくも渡せばよかったとひとりじめしたスノードロップを見て思う。
「ぬらりひょんさん、おうちはまだ遠い?」
勇気を出してみんなに渡そうとすると、リン姉が先に口を開く。
するっ。
がしゃ。
ぼぉっ。
振り向いて答えようとした矢先、ぬらりひょんさんの提灯が棒から外れた。
一気に火は枯草に燃え広がり、あたりを炎に包む。
「ぐるぐる回り舞い踊り浮かせてすぐに、今すぐに!」
リン姉の言葉の魔法で魔法の文字が周回し、ぼくたちを宙に浮かせた。
熱にやられた冬将軍さんを、先生は魔法で冷気を出して介抱する。
「アニーちゃんおとねちゃん!魔法で火を消すよ!」
浮くだけならできるとぬらりひょんさんに言われ、ぼくたち三人は言葉を紡ぐ。
「言葉よ、言葉、言の葉よ」
「音色よ、音色、音の色よ」
みんなで杖を合わせ、宝石の光が重なり一気に輝く。
「銀で彩る冬景色!雪よ!ふれふれ雪模様!」
世界は雪に覆われ、火は消えた。
先生は懐中電灯を取り出し、その上にペットボトルを乗せてランタンを作る。
光が周囲を照らし、その中を歩いていくと雪で潰された家にたどり着く。
「なあにかえって好都合です」
雪だけを冬将軍さんは圧縮し、姿を見せた家の中の様子をうかがう。
「冬将軍さーん、冬を強めすぎですよー」
壊れた家の中から、氷に包まれた春の精霊さんが声をあげる。
「精霊には精霊の起こし方があるのです。冬を強めてくださって助かりました」
元の世界に帰るとぬらりひょんさんは挨拶して、スウッと姿を消していく。
その気配の消し方にあこがれを覚え、冬と春の精霊さんを見送った。




