雪が招いたお客さん
翌日、休み時間に積み木を積みあげてふと外を見ると白いものが見えた。
「雪だ……」
お外の入口まで行って、白い息を吐く。
「アニーちゃーんボールとってー」
ボールがてんてんてんと転がってきて、リン姉の声がする。
返事をしてボールを拾い上げ、リン姉に向かって投げた。
ブン!
バン!
ベン!
投げたボールが地面にあたって、ぼくの顔に跳ね返る。
「行くよー」
後ろからの声に顔を向けたら、ボールが顔面に跳ね返るのを目の当たりにした。
「痛いねこれ!泣くとこだったよ!」
エリーちゃんが赤くなった顔で、ぼくを後ろからやさしく抱きしめてくれた。
(ぼくの涙はエリーちゃんにびっくりしてとまっちゃった)
「こういうときは転がすの。一緒にやろうね」
エリーちゃんがぼくの手を取ってボールを転がしリン姉の手にわたる。
ありがとうが飛び交い風が寒さを伝える中、手をつないでお部屋へと戻った。
「お茶のポット、ここに置いておくからね」
先生が来てお部屋の入口にポットを置くと、早速いただきに向かう。
お茶の温かさで手とのどを温めていると、雲が勢いよく流れてきた。
はらはらと舞う雪が吹雪に変わり、みんながあわてて帰ってくる。
雪まみれで冷えた体を、先生から受け取ったタオルでふき取っていく。
その間に先生はストーブをつけて毛布とお茶を配り、暖を取り始めた。
「もう春なのになんでこんなに大雪が……?」
窓の外に降りしきる雪を見てつぶやくと、誰かがお茶を飲む音が聞こえた。
音に振り向くと、入り口の椅子に頭の大きな人が座ってお茶を飲んでいた。
誰だろうとビクビクしながら思って様子を見ていると、その人がぼくに気づく。
だれか聞こうとしたら、リン姉と毛布をかぶったおとねちゃんがやってきた。
「はじめましておじいさん。私すずり!みんなからリン姉って呼ばれているの!」
「わたしおとね!『桜』と『桃』と『音』と書いておとね!」
「……ぼくはアニー。はじめまして、おじいさん」
ぼくたちが挨拶すると、おじいさんはにっこりと笑う。
「人に聞くときはまず自分から。はじめまして、ワシはぬらりひょんですじゃ」
「あら、こんにちは。ぬらりひょんさん」
「こんにちは。おいしいお茶をいつもありがとう」
手の空いた先生が新しいポットを持ってきて、ぬらりひょんさんと挨拶する。
「ぬらりひょんさんはね、古くから日本にいる妖怪っていう妖精さんなのよ」
なんでここにいるの、とリン姉がそのぬらりひょんさんに聞く。
「季節の精霊さんが困っておっての、連れてきたんじゃよ」
周囲を見渡すと、お外にひとり人が立っていた。




