世界を変えて再会を
「おとねちゃん!これが魔だよ!」
「ならいくよ、アニーちゃん!」
「目覚めのときよ、今ここに!」
ぼくたちの魔法でおとねちゃんの目は覚めた。
みんなは夢にとらわれているのか、まだぼくを捜している。
「ミュレットが来ちゃう。どうしよう……」
「リン姉を起こそう!リン姉ならなんとかしてくれるはず!」
「ありがとう、アニーちゃんエリーちゃん。三人で一緒に魔法使おうか」
三人で息を合わせて魔法を使おうとすると、みんなが一斉に追いかけてきた。
近くのお部屋に逃げ込むと、そのお部屋の窓から光が差し込む。
リン姉の魔法で光は中央に集まり、形を次々に変えていく。
まるで万華鏡な光の中で、ぼくたちは魔法を唱えた。
みんなの目に光が戻りホッとしたぼくは瞳を閉じて、大きく息を吐く。
「あれ?ここは?みんなは?」
閉じた瞳を開けると、ぼくは白い霧に包まれた世界にいた。
ロップールの姿も消え、杖を持ったぼくはひとり佇む。
涙で視界がかすむ中、ぼくは目を閉じて魔法を唱える。
「音よ、周囲を教えてよ」
白黒の世界が閉じた瞳に映る。
遠くまで響く音の音色が、はるか先に人がいることを教えてくれた。
瞳を閉じて音を頼りに世界を歩いていくと、近くに何かを感じる。
「これは……靄?」
近くに佇む靄に懐かしさを覚え立ち止まると、すごい勢いでぼくに近づく。
「ひょっとしてぼくの中にあったお兄ちゃん?」
病院で取り出した靄のことが頭をよぎり、すんでのところで身をかわした。
「せっかくみんなのこと覚えたのに、また忘れちゃう!」
靄はぼくの体に戻りたいのか、何度も突進を繰り返す。
少しでも距離を取ろうと走っていると、大きな音が聞こえてきた。
「音が見えない!」
滝の音が周囲に響き渡る。
その音にぼくの音がかき消され、靄の姿も消えていく。
靄の接近を感じたぼくは、一か八か魔法を使う。
「竜巻ぼくを、回らせて」
回転する竜巻で靄の突撃をよけたら、また靄の接近を感じる。
「竜巻逆に、回らせて」
逆回転した竜巻で、ぼくはまた靄をかわす。
「あれ?」
竜巻で回った目を戻すために、逆に回ったのに目が回る。
靄が接近してぼくに当たる直前、誰かががぼくを抱きかかえてくれた。
「大丈夫かい?」
「あ、ありがとうございま――ってお父さん!?」
「ん?ああ。大きくなったね、アニーちゃん」
声をはり上げてしがみつくぼくを、お父さんは優しく抱きかかえ跳ぶ。